不動産投資で安定した利益を生むためには利回りや市場動向のチェックにくわえて、返済比率を確認・調整することも重要だ。
金融機関への返済比率が高いと資金繰りの余裕がなくなり、空室率の上昇や突発的な修繕費用などで赤字転落する危険が増加する。
今回は不動産投資における適正な返済比率の考え方や、返済比率を下げる方法などを解説する。
すでに不動産投資を行っている方、これから始める方どちらもぜひ参考にしてほしい。
目次
返済比率とは
返済比率=ローン返済額/家賃収入
返済比率は不動産投資時に組んだローンの返済額が家賃収入に占める割合のことを指す。返済比率を求める計算式は次の通りだ。
「毎月のローン返済額」 ÷ 「満室時の家賃収入」 × 100 = 返済比率(%)
例えば毎月のローン返済額が60万円で満室時の月間家賃収入が100万円なら、返済比率は60%となる。月額と年額どちらで計算しても同じ返済比率となるので、計算しやすい方で問題無い。
返済比率は不動産投資にどう影響する?
返済比率が高くなると手元に残る現金が減り、低くなると手元に残る現金が増える。不動産投資では返済比率をなるべく低く抑えるのが望ましいということだ。
極端な例だが、頭金なしのフルローンを組んでも返済比率が低ければ黒字経営をキープできる可能性が高い。逆に多くの頭金を入れてローンを組んでも、返済比率が高いと赤字に陥る危険性が高いということだ。
「返済比率が低ければ安全」という単純な話ではないが、安定した不動産運用のための一つの指標としてチェックしてほしい。
変動金利タイプのローンを組んでいる場合返済比率も連動するため、運用開始後も定期的に確認すべきだ。
不動産投資における返済比率の適正目安
安全ラインは50%
賃貸経営における返済比率は50%が安全性を確保する最低ラインと言われている。
ローン返済 | 50% |
諸経費 | 20% |
空室率 | 20% |
支出合計 | 90% |
賃貸物件の維持管理や広告費・固定資産税などの諸経費を20%、空室率を20%と想定すると、返済比率50%だと家賃収入に対する支出合計は90%になる。わかりやすく月100万円の家賃収入とすると、10万円が手元に残る。
通常のメンテナンス以外の修繕など突発的な出費を想定すると少し心もとないが、なんとか黒字経営できるレベルといえるだろう。設備の充実や退出時の素早い原状回復などで空室率を下げることができれば、もう少し余裕を作ることもできそうだ。
仮に上記の想定で返済比率が60%だと手元にキャッシュが残らず、空室が少し増えるだけでも赤字転落のリスクが高くなる。基本的に返済比率は50%以内に抑えよう。
新築や築浅物件なら40%
残り耐用年数が長くローン返済期間も長めに設定できる新築・築浅物件は、返済比率40%を目安に検討したいところだ。
新築は中古物件より運用期間が長くなるため、周辺施設の開廃業・エリアの衰退といった不確定要素が発生する確率が高い。築浅のうちは入居者も集めやすいが、年数が経つと空室率も上昇する。
マンションやアパートには構造種別に耐用年数が定められており、残り期間がたっぷりある新築は長期ローンで月々の返済額を抑えることができる。
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
木造 | 22年 |
※国税庁資料参照
新築や築浅の物件は長い期間所有・運用すると想定して、なるべく返済比率を下げてマージンを多めに取るべきだ。
返済比率はあくまで目安として考える
返済比率は不動産投資における重要な指標の一つではあるが、物件購入時にはあくまで目安であることを念頭に置いてほしい。
返済比率は満室時の家賃収入で計算するが、運用期間中ずっと満室状態が続くことはありえない。「返済比率50%なので問題ない」と皮算用で物件を購入してしまうと、空室が増えたときに赤字転落するリスクが高くなる。
購入検討している物件エリアの空室率の相場なども踏まえ、空き部屋が出た時のシミュレーションしておくべきだろう。
返済比率を下げる方法
家賃収入を増やしローン返済額を減らせば返済比率は下げることができる。いくつかのアプローチが考えられるため、これから購入する物件・運用中の物件両方とも参考にしてほしい。
頭金を増やす
自己資金に余裕があれば、物件購入時の頭金を多めに入れるのも一つの選択肢だ。ローン返済額を抑えれば当然返済比率は下がるし、支払利息の額が減るのも大きなメリットといえるだろう。
ただし返済比率を下げることに固執しすぎて、自己資金をギリギリまで投入するのはおすすめしない。手持ちの資金がないと突発的なトラブルや出費に素早く対応できず、入居者を失う可能性もある。
繰り上げ返済する
返済中のローンを前倒しで繰り上げ返済すれば月額返済額が減るため、返済比率を下げることができる。
繰り上げ返済は手数料がかかるが、後の安定した運用につながることを考えればメリットは大きい。
ただしこの方法でも手持ち資金が減るのは同じなので、現金に余裕があるときに検討してほしい。
金利の低いローンを利用する
物件購入時に金利の低いローンを組めば返済額を抑えられるため、結果的に返済比率も下げることができる。
複数のローン商品を比較検討してみて、なるべく金利が低いローンを申し込むようにすると良いだろう。
すでに運用中の物件のローンについても定期的に見直しを行い、より金利が低い金融機関への借り換えも検討すべきだ。付き合いが長く信頼関係がある金融機関なら、金利を下げてもらえるよう交渉してみるのもいいだろう。
空室率の低い物件に投資する
前述したように返済比率は満室時を想定して計算するため、物件の空室率が低いほど実質返済率を下げることができる。
すでに人口が減少に転じている日本の住宅市場では、特に空室リスクの低い物件に投資することは重要だ。
運用中の不動産物件も広告宣伝やメンテナンス・設備の充実などで空室率と返済比率を下げることが可能だ。コストとリターンのバランスを考えながら、入居者の確保を考えてみて欲しい。
まとめ
返済比率は不動産投資で安定した利益を生むための重要な指標の一つである。
返済比率を低く抑えられれば手元に残る資金に余裕が生まれ、突発的な出費や空室率の上昇にも柔軟に対応することができる。
新築物件は返済比率40%、中古物件は50%を一つの基準として、物件選びや資金計画を検討しよう。金利の変動や入居率によっても返済比率は変動するため、運用中の物件についても定期的に見直すことも大切だ。
今まで返済比率をチェックしいない方は運用指標の一つに取り入れ、安定した経営を目指してほしい。