不動産物件に共同抵当権を設定するメリット・デメリット

不動産物件に共同抵当権を設定するメリット・デメリット

新しい不動産物件の購入で、金融機関から自宅や他の所有不動産への共同抵当権設定を提案されることは珍しくない。

他の物件を担保として差し入れることで融資額が増えたり、審査が通りやすくなったりするためだ。

しかし初めてのことだと、共同抵当権によって物件が被るデメリットや手続き・費用など気になることも多いと思う。

今回は不動産物件における共同抵当権のメリットやデメリット、注意点などを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてほしい。

 

共同抵当権とは

一つの債権に対して複数の不動産に抵当権を設定することを共同抵当という。共同担保と呼ばれることもある。

一軒の不動産では債権の支払いを担保できないとき、他の不動産にも抵当権を設定することで補うという考え方だ。

不動産物件における共同抵当権の具体的なパターンを2つほど紹介する。

 

土地と建物に同時設定する場合

マイホーム購入で土地と建物に抵当権を設定して住宅ローンを組む方法は、共同抵当権の代表的なパターンである。

土地と建物がセットなので別の物件というイメージが無いかもしれないが、両方の価値で債権の支払いを担保しているということだ。

不動産物件の場合も例外ではなく、ローンを組んでアパートやマンションを購入した方は、土地と建物に共同抵当権を設定しているのではないだろうか。

 

ほかの物件を追加する場合

新しく購入する土地と建物だけで支払いを担保できない場合、ほかの不動産物件に追加で共同抵当権を設定する方法もある。

対象となる不動産物件は自宅や土地単体などさまざまで、評価額やローン残債によっては共同担保として認められることがある。

土地だけ先に購入して、後からマンションやアパートを建てる場合もこちらのケースに含まれる。

 

共同抵当権を設定するメリット・デメリット

複数の不動産物件に共同抵当権を設定することにはメリット・デメリット両面がある。

検討物件の条件や差し入れる不動産など、ご自身の状況も踏まえてしっかり検討してほしい。

 

共同抵当権のメリット

複数の不動産に共同抵当権を設定すると、融資額の引き上げや審査が通りやすくなるといったメリットがある。

具体的には下記のようなシーンで活用されることが多い。

・頭金が足りないので自宅を共同抵当に入れてローン審査を通す

・共同抵当で融資額を引き上げ、手元に現金を残してトラブルに備える

手元に現金が無いが条件の良い物件が見つかったときなど、買い逃しを防げるのは大きなメリットと言えるだろう。

 

共同抵当権のデメリット

万が一ローンの支払いが滞ったとき、対象物件だけでなくほかの不動産まで失うリスクがあるのは共同抵当の大きなデメリットだ。

仮に自宅に共同抵当権を設定して副業のアパート経営がうまく行かなくなったとき、住む場所まで失ってしまう可能性があるということだ。

また共同抵当権を設定した物件は売却が難しくなるため、流動性と運用の選択肢が狭まるのもデメリットと言えるだろう。

ある程度返済するまでほかの借入担保にすることもできないため、しばらく次の動きを取るのは難しくなる。

 

共同抵当権の注意点

 

一部抹消が難しいケースがある

複数の不動産に共同抵当権を設定した場合、基本的にローンを全額返済するまでは一部抹消できない点は要注意だ。

例えば4,000万円の債権に対して、3,000万円の物件A、1,000万円の物件Bに共同抵当権を設定しているとする。

 

共同抵当権

この場合、1,000万円返済した時点で物件Bの抵当権だけ一部抹消をしようとしても、A・B両方で債権を担保しているので難しいケースが多い。

物件の価値や返済状況によっては一部抹消が認められる場合もあるが、共同担保にする場合は完済までの運用計画をしっかり立てるべきだ。

 

他管轄の物件は認められないことがある

共同抵当権を設定できる物件は、債権者となる金融機関の管轄エリア内に限られる場合がある点も注意が必要だ。

例えば遠方の実家などを共同担保として差し入れようとしても、融資を相談する金融機関の対応エリア外だと認められない場合がある。

共同担保による借入を検討する場合は、必ず事前に金融機関の担当エリア内であるかどうか確認した方が良いだろう。

 

抵当権追加登記に必要な書類と費用

既存抵当権にほかの不動産物件を追加登記するときそろえるべき書類と、かかる費用の相場について解説する。

 

必要な書類

抵当権追加登記に必要な書類は以下の通りだ。

抵当権追加設定契約書 基本的に金融機関が作成する
登記原因証明情報 追加登記に必要な情報だけまとめた書類
印鑑証明書・実印 申請日の三ヶ月以内に発行
登記識別情報 所有者が所持している登記識別情報(登記済証)
登記証明書 既に抵当権が設定されている物件のもの。法務局でオンライン申請可能
登記申請書 法務局にひな形あり

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

 抵当権追加設定契約書・登記原因証明情報についてはどちらかを提出すれば良く、基本的には融資してもらう金融機関が作成する。

ほかの書類はご自身でそろえる必要があるため、なるべく早めに用意しておくと手続きがスムーズに進むだろう。

オンライン請求できるものも多く、申請の手続きもそれほど難しくないだろう。

登記申請書は法務局ホームページからダウンロードできるひな形があり、記載例も用意されている。しかし、本人がおこなうことは事実上なく、金融機関が紹介する司法書士がおこなうことになる。

 

抵当権追加設定の登記費用

抵当権の追加登記にかかる費用は、登録免許税と司法書士への報酬の二種類となる。ローンの頭金とは別に現金で用意する必要があるため、しっかり予算として用意しておこう。

登録免許税 追加1物件につき1,500円
司法書士報酬の相場 4~7万円

抵当権の追加設定登記は、法律上自分で行うことも不可能ではないが司法書士に依頼するのが一般的だ。

具体的な登記手続きは煩雑なため、司法書士報酬が浮いたとしてもそれ以上の時間をロスする可能性が高い。万が一ミスすれば融資が遅れたり契約違反となったり、重大なトラブルにつながる恐れもある。

基本的には司法書士に相談し、必要書類を手早くそろえてスムーズに手続きを進めよう。

ポイント

 

まとめ

共同抵当にはリスクやデメリットもあるが、資金調達の一つの選択肢として覚えておいて損はないだろう。

現金が足りないが良い条件の不動産を見つけたときなど、買い逃しを防ぐこともできる。

ただし複数の不動産を失うリスクや物件の流動性が下がるデメリットもあるため、その場しのぎで共同抵当権を設定するのはおすすめできない。

完済までの長期スパンで運用プランをしっかり考え、安定した不動産経営を目指してほしい。

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最終更新日 : 2020年4月20日
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