不動産投資で火災保険が使える被害は実は数多くあるが、投資が初めての方にとってはどのような被害で使えるかイメージしにくいのではないだろうか。
そこで今回は不動産投資で火災保険を活用できる事例を紹介し、どのような被害に使えるか具体的に知っていただこうと思う。
さらに賃貸物件のオーナー向けの特約や入居者に加入してほしい保険も解説しているので、ぜひ最後まで読んでほしい。
目次
不動産投資での火災保険の対象被害
まず不動産投資で火災保険の補償対象となる具体的な被害を紹介する。
火災被害
当然ながら建物の火災が第一の補償対象になり、入居者の火の不始末が原因の場合はもちろん不審火なども対象になる。
さらに建物だけでなく敷地内にある建築物も対象になるため、たとえば駐輪場や門、塀なども被害があれば補償される。
落雷による設備などの被害
落雷による建物被害も火災保険の補償対象となる。建物にできた焼け焦げはもちろん雷の電流が伝わり建物の設備を破損させた損害も補償される。
たとえば電流が電気配線を伝わり照明器具やエアコン、給湯器などを傷めればその機器も補償になる。
ただし入居者の家電などは入居者が加入する家財保険によって補償され、オーナーが加入する火災保険では補償されない点には注意しよう。
自然被害の回復
自然災害による火災保険の適用は近年非常に増えている補償のケースだ。
台風や竜巻、突風などによる風災、大雪による雪災、雹が当たって起きる雹災など、温暖化による気候変動で発生する自然災害は年々増加している。
屋根や外壁が破損したり窓ガラス割れたりといった直接被害や、それらを原因とした2次被害も補償対象となることがある。
たとえば屋根が破損してそこから雨漏りが発生し、部屋の壁紙などを汚してしまったなどの被害だ。
自然災害による被害は適用範囲が比較的広いため、台風や大雪などが発生した後は十分に建物を点検することをおすすめする。
急増する水災被害
温暖化の影響で大雨が増え、その結果引き起こされる水災被害も近年適用されることの多い補償だ。
川などが氾濫して住宅が浸水し、大きな被害を受けている映像をニュースでご覧になった方も多いと思う。
濡れて変形したり汚れたりした建物の材料交換の費用が補償され、家財保険も加入していればオーナーが手配した建物内の家具や家電も再度調達できる。
以前は行政の発行するハザードマップで危険度が低い地域となっていれば水災補償を外す方も
いたが、現在は安全なエリアでも必ずしも安心できず多くの方が付帯している。
被害の大きさから考えると現在最も保険加入の価値がある自然災害補償と言えるだろう。
その他
他にも火災保険はさまざまな補償対象を持っている。
たとえば天井裏の水道管が破裂して水濡れの被害が発生したり、通りかかった車が物件に衝突したり、さらには盗難によって受けた被害を補償する火災保険もある。
幅広い被害に対応する火災保険だが、加入しているオーナーの方がその補償範囲をよく知らないのが現状だ。
せっかく保険料を払っているのであればその活用事例を知り、対象範囲であればできる限り利用するようにしよう。
火災保険の活用事例
火災保険が適用される実際の被害と、申請する際の注意点をお伝えする。
実際に適用されるかは加入される保険会社の判断による。紹介する具体的事例を参考にしながら契約されている保険会社に直接確認するようにしてほしい。
タバコの火の不始末
賃貸物件住人によるタバコの火の不始末での火災は、基本的にオーナーの方が加入する火災保険から保険金が支払われる。
もちろん原因を作った入居者に請求すべきとも言えるが、失火責任法により重過失でない限りは火災の原因を作った本人に賠償責任はない。
重過失とは原因が悪質な場合を指し、たとえば室内で花火をしたなど常識的な部屋の使用から逸脱していた場合だ。
もし保険会社が重過失に該当すると判断した場合は、オーナーの方に保険料を支払った後に保険会社がその入居者にその保険金を賠償請求することになる。
台風の屋根被害
台風によって屋根に損傷が発生した場合も火災保険で被害が補償される。
屋根に瓦などが乗っていてそれが強風で飛んでしまったり、トタン屋根が剥がれたり、屋上がある建物なら飛来物で屋上床が傷んだなどで補償された事例がある。
ただ注意したいのが他の部分に比べて屋根は被害の発見が遅れてしまいやすいことだ。
台風や竜巻などが発生した後は管理会社などに、屋根の点検をしてもらうと良いかもしれない。
大雪による柵の倒壊
大雪による被害も近年増えており、建物の屋根やカーポートが被害を受けるケースが多いと思う。
