不動産投資において賃貸経営は主力投資先だ。近年の不動産投資はキャピタルゲインよりもインカムゲインがメインである。賃貸経営は不動産投資の中心的インカムゲインであるため、その種類や特徴とメリットやデメリットを知らなければ収益をあげることが難しくなる
今回は、不動産投資における主な賃貸経営のメリット・デメリットを解説し、リスクの軽減策を伝える。本記事を読むことで不動産投資による賃貸経営の知見を深めることができるだろう。
目次
賃貸経営できる主な不動産投資先とメリット・デメリット
賃貸経営できる不動産投資先は多岐に渡っている。投資先によって特徴があり、メリット・デメリットも違うの。ここでは主な不動産投資先の特徴を紹介し、メリット・デメリットを解説する。
1棟投資の特徴
1棟投資はマンションやアパート、貸ビルなどに1棟丸ごと購入し、賃貸経営する不動産投資方法である。特徴は多額の資金が必要だが大きな賃貸収入を得られることだ。
1棟投資のメリット
1棟投資のメリットは以下である。
- 1棟投資は高い利回りが期待できる。
- 部屋数によって収入が高くなる。
- 建物の耐用年数が長いため資産価値が下がりにくい。
- 建物は減価償却できるため所得税申告時に経費計上できる。
- 土地は値下がりしにくいため資産として残せる。
- 資産価値があれば融資が受けやすい。
- 賃貸経営の自由度が高い。
- 戸数が複数あるため急激な収入減リスクが小さい。
1棟投資の大きなメリットは、高利回り高収入が期待できて資産価値が下がりにくいことだ。賃貸経営が軌道に乗れば安定した不労所得を得ることもできる。
1棟投資のデメリット
1棟投資のデメリットは以下のようになる。
- 投資する資金が多額になる。
- 失敗した場合の損失が大きい。
- 流動性が低いため売却時に時間を要する可能性がある。
- 維持管理費が高額になりやすい。
- 管理方法次第では入居者のクレーム処理も必要となる。
1棟投資の大きなデメリットは投資金額が大きくなるため、賃貸経営に失敗した場合の損失が大きくなることだ。しかし不動産はなくなるものではなく手元に残るため、上手く売却できれば損失の穴埋めも可能である。
区分投資の特徴
区分投資とは、分譲マンションなどの1室などに投資することである。投資して所有した区分マンションを貸し出して賃貸経営したり、民泊経営したりすることが特徴だ。
区分投資のメリット
区分投資のメリットは以下のようになる。
- 物件価格が低いため投資しやすい。
- 複数に分散投資できるためリスクを分散できる。
- 比較的耐用年数が長い物件が多い。
- 物件数そのものが多い。
- 共用部の管理・修繕がない。
区分投資の大きなメリットは投資金額が抑えられてリスクを分散できることである。築浅で頑丈なマンションなどを選んで投資すれば耐用年数も長くなる。
区分投資のデメリット
区分投資のデメリットは以下のようになる。
- 1つの投資先当たりの収益が少ない。
- 分譲マンションの区分所有であれば修繕積立金などが発生する。
- 中古物件では、すぐに修繕費用が発生する可能性が高い。
- 土地の所有分が少ない。
- 築年数の経過に伴い資産価値が下がる。
- 空室が出ると該当物件の収益がゼロになる。
区分投資のデメリットは、収益性の低さと修繕費や修繕積立金が発生するリスクだ。 特に築年数が古く現在の建築基準法に対応できていない物件は避ける方が賢明である。
中古戸建投資
中古戸建投資とは中古の戸建物件に投資することだ。 通常、戸建住宅は投資目的ではなくマイホームとして建築するため、戸建投資の中心は中古物件となる。借家やシェアハウスとして賃貸経営したり、民泊経営したりして収益を得るのが特徴だ。
中古戸建投資のメリット
中古戸建投資のメリットは以下のようになる。
- 投資額を抑えられる。
- 間取りを変更しやすい。
- シェアハウスとしての運用も可能。
- 駅から距離がある物件でも需要が見込める。
- 入居者の入居期間が比較的に長い。
- 共用部分の管理や管理費がかからない。
- 利回りが高い物件を見つけやすい。
- 複数の物件に投資することによりリスクを分散できる。
- 最終的には建物を撤去して土地を売り出すことが可能。
中古戸建投資のメリットは投資金額を抑えられることや管理費などがかからないことである。しかし管理を管理業者へ依頼する場合は、相応の手数料が発生する。また、分散投資できることも大きなメリットだ。
中古戸建投資のデメリット
中古戸建投資のデメリットは以下のようになる。
- 空室が出ると該当物件の収益がゼロになる。
- 中古物件のため設備をふくめて修繕費が発生しやすい。
- 築年数の経過に伴い資産価値が下がる。
- 権利関係が曖昧な物件があるため手続きが面倒。
- 法定耐用年数の経過により融資が受けにくくなる。
中古戸建投資のデメリットは修繕費がかさむ可能性があることだ。中古戸建住宅の大半は木造か軽量鉄骨であるため、築年数の経過とともに入居者から修繕の要請が増える傾向となり費用もかさむ。
