不動産経営の権利や契約における「対抗要件」は理解が難しいが、非常に重要な概念だ。
この記事では不動産物件の対抗要件について、具体例を挙げながら分かりやすく解説する。
これから不動産投資を検討している方はもちろん、すでに物件をお持ちのオーナーの方もぜひ参考にしていただきたい。
目次
対抗要件とは
対抗要件とは、すでに成立している権利を第三者に主張するための条件のことだ。「第三者対抗要件」と呼ばれることもある。
対抗要件を満たしていないと、土地や建物の権利を第三者に主張できない。
対抗要件は動産・不動産などの対象物や権利によって変わり、自動車や工業製品などの動産・株式・特許権など、さまざまな権利に対抗要件が定められている。本記事では土地や建物などの不動産に関する対抗要件に絞って解説していく。
不動産の対抗要件
所有権の対抗要件は登記
土地や建物といった不動産の所有権の対抗要件は登記である。民法では次のように規定されている。
不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない。(民法177条)
金銭を支払って購入した不動産物件も、登記が完了しなければ第三者に対して対抗することはできないということだ。
例えばAという人物が購入した土地を、不動産会社が別の人物Bに二重売買していたとする。この土地の登記が完了していない場合、AはBに対して、購入して取得したはずの権利を対抗することはできない。
仮にBが先に土地を登記してしまうと、Aは金銭を支払ったにもかかわらず所有権を得られないということだ。
借地権の対抗要件は建物の所有
借りた土地を使う借地権者の対抗要件は、借地上の建物の登記だ。借地権の対抗要件は借地借家法で次のように明記されている。
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。(借地借家法第十条)
借地権には登記義務が無く、地主の協力を得られなければ登記することはできない。しかし借地権自体の登記がなくても、借地上の建物の所有権を登記していれば第三者に対抗できるということだ。
ただし、借地名義人と建物の登記名義人は同一でなければならない点は注意が必要だ。仮に借地権と建物の所有権名義がバラバラな状態で地主が底地権を他人に売却したら、最悪土地を明け渡さなければならない。
また建物が火災などで滅失してしまった場合も、そのままでは借地権を主張できない。その場合は登記簿の明細や滅失日などの必要事項を明記し、新たに建物を建築する旨を看板などで掲示する必要がある。
不動産物件における対抗要件の具体例
土地の不法占拠
土地を他人に不法占拠される状況では、所有権登記をしていなくても対抗することが可能だ。
不法占拠者や不法行為者は「第三者」に含まれないため、未登記でも権利を対抗することができる。
例えば親から相続した未登記の土地を知らないうちに他人が使用していた場合、所有権を対抗できるということだ。
詐欺や脅迫による登記の妨害
登記を具備している者が加害目的や不当な利益取得目的で積極的に二重譲渡を教唆した場合等も所有権登記がなくても有無にかかわらず対抗することができる場合がある。
意図的に登記を妨害されたのに所有権を対抗できないと、取引の公平性が失われてしまうためだ。
不動産売買の事実を知りながらもっぱら真の所有者の権利を害する目的で登記を妨害する者は「背信的悪意者」とみなされ、第三者には含まれない。
仮に二重譲渡で背信的悪意者が先に登記を行っても、所有権を主張することができる。しかし、単に先におこなわれた不動産売買の事実を知っているだけでは背信的悪意者とはいえないので注意が必要である。
まとめ
土地や建物の購入・相続時は迅速に登記して、第三者へ対抗できるようにしておくべきだ。
何かトラブルがあってからでは間に合わないため、普段からいざというときに備えておこう。