不動産等価交換のメリット・デメリット|仕組みや税金について解説

不動産等価交換のメリット・デメリット|仕組みや税金について解説

不動産の等価交換は、リスクを抑えて土地活用できる手段の一つだ。うまく活用すれば、現金の持ち出しや銀行から借入をせず、マンションの一部を手に入れることができる。ただし自分でアパートやマンションを建てる一般的な投資とは仕組みが異なるため、不安を覚える方も多いだろう。

そこで今回は、不動産等価交換の基本的な仕組みや特徴について詳しく解説する。メリット・デメリットを踏まえて、ご自身の状況に等価交換が向いているか否か判断できるようになって欲しい。

 

不動産の等価交換とはどんな仕組み?

不動産の等価交換とは本来、同じ価値の土地や建物を交換することを指す。しかし不動産投資においては、デベロッパーに土地の一部を譲渡し、その価値に見合う建物の所有権を受け取る取引方法のことを指すのが一般的だ。

不動産の等価交換

例えば土地の所有権を半分デベロッパーに譲渡した場合、建物が完成した後に床面積の半分の所有権を受け取ることになる。同じ価値の土地と建物を交換するのが基本だが、差額分を金銭で清算するケースもある。

最初に土地の所有権をデベロッパーに渡す「全部譲渡方式」、建物が完成してから土地と建物の所有権を移す「部分譲渡方式」があるが、基本的な仕組みは同じである。

 

不動産等価交換のメリット

 

初期投資がかからない

不動産の等価交換は、初期投資不要で土地活用できるのが大きなメリットだ。土地を持っていても、自分でアパートやマンションを建築する場合、多額の自己資金や借入が必要になる。

しかし等価交換の場合は建築費用をデベロッパーが全額負担するため、初期投資ゼロ円で土地活用できる。銀行からの借入がないため、金利変動や空室期間中の資金繰りで頭を悩ませるリスクがないのは大きなメリットと言えるだろう。

デベロッパーに建築・経営を任せられる

等価交換では不動産の建築・経営をデベロッパーが主導するため、自分自身にノウハウがなくても土地活用できる点も魅力的なポイントだ。

もし自分で賃貸マンションやアパートを建てる場合、施工会社選びから建築計画までかなりの時間と負担がかかる。初めてでノウハウが無いと余計に時間がかかるし、失敗してしまうリスクも考えられる。

しかし実績が豊富なデベロッパーなら、確実に収益を上げられる優良物件を建ててくれる可能性が高い。大手のノウハウを活かした不動産物件が手に入るのは大きなメリットだ。

完成後の運用についてもデベロッパーのノウハウを借りられるため、管理会社選びなどで悩む必要がないのもありがたいポイントだ。

 

譲渡所得税を繰り延べできる

土地と建物を等価交換した場合、「立体買い換えの特例」を適用して譲渡所得税を繰り延べできる。

等価交換では実質的にデベロッパーに土地を売却していることになるため、本来であれば譲渡所得税が課税される。しかし立体買い換えの特例を適用すると譲渡所得税を100%繰り延べできるため、経営面で有利となる。

あくまで繰り延べであるため、将来売却する際に譲渡所得税を支払うことになるので注意してほしい。ただし、課税タイミングをコントロールできるので、資金を積み立てて準備することが可能だ。

 

自分で住むこともできる

等価交換で手に入れた建物は、賃貸するだけでなく自分で住むことも可能だ。

事業用ローンなどを組んで建てたアパートやマンションは、自分で住むと契約違反になるケースが多い。金融機関との相談で賃貸から住居に用途を変えられる場合もあるが、ハードルは高めだ。

しかし等価交換は前述したように借入が不要なため、自分で自由に用途を決めることができる。デベロッパーとの契約によって用途が限定されるケースもあるが、基本的には賃貸・住居を自分の都合に合わせて選ぶことが可能だ。

出資比率に応じて複数戸の配分がある場合は、1部屋だけ自分の住まいにして残りは賃貸にすることもできる。

 

相続税対策になる

更地のまま所有するより、等価交換で建物を建てた方が、相続税が安くなるのもメリットの1つだ。アパートやマンションなどの賃貸住宅は用途が限られるため、更地より相続税評価額が低くなる。

デベロッパーから等価交換を持ちかけられる土地は資産価値が高いケースが多いため、相続税の軽減効果もその分大きくなる。これから土地を相続する予定のある方にとって大きなメリットとなるだろう。

ポイント1

 

不動産等価交換のデメリット

 

土地の所有権の一部を失う

前述したように不動産等価交換では初期投資が不要だが、土地の所有権を一部失うため慎重に検討するべきだ。建物が完成した後も一部の所有権は残るが、共有状態となるため実質的に他の運用は不可能となる。

そもそも等価交換の話が来るような土地は資産価値が高いケースが多いため、売却や他の運用でも十分な利益が期待できるだろう。

 