他にもテレビのアンテナや雨樋と言った建物に付属しているものや、敷地内にある柵などの外構設備も多くの火災保険で対象となる。
この敷地内設備を対象としている点は知らないと、せっかく補償対象の被害にもかかわらず保険を使わず自費修理をすることになってしまう。
たとえばサイクルポートや物置、建物の表札看板なども補償対象となる可能性が高くなっている。
大雪が発生した場合は建物だけでなく敷地内も十分に確認し、もし破損があったら保険会社に対象となるか確かめるようにしょう。
雨漏りによる被害
雨漏りも火災保険で補償されることの多い被害だが、これは雨漏りの原因によるため注意が必要だ。
たとえば前述の台風などで屋根が被害を受け、そのひび割れなどから雨水が侵入して発生した雨漏りは補償対象となる。
しかし、たとえ台風の時に発生した雨漏りでも、雨水が入り込んだひび割れが経年劣化によって元々あったものなら、雨漏りの直接原因が台風ではないとして補償外になることがある。
あくまで火災保険の対象となる損害が建物に発生し、それが直接原因となって発生した雨漏りに補償は限られる。
どのような原因で雨漏りが発生したかはオーナーの方では判断できないため、修理業者に確認してもらうことになる。
配管からの水漏れ
建物の天井裏などにある建物共用配管の水漏れによって建物に発生した被害は、保険の補償対象となる場合がある。
たとえば部屋の内装が汚れて張替える費用や、設備が破損してしまい修理や交換する費用だ。
ただ注意したいのが分譲マンションで、上階の部屋の専有範囲内にある配管から水漏れした場合は、その部屋の所有者の責任となる。
まずは管理組合や保険会社が行う調査で原因とその部分の所有者の特定を行い、その上で保険が適用できるかの判断になるため注意しよう。
水災の条件に注意
近年非常に被害が増えている水災被害では、近隣の河川や用水、沼などが氾濫して洪水となり、建物の床が濡れたり外のボイラーやエアコンの室外機が壊れたりなどの被害が補償対象となる。
また水災を原因とした土砂崩れが建物を壊したり、ゲリラ豪雨による下水の逆流で建物内が汚れたりといった被害も補償対象になる可能性がある。
ただし水災補償は「損害額が再調達価格(同程度の建物を新たに建築する価格)の30%以上」や「床上か地盤面より45cm以上の浸水被害」など、細かな条件が設けられているため注意が必要だ。
さらに長期一括契約で古い保険条件のままだと、建物の被害割合ごとに支払い額の上限が設けられていることもあり、最近の保険の補償内容と異なる場合もある。
またハザードマップをもとに水災リスクが少ない地域と判断して水災補償を外しているケースもあるため、以前より継続している火災保険は補償内容を定期的に見直すことをおすすめする。
地震保険の活用事例と条件
地震が発生した時に建物の被害を補償してくれるのが地震保険だ。
倒壊した場合はもちろん振動により外壁が割れたり落下したり、建物内部の壁紙の割れやサッシの歪みなども補償される。
ただし地震保険は火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲でしか加入できず、建物の保険金額は5,000万円が上限となっている。
戸建てであれば良いかもしれないが、アパートなどの1棟全体が被害を受けた場合は不足も考えられるため、補償金額をしっかりと確認しよう。
地震保険は入るべきか
日本は地震が多いため関心の高い地震保険だが、損害保険料率算出機構のデータによると2019年の加入率はおよそ66.7%となっている。
2010年の48.1%と比べると緩やかに上昇してはいるが、4割強の方は未加入ということになる。
参照元:損害保険料率算出機構
大地震が起きる確率などを考え加入を迷う方もいると思うが、万一建物が倒壊するような被害が発生すれば家賃収入が途絶えるだけでなく、融資を受けていれば債務のみが残る可能性がある。
しかも1棟所有となれば金額は戸建てよりはるかに多額になることも考えられ、万一の負担は非常に大きいものになる。
また地震が原因で隣家から火災が発生して所有物件に燃え移った被害は、自分が加入している地震保険で直さなければならない。
原因が地震であれば通常の火災保険は適用にならない可能性があり、この点も注意が必要だ。
万一発生した場合は非常に大きな損害を負うことになるため、地震保険も前向きに検討することをおすすめする。
オーナー向け特約
賃貸物件を所有するオーナーの方向けの火災保険に付帯する特約も登場している。
代表的なものを紹介するが、いずれも賃貸を運営する立場としてはとても助かるものになっており、ぜひ検討してみることをおすすめする。
施設賠償責任特約
