農地を地目変更してアパートを建てられるか?|手続きと費用を解説

農地を地目変更してアパートを建てられるか?|手続きと費用を解説

田んぼや畑などの農地にアパートを建てるのは難しいイメージがあるが、農地の種類によっては農地転用・地目変更の手続きで建てられる可能性がある。

選択肢を広げることで黒字経営につながる優良物件に出会える可能性もあるので、農地でもアパート候補地として検討する余地はある。

当記事では農地を宅地に地目変更してアパートを建てるまでの流れ、費用や掛かる期間について解説する。

 

農地にそのままアパートは建てられない

市街化調整区域の登記上農地となっている土地は、購入後そのままアパートを建てることはできない。

土地が限られている日本では、農業生産を守るために法律で農地が保護されているためである。

 

田畑は地目変更が必要

土地には23種類の地目が定められており、それぞれ用途が定められている。

基本的には「宅地」以外の地目の土地には建物を建てられないため、「田・畑」に当てはまる農地は地目変更をする必要がある。

田・畑の地目変更の場合はさらに「農地転用」が必要になり、ほかの地目に比べると手続きや許可のハードルが若干高い。

一口に農地と言っても実際は細かく種類が分かれており、

アパートを建てるために農地を購入する場合、農地転用と地目変更ができるか事前にしっかり調査してほしい。

 

地目変更できる可能性がある農地  

農業委員会から農地転用の許可を得て地目変更できかどうかは、農地の種類により異なる。

※地目変更できる可能性がある土地の例

第二種農地 ・生産力が低く、将来市街化する可能性のある小集団の農地
第三種農地 ・市街化区域内または市街化の傾向があるエリアの農地
非農地 ・農地法施行日(昭和27年10月21日)以前から農地ではなかった土地

・自然災害などで農地に復旧できないと認められた土地

・20年以上耕作されていない土地

など

第二種農地・第三種農地は許可基準を満たせば農地転用できる可能性があるため、アパート建築用の土地として検討する余地がある。ただし必ず宅地に転用できるわけではないので、事前確認は必要だ。

登記簿の地目が田畑でも非農地の条件を満たしていれば、「非農地証明」が発行されて地目変更することができる。長期間耕作されていない農地なども農地転用できる可能性がある。

 

地目変更が難しい農地

次の種類のような農地は地目変更の難易度が高く、転用許可が下りないと考えた方が良い。

農用地区域内農地 ・農業振興地域整備計画によって指定された生産性が高い農地

 

甲種農地 ・市街化調整区域内にある良好な条件の農地

・農業公共投資が実施されて8年以内

第1種農地 ・農用地区域内にあり、土地改良事業の対象になっている

上記のような農地は生産性が高く保護すべきと判断されることがほとんどで、一部の例外はあるものの、原則農地転用不可となっている。

仮に農地転用の許可が下りる条件がそろっていても、確実にアパートを建てられる保証はない。手続きにかかる費用や期間のハードルも高いので、積極的に購入を検討するべきではないだろう。

ポイント1

 

田畑から宅地に地目変更する方法

田畑などの農地を宅地に変える場合、農地転用・地目変更の2段階の手続きが必要になる。

 

農地転用の手続きをする

農地を宅地に変更するには、まず農地転用について農業委員会で手続きをする必要がある。

具体的には各市町村に設置されている農業委員会の担当者と打ち合わせをして、必要な手続きや書類を確認する。

前述した農地の種類によって、農地転用許可・農地転用届・非農地証明のどの手続きをするのかも変わってくる。

手続きにかかる期間や費用も変動するので、早い段階で一度農業委員会に相談してみると良いだろう。

無事に農地転用許可が下りればアパートを建てることができ、その後地目変更の手続きを進める流れになる。

 

