アパートなどの賃貸物件では鉄骨造を採用していることが多いが、重量鉄骨・軽量鉄骨の2種類があることをご存じだろうか。
同じ鉄骨造でも重量鉄骨・軽量鉄骨は資産価値や税制の違いがあるため、よく確認せず契約すると損をしてしまう可能性がある。
今回は重量鉄骨と軽量鉄骨のメリット・デメリットを比較し、見分け方も解説する。
目次
そもそも鉄骨造とは?
鉄骨造は建物の構造部に鉄骨を使用する工法のことで、steel(スチール)の頭文字を取って「S造」と呼ばれることもある。
※建物構造の主な種類
木造(在来・2×4など)
鉄骨造(軽量鉄骨・重量鉄骨)
鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造
日本の住宅では上記のような構造が採用されることが多い。木造は一戸建てや2階建て前後のアパート、鉄筋コンクリート造は3階建て以上のマンションなどで多く見られる。
鉄骨造は木造より耐久性が高く、鉄筋コンクリート造よりコストを抑えやすいため、長期使用を前提としたアパートなどの賃貸物件でよく使われる。
軽量鉄骨・重量鉄骨の違い
軽量鉄骨と重量鉄骨は使用する鋼材の厚みによって分類される。
鋼材の厚みが6mm未満⇒軽量鉄骨
鋼材の厚みが6mm以上⇒重量鉄骨
軽量鉄骨は一戸建てや2階建てまでの集合住宅、重量鉄骨は店舗や3階建て以上の建物で使われることが多い。
鋼材の厚みによって建物自体の特徴も異なる。それぞれのメリット・デメリットを次の章から一つずつ見ていこう。
軽量鉄骨のメリット・デメリット
メリット①:コストを抑えやすい
軽量鉄骨は鋼材自体を大量生産しやすく、施工性にも優れるため建築コストを抑えられるのが大きなメリットだ。軽量鉄骨住宅では規格化されたプレハブ工法が採用されることが多く、工期短縮できコストカットにもつながる。
新築時の建築価格が安いため、中古物件として流通したときも重量鉄骨よりリーズナブルな価格になる可能性が高い。
メリット②:工期が短い
重量鉄骨より扱いやすい軽量鉄骨は、工期短縮しやすい点もメリットと言える。工期が短ければ近隣住民の負担が軽減できるし、入居日と家賃収入を得られるタイミングも早くなる。
デメリット①:間取りの自由度が低い
軽量鉄骨は重量鉄骨より梁の強度が低いため、柱の少ない大空間などをつくるのは難しい。また耐震性を高めるため「筋交い」を壁に入れる必要もあり、窓やドアなどの開口部に制限が出ることもある。
デメリット②:防音性が低い
軽量鉄骨の防音性は木造と同じレベルと言われているため、一般的な施工方法だと隣の部屋同士で音が伝わりやすいケースがある。新築時なら壁や床に防音材を入れて対策もできるが、軽量鉄骨の中古アパートは防音性が低いこともあるので注意が必要だ。
重量鉄骨のメリット・デメリット
メリット①:広い空間を作りやすい
柱や梁の厚みがある重量鉄骨造は、間口の広いリビングなど大空間を作りやすいのがメリットだ。柱と梁で耐震性を確保するラーメン構造も作れるため、間取りや開口部の自由度も高い。
メリット②:リフォ-ムの自由度が高い
強度の高い重量鉄骨は鉄骨柱の本数が少なくて済むため、リフォ-ム時の間取り変更の自由度が高いのも特徴だ。
中古物件を購入してリフォ-ムする際、現代のライフスタイルに合わせた間取り変更で入居率を高められるといったメリットにつながる。
メリット③:防音性が高い
柱や梁が太い重量鉄骨は、壁が厚く防音性が高い物件が多いのもメリットだ。特にアパートやマンションなど賃貸物件では、騒音トラブルのリスクを抑えられるのは大きな魅力と言えるだろう。
メリット④:家賃を高く設定しやすい
重量鉄骨の賃貸物件は地震時などの安心感、前述した防音性の高さなども利点になるため家賃を高く設定しやすいのも魅力的なポイントだ。
一般の方は軽量鉄骨・重量鉄骨の違いを知らない可能性が高いが、物件説明の際に一つのアピールポイントになる。仮に同じ価格帯で軽量鉄骨・重量鉄骨を比較した際、選んでもらえる可能性が高くなるだろう。
デメリット①:コストが高い
重量鉄骨は材料費+施工費どちらも多めにかかるため、軽量鉄骨より建築コストは高くなる。中古物件価格も高くなるため、初期費用は多めに用意する必要があるだろう。
デメリット②:重量がある
厚みのある鋼材を使う重量鉄骨は、当然建物全体が軽量鉄骨より重くなる。軽量鉄骨だとそのまま建てられる土地でも、重量鉄骨の場合地盤補強が必要になるケースもある。
軽量鉄骨と重量鉄骨の見分け方は?
軽量鉄骨と重量鉄骨の確実な見分け方は、物件情報をチェックすることである。軽量鉄骨と重量鉄骨は外観や内装に大きな差はないため、一般の方が確実に見分けるのは難しい。3階建ては重量鉄骨の可能性が高くなるが、2階建てだとどちらも可能性がある。専門家でも、天井裏などをのぞいて鉄骨の厚みをチェックしないと確実に見分けることはできないだろう。
もし物件情報に鉄骨造としか表記されていない場合は、建築図面などを取り寄せて鉄骨の厚みをチェックすべきだろう。あいまいな情報で判断せず、必ず裏を取ってから契約するようにしたい。
軽量鉄骨と重量鉄骨で融資や税制の違いはある?
軽量鉄骨と重量鉄骨は法定耐用年数が異なるため、融資や税制の面でも差が出てくる。
※鉄骨造の法定耐用年数
鋼材の厚さ3mm以下 19年
鋼材の厚さ3~4mm 27年
鋼材の厚さ4mm超 34年
上記のように鋼材の厚みで法定耐用年数が異なる。重量鉄骨は法定耐用年数が長いため、減価償却に時間がかかり毎年の税金は多くなる。軽量鉄骨の方が固定資産税の下がり方が早く、黒字化できる可能性が高くなるというわけだ。
一方融資については、法定耐用年数が長くなる重量鉄骨の方が有利となる。もともと耐用年数が短い軽量鉄骨の建物は、中古で購入する場合返済期間が短く、融資額も少なくなる可能性がある。
融資・税制については一長一短で、物件の価格や築年数など状況によっても異なるが、一つの要素として覚えておくと役に立つかもしれない。
まとめ
同じ鉄骨造でも、重量鉄骨・軽量鉄骨は物件価格やメリット・デメリットが異なるため、検討時にしっかり確認すべきだ。一般の方が現物で見分けるのは難しいため、必ず建築図書などの資料で確認してほしい。
特にアパート・マンションなどの賃貸物件では、軽量鉄骨・重量鉄骨の違いが大きな差となることも多い。フラットな目線で重量鉄骨・軽量鉄骨を比較検討しよう。