不動産投資には魅力がたくさんある。賃貸オーナーになれば不労所得が期待できるし、老後も安泰だと考えている人は少なくないだろう。
しかし、どのような商売であっても商品知識が無いのに成功することはあり得ない。そこで、今回は不動産投資の基礎知識に的を絞って解説する。
初めての賃貸オーナーを目指す人やすでに不動産経営者であるが再勉強しようと考えている人の一助になれば幸いだ。
目次
不動産投資とは
不動産投資とは、不動産に投資することで不労所得を得ることだ。
不労所得は労働の直接的な対価ではなく、自分で働かずに得る収入や報酬を指す。自分が投資した不動産で不労所得を稼ぐ仕組みが代表的な不動産投資だ。
そして、できるだけ長く安定した不労収入を得るためには、投資家が不動産の知識や不動産投資のタイミング・不動産の運営方法などを十二分に理解しておくことが肝要だろう。
不動産投資には種類がある
不動産投資は大きくわけて2つ種類がある。
この記事の主題でもある賃貸オーナーとなる不動産投資と、不動産の売買によって利益を上げる不動産投資だ。
近年の不動産投資の主流は賃貸オーナーへの道だ。賃貸オーナーは、1棟全てを所有する場合と区分所有に分かれる。投資資金が潤沢であれば1棟ごとのオーナーになれるし、まだ、初心者で資金も潤沢でなければ区分所有から始めると良いだろう。
賃貸物件の種類は、住居向けと商業向けに分かれる。
住居向けは単身用とファミリー用があり、投資プランに合わせて選択することが望ましいだろう。
また、商業向けでは商業ビルやオフィスビル・ホテルなどが投資先となり、多くの場合、1棟での取引となり区分所有は少ないのが現状だ。商業向けは、多額の資金必要となるケースが多いので、ターゲットを絞り込んでより綿密な計画を立てる必要がある。
不動産投資に慣れてくれば、どのような物件であっても問題ないかもしれないが、ある程度絞り込み得意分野を熟成させるほうが、良い成果を得やすいだろう。
その後、不動産投資が順調に推移すれば、海外不動産への投資も選択肢となりグローバル展開も期待できる。
他の投資との違いを知る
投資と聞いて、真っ先に思い浮かべるのは株式投資なので、不動産投資と株式投資を比べてみよう。
株式投資は、企業の業績や経営戦略、市場動向などから対象の企業の株価が上昇すると期待して株式を購入する。その後は、定期的な配当を得たり、売却益を狙って株式を売却したりする。株式投資での最大リスクは、投資先企業の倒産だ。一気に株式が無価値になるので注意が必要だ。
不動産投資は、投資先の不動産がなくなることがないのでリスクは軽減されている。仮に大きな災害で建物を失っても土地が残るし、保険に入っていれば補償されるので、投資したお金が無になることはない。
また、株式で言う配当よりも、家賃収入のほうが利回りは良い場合が多く、安定した定期収入を得ることができる。
重要なのは不動産の基礎知識を知ること
不動産投資の主流は賃貸オーナーであることはすでに解説した。
賃貸オーナーは2つの特徴を理解しておかねばならない。
1つは、投資額が大きいこと。そしてもう1つは、投資額の回収に長い時間を要することだ。
不動産投資で失敗しないためには、この2つの特徴の理解と不動産投資の基礎知識・情報・計画が必要だ。不労収入とはいえ、収入を得るわけだからプロフェッショナルにならないと成功は難しいかもしれない。
ここでは、賃貸オーナーとして必要な基礎知識を解説する。不動産投資の入り口になるので、しっかり理解しておくと良いだろう。
基本的な不動産投資の知識
不動産投資の基本的な知識は2つに分かれる。「経営関連の知識」と「不動産関連の知識」だ。
経営関連の知識は汎用性が高く、事業計画や経営計画・納税対策などで役立つ。不動産関連の知識は専門性が高く、知識を高まることで、安全で安心できる不動産を見極める目を養えるだろう。
不動産の知識
不動産は、法律や都道府県条例などで多くの規制を受けている。投資後に計画通りに事業運営ができないとなると大きな痛手となり、大きな損害を被る可能性もおおきくなるだろう。
そのようなことにならないように、投資前に4つの知識を得て確認することが大事だ。
不動産調査の知識
不動産の調査には定量調査と定性調査の2種類がある。定量調査は、広告や登記・価格などを資料に基づき調査する。定性調査とは、現地で対象物件を調査することだ。
不動産調査の中で最も大切なのが価格だ。価格は需要と供給や社会情勢・経済動向などに左右される。
しかし、自信をもって投資するためには、賃貸オーナー自ら適正価格を確認できる方が良いだろう。価格を知るには、3つの方法を併用して導き出すのが一般的だ。
- 原価法
原価法は、原価を積み上げて価格を求める方法だ。対象不動産と同じ建物を建てる場合いくらかかるのかという視点から不動産の査定し評価を導き出す。