地目変更に必要な書類を揃える

田畑を宅地に地目変更する場合に必要な基本書類は「登記申請書・農地転用の書類(許可書や届出書)・土地の案内図」の3点だ。

申請書は法務局のホームページから入手でき、農地転用書類は前の手続きでそろっているはずだ。土地の案内図は住宅地図など現場が分かる物を用意すれば問題ない。

ほかにも土地家屋調査士に申請を依頼する場合の委任状が必要になるケースもあるが、入手が難しい書類はないだろう。

 

地目変更登記を法務局に申請する

書類がそろったら土地を管轄する法務局に申請し、現地調査を経た後に問題が無ければ地目変更登記完了となる。

登記完了証は法務局で受け取るほか、郵送してもらうことも可能だ。

通常は申請から1週間程度で完了することが多いが、混雑状況などによって期間が延びることもある。

ポイント2

 

地目変更にかかる費用と期間

 

土地家屋調査士に依頼する費用

地目変更登記は自分で行うことができるが、時間や手続きの煩雑さなどを理由に土地家屋調査士や司法書士といった専門家に依頼するケースも少なくない。

土地家屋調査士に依頼する場合の費用相場は、一筆につき4~5万円といったところだ。さらに登記事項証明書や公図などの書類を揃えるのに、数千円程度の実費がかかる。

ただし土地の一部を分筆して地目変更するなど測量が必要になるケースでは、30万円以上の費用が掛かることも多い。土地の広さや状況によって費用は変動するため、思わぬ出費に慌てないように準備したい。

地目変更前提で土地の購入を検討する場合、手続きにどれくらいの費用が掛かるのか事前に確認して予算に組み込んだ方が良いだろう。

 

地目変更にかかる期間

通常の地目変更は専門家に依頼すれば1~2週間で完了するケースが多いが、事前調査の内容や法務局の混雑具合によって変わる。

農地転用も行う場合は該当物件の種類や自治体によって期間が大きく異なる。農地転用届出の場合は1か月前後で完了することもあるが、農地転用許可が必要だと数か月~1年以上に及ぶケースも多い。

農地転用許可を審査する農業委員会の総会が隔月開催の自治体もあり、申請のタイミングによっては2か月遅れてしまうわけだ。

田畑を地目変更してアパート建築を検討する場合、必ず事前にかかる期間も確認してほしい。

ポイント3

 

地目変更しないデメリット

土地の地目変更をせず建物を建てて使用すると、各種手続きの制限や罰則・罰金といったデメリットがある。

不動産ローンの審査では登記簿謄本で確認するため、現地と地目が一致していないと融資を受けるのは難しいだろう。売却時も買主は地目と現況を確認するはずなので、やはり地目変更を求められるはずだ。

不動産登記法では変更の日から一か月以内に地目変更登記をするよう定めていて、違反すると10万円以下の過料に処される。

さらに田畑に勝手にアパートを建てた場合、農地法違反によって3年以下の懲役または300万円以下の罰金も科される可能性も高い。建設工事の中止や原状回復を命じられる可能性もあり、損失はかなり大きいものになるだろう。

ルールを守るのは当然のことだが、違反によるデメリットも大きいので必ず建物を作る前に地目変更を行ってほしい。

 

地目変更前の所有権移転はできる?

田畑などの農地は地目変更してから所有権移転するのが基本だ。ただし農地法の許可書があれば、地目変更前に所有権移転することもできる。

契約時に地目が田・畑のままだったとしても、農地法の許可書がそろっていれば所有権を移転して、後に宅地へ地目変更できるということだ。

 

まとめ

農地も種類によっては地目変更してアパート建築が可能になる場合があるため、条件によっては候補地として検討する余地はある。

ただし手続きに時間がかかったり費用が高かったりするケースもあるので、事前に十分確認・検討をするべきだろう。宅地造成が必要になる等の地目の問題をクリアしても、実際に建築時の問題があることも注意すべきだ。

必要な手続きをとらずに、アパートを建てると重いペナルティが課される可能性が高いため、必ず所定の手続きを踏むようにしてほしい。

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最終更新日 : 2020年4月20日
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