アパート・マンションなどを賃貸に出すときの家賃設定は、不動産会社の賃料査定を参考にすることが多い。しかし賃料査定の方法や基準は不動産会社によって異なり、出てくる査定金額にもばらつきがある。複数の査定結果を比較して適切な家賃相場を把握するためには、賃料査定の基本的な仕組みやポイントを押さえておくことが大切だ。
本記事では簡易査定・訪問査定の違い、具体的な査定方法などを詳しく解説する。賃料査定で信頼できる不動産会社を選ぶためのポイントも紹介するので、査定を依頼する前にぜひご一読いただきたい。
賃料査定とは
賃料査定とは、不動産会社に賃貸物件の適切な賃料を算出してもらうことだ。賃料が高すぎると入居者が集まらず、低すぎると損をしてしまう。地域相場に見合った家賃設定で安定した収益を得るために、賃料査定は欠かせないプロセスとなる。
不動産会社は間取りや立地条件、周辺の家賃相場などをもとに、その物件に適した賃料を算出する。担当者が実際に物件を訪れるか否かで、「簡易査定(机上査定)」「訪問査定」の2つに分かれる。
簡易査定
簡易査定は、賃貸物件を訪問せず周辺の家賃相場を参考に賃料を査定する方法だ。机の上で手に入る情報だけで賃料を査定するため、「机上査定」とも呼ばれる。簡易査定はメールや電話だけで結果を出せるため、依頼の手間と時間がかからないのがメリットだ。ただし少ない情報で賃料査定するため精度は低く、とりあえず大まかな査定額を知りたい場合に利用するのが良いだろう。
訪問査定
訪問査定は、不動産会社の担当者が直接物件を訪れて詳しく査定する方法だ。現地の情報も含めて細かく賃料を査定するため、詳細査定とも呼ばれる。建物の管理状態や雰囲気、日当たりや周辺環境などもチェックするので、精度の高い賃料査定が期待できる。スケジュール調整や現地立会いの手間と時間はかかるが、最終的な家賃設定をする前に、訪問査定を利用するのがおすすめだ。
賃料査定の方法
実際に不動産会社が賃料査定をする際は、主に次の3つの方法を組み合わせることが多い。
類似物件との比較
査定する物件に条件が近い類似物件と比較し、家賃相場を把握する方法だ。建物の構造・築年数・間取りや広さ・駅へのアクセス性などの条件が似ている物件をピックアップし、賃料を比較する。マンションの場合、同じ棟内の過去の取引事例、現在募集中の物件なども比較対象となる。複数の類似物件から床面積あたりの家賃相場を計算し、設備・日当たりといったプラスマイナス要素を加味して査定金額が算出される。
近隣エリアの需要を分析
近隣エリアでどのような賃貸需要があるのか推測し、賃料査定する方法もある。例えば、ファミリー層が多い住宅街なら、部屋数が多い物件の需要が高くプラス査定になる。逆に単身者が多いエリアなら、ワンルームや1LDKの方が家賃を高めに設定しやすいだろう。
エリアの需要分析は、jSTAT MAPといった統計情報を活用し、家族構成や年齢などの分布を確認する方法がある。前述した類似物件との比較で、間取りの傾向から大まかな需要を予測することも可能だ。
レントロールを参考にする
過去に賃貸されていた実績がある物件の賃料査定では、賃貸借条件を一覧にしたレントロールを参考にすることも多い。レントロールには、入居者の属性や家賃・契約期間などの情報が記載されている。過去の入居率や空室期間も把握できるため、適切な賃料を推測する材料になるのだ。
賃料査定に影響する貸し方
入居者との賃貸借契約の結び方も賃料査定に影響する。それぞれメリット・デメリットもあるため、物件の状態や経営方針に合わせて適切な貸し方を選ぼう。
普通借家契約