戸建住宅を例にとると、まず、対象不動産と同じ住宅を同じ土地に建てた場合の費用を算出する。これが再調達原価だ。
そして、経年で古くなった分を再調達価額から減価修正し対象不動産の評価を決定する。
原価法は、建物や建物付きの土地に対して採用される場合が多い査定方法だ。土地のみの場合は、再調達原価が土地の取得費用のみとなるので適していないといえるだろう。
しかし、造成地や埋立地の場合は、取得費以外の費用が生じて原価が上積みされるので、採用されるケースがある。
- 取引事例比較法
取引事例比較法とは、類似の事例と比較して価格を求める方法だ。
多数の取引事例を集めてその中から適切な事例を選択し、その取引価格をもとに査定し評価する。査定では、さまざまな要因を比較考量し価格を修正する必要があり、主な修正は以下の3つだ。
・事情修正:対象不動産に影響した要因を取り除いて修正
・時点修正:タイムラグを考慮し、価格水準の変動についての影響も修正
・地域要因の比較:地域特性による価格への影響や不動産の個別格差を比較して修正
類似の事例と比較して価格を求め、上記のような要因による修正を加えて評価された価格を比重価格という。取引事例比較法は、どのような不動産の種類でも応用が効く方法なので、併用の1つに採用されるケースが多いのも特徴だ。
- 収益還元法
収益還元法は、将来生み出す収益を基に価格を算出する方法だ。
賃貸不動産などの投資用財産や事業用不動産を査定し評価する場合に有効な手段だ。居住用財産であっても、賃貸住宅にすることを想定すれば適用は難しくない。
収益還元法には、直接還元法とディスカウンテッド・キャッシュフロー法の2種類があり後者はDFC法と略されることが多い。
・直接還元法
対象不動産から得られる1期間の純利益を還元利回りで割り戻して、収益価格を直接求める方法。
・DFC法
対象不動産が生み出すと期待される純利益と、期間満了後に対象不動産を売却して得られる予想価格を現在の水準で算出したものを合算し、収益価格を求める方法
これから投資用財産を求めるならDFC法が主流となっているが、売却の場合はすでに1期間の純利益が判っているので直接還元法が主流となっている。
不動産取引の知識
不動産取引の知識とは、不動産に関する法律の知識と言っても過言ではない。不動産取引は、多種多様な法律を守らなければ成立しないからだ。
その法律や制度の中でも賃貸オーナーとして憶えておきたいのが、「瑕疵担保責任」と「借地借家法」だ。
瑕疵担保責任とは、投資物件として購入したが、雨漏りや目に見えない欠陥があった場合などに適用される。売り手が、原則として100%責任を持つ必要があるので、もし、瑕疵を見つけたらすぐに売手に補修を要求しよう。
借地借家法は、借主を保護することが目的で制定されているので、賃貸オーナーにとっては不利な法律となる。事例としては、退去を求める場合に、相当の費用と正当な事由が必要とされるなどだ。
法律は、時代の流れの中で変わるものだ。2020年4月には民法が大幅に改正されている。賃貸オーナーは、不動産に関する法律の知識もしっかり把握しておこう。
不動産に関わる規制
不動産に関わる規制は多岐にわたっていて、規制の基は法律だ。すべてを網羅することは難しいので、賃貸オーナーにとって必要な法律がどのようなものであるかを列挙する。
1.不動産の売買や賃貸借などの契約に関する法律
民法・宅地建物取引業法・借地借家法・消費者契約法
2.権利に関する法律
民法・区分所有法・借地借家法・マンションの建替え等の円滑化に関する法律
3.土地の利用に関する法律
都市計画法・国土利用計画法
4.建物の建築に関する法律
建築基準法・長期優良住宅の普及の促進に関する法律・都市の低炭素化の促進に関する法律
5.不動産登記に関する法律
不動産登記法
6.マンション管理に関する法律
区分所有法・マンションの管理の適正化の推進に関する法律
7.住宅の瑕疵関する法律
民法・宅地建物取引業法・住宅の品質確保の促進等に関する法律・特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律
8.空き家に関する法律
空き家等対策の推進に関する特別措置法
重複する法律があるが、賃貸オーナーとして重要な法律ということだ。不動産会社が一目をおく程度まで理解しておけば、有利に交渉を進めることができる可能性が上がる。
不動産に関わる税金
不動産に関わる税金は、多種多様にある。取得・保有・譲渡に分けていると理解しやすいので分けて記載する。
1.取得に関わる税金
所得税(減税対象となる場合がある)
住民税(同上)
登録免許税
不動産取得税
贈与税(不動産贈与を受けた場合)
相続税(不動産を相続した場合)
印紙税
固定資産税・都市計画税
消費税
2.保有に関する税金
消費税(賃貸収入がある場合)
住民税(賃貸収入がある場合)
固定資産税・都市計画税
消費税
