譲渡所得の計算には取得費が必要 取得費不明の場合の対処法を解説

譲渡所得の計算には取得費が必要 取得費不明の場合の対処法を解説

不動産を売却した場合は譲渡所得となるが、譲渡所得を算出するためには取得費が必要である。しかし、先祖代々受け継がれてきた不動産の取得費は分からない場合が多い。

本記事では譲渡所得を算出するために不明な取得費の計算方法を解説する。譲渡所得を算出するための参考にしていただきたい。

 

譲渡所得と不動産取得費のおさらい

不動産を売却し、利益がでれば譲渡所得となる。譲渡所得を算出するためには不動産取得費や譲渡費用が必要だ。ここでは譲渡所得や不動産取得費の計算方法などをおさらいする。

 

譲渡所得と不動産取得費とは

【不動産の譲渡所得について】

譲渡所得は不動産の売却時に生じる利益のことである。利益を得たら納税の義務が生じるため、納税額を算出するのに必要な数字だ。

譲渡所得は下記の計算方法により利益が出なかった場合は、確定申告の義務が生じない。不動産売却で利益が出なくても、確定申告により納税額が軽減されるケースもあるため確認が必要だ。不動産の譲渡所得の計算式は次のようになる。

ポイント1

【不動産取得費について】

不動産の取得費は主に土地や建物の購入金額や建築費だが、不動産を取得する際にかかった費用の合計金額のことを言う。詳細については事項で解説させていただく。

 

不動産取得費の計算方法

不動産の取得費は土地と建物では計算方法が異なる。 土地に関しては購入した代金と購入にかかった諸費用がそのまま取得費となる。

しかし、購入に要した費用がわからない場合はさまざまな計算方法により算出する。詳しい計算方法については事項以降で解説する。

建物については建物の取得に要した費用の合計から、減価償却費を差し引いた金額が取得費である。建物の取得に要した費用の主なものは建築代金や購入代金、リフォーム費用、設備費、改良費などだ。

 

不動産の取得費に含まれる項目

不動産の取得費に含まれる主な項目は3項目である。購入価格や建築費用などの取得価額と設備費や改良費だ。それぞれの詳細や例については次のようになる。

ポイント2

古い不動産や相続した不動産の場合は、不動産の取得費が不明なケースが多い。取得費が不明な場合は、事項以降で解説する計算方法で算出しなければ譲渡所得が算出できないのである。

 

【土地、建物の取得費が不明な場合の計算方法2】概算取得費

これまで解説してきた不動産取得費の計算方法で取得費がわからない場合は、概算取得費を用いて、不動産取得費を算出することになる。ここでは、概算取得費の計算方法と注意事項について解説させていただく。

 

売却収入の5%

不動産の概算取得費は、売却収入の5%と定められている。例えば、不動産を売却して5,000万円の収入を得た場合の不動産取得費は、250万円となるのだ。実際には、 5,000万円の不動産の取得費が250万円というケースは稀にしかないだろう。

概算取得費では譲渡所得が大きくなり、譲渡所得税も多く納める傾向になるのだ。節税を目指すのであれば、さまざまな方法を駆使して、不動産の取得費を算出することが大事である。

 

実際の費用とは合算できない

概算取得費を用いる注意事項は、一部の実際の費用が判明しても取得費に上乗せすることができないことだ。したがって、概算取得費で算出するか、実際の取得費で算出するかの2択になるのである。

 

 

【土地の取得費が不明な場合の計算方法】市街地価格指数

不動産のなかで土地の取得費が不明な場合の計算方法として、 市街地価格指数を用いる方法がある。ここでは市街地価格指数を用いて計算する場合の要件、計算方法について解説させていただく。

 

市街地価格指数が使える要件

市街地価格指数で算出した不動産取得費と、後ほど解説する概算取得費で算出した不動産取得費には大きな差が出るケースが少なくない。精度の高い不動産取得費を求めるのであれば、市街地価格指数を用いた計算方法で、不動産取得費を求める方が良いだろう。

しかし 市街地価格指数で算出された不動産取得費は、必ず認められるものではないのである。過去には、市街地価格指数で算出した取得費が、裁決によって棄却されている事例も少なくないのだ。市街地価格指数を用いる場合には、次にあげる要件を満たしていることが重要である。

ポイント3

 

市街地価格指数をつかった取得費の計算方法

市街地価格指数は、一般財団法人日本不動産研究所が年に2回、全国の主要都市の中から選定した地点の価格調査の結果を指数化したものである。市街地価格指数での計算式は次のようになる。

【市街地価格指数を用いた土地取得費の計算式】

土地取得費=土地の譲渡金額×購入当時の市街地価格指数÷現在の市街地価格指数

 

 

【建物の取得費が不明な場合の計算方法】建築価額表

減価償却資産の取得費の算出方法は、 取得価格から減価償却費の累計額を差し引いたものになる。取得価格が分からずに減価償却資産の取得費が不明な場合は、国税庁より開示されている「建物の標準的な建築価額表」をもとにして、購入当時の価格を推定するのだ。計算式は次のようになる。

【建物の取得費の計算式】

建物取得費=築年数・ 構造と一致する建築単価×延べ床面積

国税庁:建物の標準的な建築価格表

 

 

まとめ

譲渡所得を算出する際には取得費が必要である。しかし、古い不動産や相続した不動産の場合は、取得費が不明であるケースが多い。取得費が不明でも、土地の場合は市街地価格指数ら算出することができる。

建物についても取得費が分からない場合は建物の標準的な建築価額表を基に算出可能である。

もし、どのような方法を駆使しても取得費が不明である場合は、概算取得費により取得費を算出できるが、実際の取得費とはかけ離れた取得費になり、多額の譲渡所得税を納めなければならない。

このような事態を避けるためにも、不動産投資により不動産を取得した場合は領収書や契約書などを適正に保管することをおすすめする。

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最終更新日 : 2020年4月20日
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