普通借家契約は、アパート・マンションの一般的な契約方法だ。契約期間は1年以上で設定されるが、借主の希望で契約が更新できるため長期契約に向いている。ただし貸主都合での解約は借主の契約違反といった正当な理由がない限り認められないため、短期間の賃貸には向いていない。ほかの契約方法より家賃を高く設定しやすいため、長期経営を考えている場合は普通借家契約が向いているだろう。
定期借家契約
定期借家契約は、契約期間をあらかじめ決めて、期間満了したら更新せず退去する前提の賃貸借契約方法だ。親元を離れての就学や単身赴任など、短期間・一定期間だけ借りたい人の需要が期待できる。契約期間が明確で運用計画を立てやすいため、貸主側のメリットも大きい。ただし、一般的な入居者にとってはメリットがないため、ターゲット層は絞り込まれる。賃料査定でもほかの契約方法より金額が低くなる傾向があり、家賃相場も安くなる。
サブリース
サブリースは貸主と不動産会社が賃貸借契約を結び、不動産会社が入居者に転貸する契約方法のことだ。不動産会社が一棟丸ごと借り上げることが多いため、「一括借り上げ」と呼ばれることもある。サブリースでは入居者募集から契約手続き、物件の運営管理まで不動産会社に任せることができる。また不動産会社が空室や家賃滞納のリスクを負い、貸主に一定の保証賃料が支払われるのもサブリースの特徴だ。ただし、賃料の10%程度を不動産会社に支払うことになるため、ほかの契約方法より収益性は低下する。賃料査定も相場より低く見積もられることが多い。
査定の流れ
実際に賃料査定をする際は、まず複数の不動産会社に簡易査定を申し込むのが一般的だ。不動産会社によって査定金額は異なるため、いくつかの簡易査定結果を比較して、訪問査定を申し込む会社を絞り込むのが良いだろう。訪問査定は立会いが必要となるため、担当者と日時を調整して決定する。また、次のような書類が必要になることが多いため、確認の上で当日までに準備しておこう。
- 登記簿
- 購入時の契約書・重要事項説明書
- 建築関係の書類
- リフォーム・メンテナンス履歴が分かる書類
訪問調査当日は担当者が物件を目視確認するため、スムーズに進められるよう鍵の準備や荷物の片づけなど準備しておくのが望ましい。また正確な査定をするために、担当者からの質問に応えられるように用意しておこう。
訪問調査後に査定結果が出たら、金額だけでなく根拠まで確認することが大切だ。査定金額はあくまで推測であるため、高いから良いというわけではない。相場に見合った適切な査定金額を参考にしないと、空室率が高くなったり損をしたりする可能性がある。
不動産会社の選び方
賃料査定は、賃貸物件の管理を任せる不動産会社を見極めるチャンスでもある。査定金額だけでなく、担当者の信頼性や専門性もチェックし、安心して管理を任せられる会社を選ぶことが大切だ。周辺の管理実績、担当者からの適切な提案、依頼する賃貸物件の種類に応じた専門性などを総合的に判断する必要がある。質問に対する回答のレスポンスや正確さなど、担当者の対応も重要なポイントだ。複数の視点で不動産会社をチェックし、経営方針に合う依頼先を見つけていただきたい。
まとめ
賃料査定は適切な家賃設定を把握し、安定した賃貸経営をするために必要不可欠な工程だ。不動産会社によって査定金額は異なるため、基本的な仕組みを抑えて信頼性をチェックできるように準備しておこう。また、賃料査定は管理を任せる不動産会社選びの重要な指標にもなる。実績や管理スキルの高い不動産会社を選ぶことができれば、トラブルの少ない安定した経営につながる。複数の不動産会社の査定結果を慎重に比較検討し、信頼できる不動産会社を見つけていただきたい。
賃料の設定や不動産会社選びでお悩みの際は、第三者的な立場からのアドバイスがもらえる不動産投資顧問へ相談するのもおすすめだ。
アーキバンクでは不動産投資・賃貸経営などに関する質問を受け付けている。どんなことも、ぜひお気軽にお声がけいただきたい。