施設賠償責任特約は賃貸建物所有者賠償特約とも呼ばれ、建物の老朽化や整備不足、構造上の欠陥などで入居者や通行人へ与えた損害の賠償を補償してくれる。
たとえば手すりが錆びていて入居者が手をかけたら外れて怪我をさせてしまったり、外壁が剥がれて落下し通行人に怪我をさせてしまったりなどだ。
頻繁に起こる被害ではないかもだが、万一大怪我や後遺症が残るような事態になれば非常に高額な賠償を請求される可能性もある。
特に古い物件を所有されているオーナーの方にはおすすめしたい特約だ。
家賃補償特約
火災や雨漏りなどで部屋が被害を受け修理をしている間、入居者に他の場所へ移ってもらい家賃が入らなくなった場合にその損失を補償するのが家賃補償特約だ。
他にも建物の被害が原因で入居者が転居してしまった場合も、一定期間の家賃を補償する特約もある。
特に融資を受けて物件を運営されているオーナーの方にとって、家賃収入が途絶えることは死活問題と言える。
いくつかあるオーナーの方向け特約の中で最も利用価値のあるものなので、ぜひ加入しておくことをおすすめする。
家主費用特約
所有する物件で入居者が亡くなった場合に、部屋の掃除や消臭、内装の張替え、亡骸の引き取り手がいない場合の火葬費用などを補償する特約だ。
さらに事故物件として家賃を減額したり、空室になって家賃収入が途絶えたりした分を補償する特約もある。
そうある事ではないかもだが、万一発生すれば長期間次の入居者が現れない可能性があり、さらに1棟物件では他の部屋の入居者に退出されてしまう恐れもある。
以前は自殺や病死、殺人といったものが主な原因だったが、今後は高齢化した入居者の孤独死の問題も加わってくる。
これからは決してまれなケースではなく日常的に発生する可能性もあるため、早めに検討しておいてはいかがだろうか。
火災と家財は別契約
火災保険の加入で気をつけたいのが、保険対象は建物と家財で別になっていることだ。
家財とは建物の中にある家具や家電などのことで、家財を対象とした火災保険に加入していれば火事などで消失した場合に補償される。
通常の賃貸では部屋の中の物は入居者の物であるため、建物のオーナーが家財保険に加入する意味はあまりない。
ただし初めから家具や家電を備えた物件を運営するなら、家財の火災保険にも加入しておくべきだろう。
またエアコンは家電であるため家財と考えがちだが、建物に付随する設備として扱われるため建物の火災保険の対象となる。
入居者の保険の活用事例
賃貸の入居者にも万一に備え、以下に紹介するような保険の加入をおすすめしよう。
家財保険
前項でも触れたように火災などがあった場合に、入居者の家具や家電といった家財はオーナーの火災保険では補償されない。
このため入居者自身が家財の保険に加入した方が安心であり、多くの仲介会社では物件契約時に加入をすすめている。
火災だけでなく水漏れや落雷などで損害を受けた時にも使えるため、入居者のメリットは大きいからだ。
ただ通常は賃貸契約の年数と同じ契約になっていて、物件更新時に家財保険を更新せず切れてしまうケースも見受けられる。
万一火災などの被害が入居者に発生しても金銭負担を最小限にしてもらうために、忘れず更新してもらおう。
個人賠償責任保険の事例
個人賠償責任保険とは日常生活の中で偶発的に物を壊したり、他人に危害を与えたりした場合に賠償責任を補償するものだ。
たとえば洗面台の水をあふれさせて下の部屋に水が漏れ、部屋の内装を汚したりその部屋の入居者の家財を傷めたりした場合に利用できる。
また建物の中だけでなく駐車場にあった他の入居者の車を傷つけてしまったり、ベランダから物を落として通行人に怪我をさせたりなど幅広く補償される。
オーナーの立場からすると部屋を傷つけられた場合などに補償されるのは大きなメリットと言える。
こちらも賃貸の契約時や更新の時に必ず加入してもらうよう、仲介会社に依頼しておこう。
まとめ
不動産投資物件で加入する火災保険は火事に限らず補償範囲が大変広いため、活用できる機会が豊富な保険だ。
火事だけが対象と考え加入に消極的なオーナーの方もいるが、しっかり内容を把握すれば費用対効果の高さが理解いただけるはずだ。
特に自然災害や水害は近年増加傾向にあり、被害を受けた際の補修費は莫大な額になりがちなため日頃から十分な備えをすべきだ。
しかし火災保険を管理会社に任せきりにしているとどのような内容か把握できず、せっかく補償される被害でも保険利用を見逃してしまう可能性もある。
物件に何かしらの被害が発生した際には、保険を利用した補修実績のある専門業者に相談し積極的に活用することをおすすめする。