賃貸物件オーナーにとってやるべきことはたくさんあるが、消防点検も重要な業務の一つだ。
賃貸アパートを自己管理している場合はオーナーに点検の義務があるため、実施すべきタイミング内容をしっかり把握しておきたい。
この記事ではアパート消防点検の具体的な内容や実施すべき期間、入居者不在時の対応などを詳しく解説する。
アパート消防点検は大家か管理会社の義務
アパートやマンションなどの共同住宅のうち床面積150㎡以上の建物は、消防法によって消防設備の設置と点検が義務付けられている。
第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
アパートは防火対象物に含まれ、消防点検の義務は所有者である大家か管理会社にある。
点検を怠ったことで火災事故が発生した場合は、大家または管理者の責任となってしまう。また点検・報告を怠ると30万円以下の罰金または拘留の罰則を受ける可能性がある。
①消火器
②自動火災通知設備
③避難器具
④誘導灯
⑤非常警報設備
⑥連結送水管
上記のような設備が消防点検の対象となる。
アパートの規模や設計によって設置されている消防設備は異なり、種類や数が多くなるほど点検項目も多くなる。
アパート消防点検には資格が必要?
アパートの消防点検は、建物の規模や用途によって実施者が定められている。
具体的には、次の条件に該当するアパートは、消防設備士または消防設備点検資格者が点検を行わなわなければならない。
・延べ床面積1,000㎡以上のアパート
・避難階以外の階に存在する防火対象物で、屋内階段(避難経路)が1つの特定防火対象物
逆に言えば、部屋数の少ない小規模なアパートなら大家の方が自分で消防点検を実施することも可能だ。
ただし、いざと言うとき設備が正しく使えるよう、正確に点検しなければ意味が無い。大家自ら消防点検する場合は、必ず正しい手順や項目を確認してほしい。
※消火器点検項目の例
・製造年が5年を超えていないか
・本体の腐食・変形・損傷・漏れはないか
・安全栓の封がはがれ、脱落などがないか
・レバーやホースに変形や損傷がないか
・指示圧力計の値が適正か
上記は一例だが、消火器一つでも多くの点検項目がある。点検を行う前に、消防庁のホームページや管轄の消防署などで正しい情報を収集して準備しよう。
アパート消防点検の期間
アパート消防点検は2種類あり、それぞれ点検期間が定められている。
機器点検 | 6か月に1回 |
総合点検 | 1年に1回 |
機器点検では前述した消防設備が正しく設置されていること、損傷が無いことなどを確認する。主に外観をチェックし、きちんと動作するか確認する点検だ。
総合点検では実際に報知器などの設備を作動させ、総合的な機能を確認する。
上記のサイクルでそれぞれの点検を実施し、防火管理維持台帳に記載したうえで管轄の消防署長に報告する必要がある。
報告のタイミングは特定防火対象物の場合1年に1回、それ以外のアパートは3年に1回となっている。
アパート消防点検の費用相場
アパートの消防点検にかかる費用は、建物の所有者であるオーナーが負担することになる。
有資格者や専門業者に依頼する場合の費用は、アパートの規模や消防設備の種類・数によって変動することが多い。
1,000㎡以下のアパートで1日で完了する内容の消防点検なら、30,000~40,000円前後の業者が多いようだ。消火器や火災報知器の点検など内容が少ないなら、もう少し安くなる可能性が高い。しかし簡単な点検項目で済むなら、前述したように大家ご自身で実施するのも良いかもしれない。
ただし非常電源や連結送水管など設備の種類が多いと、費用が多めにかかるケースもある。
また依頼する業者の規模によっても費用は変わる。土日祝日料金、夜間料金など業者によって計算方法も違うため、数社相見積もりしてみて適正価格かチェックするのが良いだろう。
入居者が不在の時はどうすべき?
アパートの消防点検では火災報知器や避難ハシゴなども対象となるため、室内への立ち入りも必要になる。
しかし入居者が不在の場合もあるため、あらかじめスケジュールの調整や対応を決めておく必要がある。
早い段階から入居者に告知を行い、スケジュールを調整して一回で済むようにしておくべきだ。
どうしてもスケジュールが合わないケースに備えて、不在時は合鍵で入室するなどの取り決めをしておくのも効果的だ。
その場合は入居前の契約時に消防点検について説明し、同意を得たうえで書面に残しておくと良いだろう。
入居者が不在だからと点検を怠り、その部屋で火災事故が発生した場合責任を問われる可能性がある。
不在時の対応をしっかり決めておき、点検漏れのないように準備してほしい。
まとめ
アパートの消防点検は大家または管理会社に実施義務があるため、タイミングと内容をしっかり把握していただきたい。
罰則規定もあるため、点検・報告漏れのないようルーティン化するのがおすすめだ。
しかし消防点検の目的は、消防設備が正しく使える状態を維持し、万が一火災が発生した際の被害を減らすことである。
ただ義務を果たすだけでなく、入居者の方や近隣住民の方が安心して暮らせる環境づくりを心がけよう。