また、法定耐用年数がRCなどと比べて短いため、融資を受けにくくなることも投資の効率を考慮すれば大きなデメリットになる。
その他の賃貸経営の投資先
不動産投資は居住用の不動産だけではなく、貸しビルや貸倉庫、駐車場などもある。これらの投資先の特徴を理解しておけば、居住用以外での不動産投資で収益を上げることが可能だ。また、所有している不動産の賃貸経営を抜本的に改革することにも役立つかもしれない。
貸しビル
貸しビル投資は1棟丸ごとビルを買い上げて店舗や事務所などとして貸し出す投資だ。利回りが高く、賃料の単価が高いメリットがあり、保証金も多いため運用益を出すこともできて経費率が低い特徴がある。
住居型の投資に比べてリスクが高いことがデメリットだ。貸しビルのリスクは空室率が高くなったり、賃料の変動が大きくなったりすることである。また、テナント募集に対するノウハウも必要で、基本的に地震保険に加入できないことも大きなデメリットになる。
駐車場
駐車場への投資はリスクが少ない反面、リターンも少ない投資だ。初期投資も少なくて済み、維持費がほとんどかからないため、すでに土地を持っている人向けの不動産投資となる。
倉庫
倉庫への投資は住居用不動産投資に比べて利回りが高いのが特徴だ。種類が多種多様なため駅から離れていても需要があり、メンテナンス費用があまりかからないことがメリットである。
デメリットは一旦空室になると次に入居までの期間が長めになったり、固定資産税が割高になったりすることだ。また倉庫業を営む場合は許可が必要となる。
賃貸管理の種類とメリット・デメリット
不動産投資して賃貸経営する場合、どのような物件であっても必要となるのが管理である。物件の管理方法は大きく分けて3つある。内訳は自己管理と委託管理、サブリースだ。ここでは3つの管理方法のメリット・デメリットについて解説する 。
自己管理の特徴とメリット・デメリット
自己管理とは、賃貸物件の管理を不動産投資し賃貸オーナーとなった人が行う管理方法である。入居者と直接やりとりすることが多く、賃貸物件の管理に対する知識や経験も必要となる。物件が自宅から離れれば離れるほど自己管理は難しくなる。
メリットの一覧
- 自己管理のため管理会社を利用しないので管理費用がかからない
- 物件管理の経験を積むことができる
- 物件の老朽化や設備の故障などに目が行き届きやすい
- 入居者とコミュニケーションをとりやすい
デメリットの一覧
- 賃貸物件の管理に手間と時間がかかる
- 入居者のクレームに対して休日返上の対応が求められる
- 入居者とトラブルになる可能性があり
委託管理の特徴とメリット・デメリット
委託管理は管理会社が賃貸管理を行う管理方法である。賃貸管理のすべてを任せることができるが、どこまで任せるかは契約によって異なる。入居者との間に入って業務を行うため賃貸オーナーは入居者とコミュニケーションを取る必要がない。自宅から離れた物件は必然的に委託管理となるケースが増える。
メリットの一覧
- 管理業務に時間を要しない
- 本業や賃貸経営の拡大に専念できる
- 賃貸管理の専門家が対応してくれるため安心して任せることができる
- 入居者とのトラブルを回避できる
デメリットの一覧
- 委託料や管理料などが発生する
- 管理会社によって対応力に差があるため良い管理会社を探す必要がある
- 契約内容にない業務を依頼する場合は別途費用が加算される
サブリースの特徴とメリット・デメリット
サブリースとは自分が所有する物件をサブリース業者が丸ごと借り上げて賃貸経営を行う方法である。 入居者からの家賃回収などもサブリース業者が行う。サブリース業者が賃貸物件の入居状況に関わらず、所有者に補償賃料を支払う仕組みである。賃貸オーナーと入居者の接点は何もない。
メリットの一覧
- 空室リスクや家賃滞納リスクを回避できる
- 契約で定められた収入を毎月得られる
- 管理業務を全て任せられる
- 確定申告が簡素化される
デメリットの一覧
- 家賃収入を最大化させることができない
- 賃貸オーナーが入居者を選べない
- サブリース業者の倒産リスクがある
不動産投資で賃貸経営を失敗する理由
不動産投資による賃貸経営は投資の中では安定した収益を得ることができる投資である。しかし、賃貸経営を失敗してしまう経営者も少なくない。ここでは賃貸経営がなぜ失敗するのかを解説する。
資金計画とキャッシュフロー
不動産投資により賃貸経営を行うにあたってほとんどの場合、資金計画をたてて実行に移す。収支の予測が甘いと賃貸経営は赤字になる可能性が高くなる。賃貸経営の家賃収入は実質利回りが5%程度である。資金計画の段階で空室が発生しても、すぐに赤字経営にならないような資金計画を立てておくことが大切だ。
賃貸経営は、堅実な資金計画のもとに賃貸経営をスタートして、キャッシュフローをしっかりと把握することが重要になる。キャッシュフローとは現金の流れであり、財政活動によって実際に得られた収入から支出を差し引いて残る資金の流れのことだ。
