不動産投資における物件選びではさまざまな観点のチェックが必要だが、接地する道路の種類も確認すべきポイントの一つだ。接地する道路によって不動産物件の資産価値が変化することも多い。
今回は私道の一種である位置指定道路について、基本的な内容や投資で注意すべきデメリットについて解説する。
目次
位置指定道路とは何か?
位置指定道路は私道の一種で、都道府県や市町村から道路の指定を受けたものを指す。
国や都道府県など公的機関が所有する公道と違い、位置指定道路は個人が所有者となる。一般的には分譲住宅などで接道義務を満たすために設置されるケースが多い。
例えば左図のように土地を分割した場合、③④の土地はそのままだと接道義務を満たすことができない。右図のように位置指定道路を設置することですべての土地が接道義務を満たし、③④の土地にも住宅やビルなどを建築できるようになる。
このように複数の土地に隣接する位置指定道路は、それぞれの土地所有者の共有名義にするのが一般的だ。
位置指定道路の基準
位置指定道路は「建築基準法上の道路」に分類され、次のような基準がある。
・幅4メートル以上
・原則として両端が公道に設置していること
(一定条件を満たせば行き止まり道路も可)
・公道との接続部や屈曲部には、1辺2メートルの隅切りを設けること
・原則としてアスファルト舗装
・勾配12%以下で階段にしてはならない
・側溝や雨水桝などの排水設備を設けること
・コンクリート杭などで道路の境界を明確すること
実際はさらに細かい基準があるが、位置指定道路の指定を受けるには上記の基準を満たす必要がある。例えば幅4メートルに満たない、勾配がきつすぎるなどの道路は、位置指定道路の指定を受けることはできない。
位置指定道路と2項道路は何が違う?
位置指定道路と同じように見かける頻度が多い、2項道路との違いについても把握しておこう。
2項道路は、幅4メートル以下で建築基準法が制定された1950年以前からあった道路のことだ。建築基準法では、都市計画区域内の建物は幅4メートル以上の道路に接地することを義務付けている。しかし、昔からある細い道路沿いの建物をすべて取り壊すことはできないため、救済措置として2項道路を指定しているのである。このような経緯から2項道路は「みなし道路」と呼ばれることもある。
2項道路は市町村などが管理する公道であるため、位置指定道路のように維持管理の義務は発生しない。ただし建て替えの際に4メートルの道路幅を確保するため「セットバック」する必要がある。敷地が狭くなり建物も小さくなる可能性があるため、注意が必要だ。
位置指定道路のデメリット
位置指定道路の不動産物件を購入した場合、次のようなデメリットが考えられる。
メンテナンス費用がかかる
前述したように位置指定道路は個人所有となるため、定期的にメンテナンス費用が発生するのは大きなデメリットだ。舗装のやり直しや水道管・下水管の入れ替えなどの費用は、所有者の負担となる。面積や配管の長さによって費用が変動するため、購入前に必ず確認しておくべきポイントと言えるだろう。
税金の負担がある
位置指定道路は所有者の私有地となるため、固定資産税の負担が発生する点も注意すべきデメリットだ。道路なので宅地より評価額は安くなるが、積み重なれば負担は大きくなる。ただし両端が公道に接続するなど不特定多数の人が利用する位置指定道路の場合、固定資産税が免除されるケースもある。
共有名義の場合トラブルになりやすい
複数の所有者による共有名義の位置指定道路は、費用負担や権利をめぐってトラブルになるケースもあるため要注意だ。共有持分の割合によって費用負担が変わるため、大規模なメンテナンス時などにトラブルに発展する可能性がある。
また位置指定道路は所有者全員の同意があれば廃止できるが、意見が分かれてトラブルに発展するケースも考えられる。
第三者に利用される可能性がある
私道は所有者以外通行することはできないが、事情を知らない第三者に利用される可能性があるのもデメリットと言えるだろう。
行き止まりだと気づかずに車が入ってきたり、近所の子供が遊んだりするケースなどが考えられる。第三者に利用されて損耗した場合でも、補修やメンテナンス費用は所有者の負担となってしまう。
売却しにくい傾向がある
ここまで述べてきたデメリットがあるため、位置指定道路の不動産物件は売却しにくい傾向がある。公道に接している物件より費用負担やデメリットが多いため、資産価値が低く見積もられる可能性も高い。また権利関係が複雑で揉めている物件は、かなり売却難易度が高くなるだろう。
まとめ
位置指定道路にはデメリットもあるため、不動産物件として検討する際は十分注意してほしい。所有権や運用についてのトラブル、将来多額のメンテナンス費用がかかる可能性などを確認しよう。接地道路の種類によって資産価値が変わることも多いため、一つの要素として覚えておいていただきたい。