デベロッパーとの協議が難しい

等価交換を主導するデベロッパーは自社の利益を優先するため、土地・建物の配分や契約内容についての協議が難航するケースも少なくない。

デベロッパーは等価交換について豊富な知識とノウハウを持っているため、交渉において不利になる可能性も高いだろう。デベロッパーのノウハウを活かしつつ、自分の利益も確保できるよう気丈に交渉する意思が必要になる。

 

権利関係が複雑になる

不動産の等価交換が完了した後は、土地・建物ともに共有状態となるため、権利が複雑化するのもデメリットの1つだ。建物の完成後にデベロッパーが第三者へ売却するケースが多く、所有者が増えるほど権利関係が複雑になる。

例えば完成したマンションを共有する場合、売却時にほかの所有者の同意が必要となり簡単に手放すことができなくなる。メンテナンス・建て替えなどの意思決定も自分だけでできなくなり、運用面で支障が出る可能性もある。

 

条件の良い土地でないと成立しない

等価交換は基本的にデベロッパーから持ち掛けられるため、立地条件が良い土地でないと成立しない点にも注意が必要だ。

自分発信で等価交換をするのは難しく、デベロッパーが十分な収益が見込めると判断しないと話が来ない。

そのような条件の良い土地は自分自身で賃貸アパートやマンションを建てても成功する可能性が高く、売却してもかなりの利益が見込めるだろう。より大きな利益を求めるなら、等価交換ではなく自分で経営・売却を検討するのも一つの選択肢だ。

ポイント2

 

不動産等価交換の事例と流れ

不動産等価交換で実際によくあるパターンを例に、具体的な流れを確認しておこう。

 

①デベロッパーと打ち合わせ~契約

不動産の等価交換はデベロッパー側からの提案で始まり、建物の規模や用途、建設会社や取引方法などを打ち合わせして契約に至る。具体的には次のような内容について決める必要がある。

・等価交換の進め方(部分譲渡・全部譲渡)

・還元率を決める

・建物の設計や規模

実際はさまざまな打ち合わせや手続きがあるが、特に大きなポイントとしては上記の3つが挙げられる。部分譲渡・全部譲渡は土地と建物の交換方式の違いで、所有権移転のタイミングが異なる。

還元率は土地と建物の出資割合に応じて、完成後の建物の所有権割合を決める数字のことだ。例えば土地価格6億円、建物の建設費が4億円の場合、還元率は地主が60%、デベロッパーが40%となる。土地価格の査定によって還元率が変わるため、不利にならないよう注意が必要だ。信頼できる第三者に相談するなどして、適正な還元率となるようにしたい。

建設するマンションなどの規模や設計はデベロッパーに任せることも可能だが、収益性にも影響するため自身でもしっかり確認すべきポイントだ。任せっきりにせず、当事者意識を持って打ち合わせに参加すべきだろう。

②全部譲渡方式の場合、デベロッパーに土地所有権を移転

全部譲渡方式で等価交換する場合、着工前にいったんデベロッパーにすべての土地所有権を移転する。

③デベロッパーが着工~竣工

建物の建設はデベロッパーが全額出資するため、地主側の費用負担は発生しない。竣工までどれくらいの期間がかかるのか、事前に確認しておこう。

④部分譲渡方式の場合、デベロッパーに土地所有権を移転

部分譲渡方式で等価交換する場合は、このタイミングでデベロッパーに土地所有権の一部を移転する。

⑤建物の区分所有権を地主に移転して運用開始

事前に決めた還元率に応じた建物の区分所有権を地主に移転し、等価交換が完了となる。

ポイント3

 

等価交換で不動産取得税はかかる?

等価交換でマンションやアパートの所有権を取得した場合も、不動産取得税の対象となる。メリットの章で述べた譲渡所得税と違い繰り延べ制度はなく、金銭のやり取りが無かった場合でも必ず支払う必要がある。

不動産取得税額=固定資産税評価額×4%

不動産取得税の計算方法は上記の通りで、固定資産税評価額の4%となる。固定資産税評価額は不動産の時価より低くなり、5~7割前後と言われている。所有権移転登記後、半年~1年を目安に自治体から納税通知書が送られてくるため、忘れずに用意しておこう。

 

まとめ

不動産等価交換は借入なしで土地活用できるのが魅力だが、還元率などデベロッパーとの交渉が難しいといった難点もある。まとまった初期費用が必要になるものの、自分で単独経営したほうが大きな利益が期待できる可能性は高い。

デベロッパーから等価交換の話を持ち掛けられたら、メリット・デメリットを踏まえて、ほかの選択肢も視野に入れて考えるべきだろう。なかなか判断ができないときは、不動産投資に詳しい第三者に相談することも検討してほしい。

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最終更新日 : 2020年4月20日
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