損益計算書とは異なり、現金収支を把握するための大事な会計資料である。資金計画がずさんでキャッシュフローを把握していなければ、賃貸経営失敗の大きな原因となる。
立地に問題がある
投資先不動産は立地と物件が適していなければ賃貸経営は軌道にのらない。倉庫業を混雑する駅近で行っても意味がなく、駅から遠く離れた立地にあるマンションに投資しても空室リスクが増す。
不動産投資で賃貸経営する事業計画を立てる際には、立地に問題がないかを検証するのが大切だ。問題のある立地に投資した場合は失敗の可能性が高くなる。損失が小さい間に手放すか、立地の用途に応じた賃貸物件へと方向転換させよう。
リサーチや不動産投資の知識不足
不動産投資は計画する段階で綿密なリサーチが不可欠である。立地はもちろんだが、住民の平均所得や地域の産業、大学の有無なども欠かせないリサーチ要素となる。リサーチし分析した結果、投資先の物件に需要があれば空室リスクの軽減が可能だ。需要がなければ今は満室でも将来的に空室が増え、収益を悪化させる可能性が高まる。
需要にあった管理会社の選び方や不動産投資ローンなどの不動産投資に関する知識は事業計画に必要であり、賃貸経営において不可欠である。入居人の要望にあった賃貸経営ができれば、安定した家賃収入を望むことも難しくない。不動産投資に必要な不動産知識は本サイトでカテゴリー別に解説しているので参考にしてほしい。
賃貸経営のデメリット対策
賃貸経営をする場合は多くのメリットがあるがデメリットもある。しかしデメリットを克服すれば安定した家賃収入を得ることができて、不労所得を享受することも難しくない。
下記がデメリットを克服する5つのポイントである。
それでは詳しく解説していこう。
空室対策が肝になる
賃貸経営において空室は収入の減少となり収益の悪化の大きな要因だ。空室対策は需要の有無のリサーチから始まる。需要が見込めれば次は入居者にとって魅力的な間取りや設備を整えることだ。他の物件と比較してコストパフォーマンスや内装、住宅設備が良ければ空室率を下げられる。
不動産仲介会社との信頼関係も空室率を左右する。不動産仲介会社は懇意にしているオーナーの物件であれば積極的に仲介してくれる。ありとあらゆる手段を講じて空室を出さないことが賃貸経営におけるデメリット対策の肝になる。
投資前に建物の老朽化を計画に組み込む
建物の経年劣化は賃貸物件としての魅力を減退させる。何も手段を講じなければ家賃の値下げとなり収益の悪化につながる。築年数よりも劣化を抑える手段としてメンテナンスがある。日頃からのメンテナンスが行き届けば建物の劣化を遅らせることも難しくない。
日頃のメンテナンスとともに重要なのが、大規模な修繕を含めた資金計画だ。構造体によっては新築に見劣らない建物にリフォームすることも可能であり、入居率を上げる要素になる。
融資を受けるなら金利上昇対策も必要
不動産投資で融資を受ける場合は金利上昇リスクについても対策を講じておく必要がある。固定金利なら必要ないが、変動金利や固定期間選択型変動金利を選択した場合は金利の上昇=ローンの返済額の上昇となる。
不動産投資ローンの申し込み段階で予め余裕のある資金計画を立てることが望ましい。景気や金利の動向を注視して将来的に金利が上がると予想されるなら、固定金利を選択するようにしよう。
災害対策は最も重要
日本は地震大国であり、近年は地球温暖化により、集中豪雨や巨大台風の被害が続出している。賃貸経営にあたって災害リスクをさけることはできない。被害を受けると入居者の安否はもとより、物件も大きなダメージを受け資産価値が下がる。
火災保険に入っていれば自然災害に対して補償を受けられるが、地震は補償外なので火災保険契約時に地震保険も契約しておくことをおすすめする。注意が必要なのは入居者の火災保険更新漏れだ。火災保険更新時には必ずチェックしておくようにしよう。
投資前に売却リスク軽減策も視野に入れる
不動産投資では投資前に売却リスクを視野に入れる必要がある。現金が必要で急遽売却しようとしても買い手がつかないと売却できない。仮に買い手がついたとしても希望価格で売却できるとも限らない。
不動産投資で賃貸経営を行うのであれば、長期的な視野で計画を立てる必要がある。不動産は流動性がほとんどない資産なので、長期運用を前提として投資するようにしよう。
不動産投資先は慎重に検討し堅実に経営しましょう
不動産投資の投資先はアパートやマンションだけではなく、戸建住宅や倉庫なども含まれる。立地に適していて需要が見込める物件に投資し、賃貸経営するように心がけよう。
管理方法も昔の大家さんタイプからサブリースまで様々だ。どの管理方法が適しているかを的確に判断し、入居者とトラブルが起きない管理を行えば安定した収入を確保できる。
不動産投資での賃貸経営に興味を持たれたら、この「不動産投資顧問のすゝめ」サイトを活用してほしい。不動産投資に関する記事が網羅されているので、きっとお役に立てるはずだ。