3.譲渡に関する税金
所得税(売却益がある場合)
住民税(同上)
印紙税
消費税
賃貸オーナーになるためには、取得に関する税金と保有に関する税金をしっかりと把握しておくと良いだろう。
不動産経営の知識も必要
不動産投資をして賃貸オーナーになるためには、経営の知識が必要だ。賃貸オーナーは、大なり小なりあっても不動産賃貸業の社長になるのだから経営の知識も必要となる。
経営の知識で重要なものは、不動産のマーケティング・不動産業の財務会計・不動産業に必要な経済学だ。
不動産業のマーケティング
マーケティングの知識は、不動産投資の方向性を決めるのと競合他社に打ち勝つために必要な知識だ。
一般的なマーケティングプランの構築には4P理論が使われている。4Pとは、プロダクト(製品)・プライス(価格)・プレイス(流通)・プロモーションの頭文字をとったものだ。
この4Pを賃貸オーナーに当てはめると、物件・家賃・設備・宣伝となる。それらをターゲットとなる顧客に適正に提供することで、競合他社よりも優位に戦略を進めることがマーケティング力なのだ。
不動産業の財務会計
不動産投資の収支計画には、損益計算とキャッシュフローがある。損益計算で、利益や税金などの計算をする。キャッシュフローは、実際の現金の流れを示すものだ。
賃貸オーナーとして財務会計を確認する為に必要な資料が財務諸表だ。一般的には財務諸表とは下記の3種のことを指す。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/)
- キャッシュフロー計算書や資金運用表
これらの基本的な仕組みを理解することが財務会計には欠かせない。
不動産業に必要な経済学
不動産に必要な経済学は、投資を始めるタイミングを知ることがスタートだ。不動産投資は、外部環境によって大きな影響を受ける。その中で代表的なものが、景気循環と金利動向だ。
景気循環のどのタイミングがチャンスなのかを正確に測ることは難しいかも知れない。しかし、現時点の景気や金利水準などを把握しておけば、投資のタイミングを掴むサインになるだろう。
賃貸オーナーになるための基礎知識
不動産投資をして賃貸オーナーになるためには流れがある。ここでは、その流れの中に基本的な知識を織り込んで解説する。
不動産投資物件を探す方法
不動産物件を探すにはまず、ターゲットとするエリアを決めることから始める。エリアが決まれば、相場を掴むために国土交通省の「不動産取引価格情報検索」というサービスを使うことをお奨めする。日本全国の不動産取引実績から取引価格をみることが可能だ。
相場を把握すれば、不動産のポータルサイトで売りに出されている物件を探し、情報を得る。
不動産会社を選ぶ方法
不動産のポータルサイトで物件が見つかれば、一括問い合わせしてみよう。すぐにいくつかの不動産会社から連絡があるので、不動産会社を選ぶことになる。そのときに必要なのが下記の不動産会社を選ぶ方法だ。
1.不動産投資についての理解している
2.物件の現在を把握していて将来の予想を立てることができる
3.物件の長所だけでなく短所や不具合なども説明してくれる
4.売り込みではなくパートナー感覚である
5.賃貸マンション経営について理解している
6.集客力のあるセールスポイントを説明できる
投資から経営のパートナーになるのが不動産会社だ。単に売るだけという姿勢の会社とは付き合いはできないだろう。
不動産投資ローン審査申し込み
自己資金を超える投資となると不動産投資ローンを申し込まなければならない。その場合は、自分が住む訳ではないので不動産投資ローンを利用することになる。
不動産投資ローンは対象物件が担保となるので、比較的に審査が通りやすいのが特徴だ。また、多くの金融機関が積極的にアピールしているので、自分にあった金融機関を見つけよう。
賃貸管理会社を決める
賃貸オーナーの第2のパートナーが賃貸管理会社だ。もちろん、個人で管理することも可能だが、知識や経験だけでなく大変な労力を覚悟しなければならない。
管理を委託する場合は、委託料を支払うことになる。家賃の5%程度の費用が相場だ。管理会社とは長い付き合いになるので、信頼できる会社を選ぶと良いだろう。
不動産投資で成功する秘訣は無いと知る
不動産投資の基礎知識には、不動産・金融・法律・マーケティングなどさまざまなものがある。それぞれに専門家がいるので、すべての分野を完璧にマスターする必要はない。しかし、投資家がそれらの知識を持っていれば、専門家が真摯に向かい合ってくれる。
この記事では、初めての不動産投資で最も重要である不動産調査の知識の比重を重くした。価格の理由を知ることは、賃貸オーナーとして重要な為、価値を知らずに投資をすれば失敗の基になる。
不動産投資に成功の秘訣はない。基礎からしっかりと知識を蓄積していこう。その知識がリスクを減少し、将来の利益になっていく。