火災保険とセットで加入する地震保険は、アパートやマンションなど不動産物件が地震によって損壊した際使えるケースも多い。
今回は地震保険の申請方法や対象範囲といった基本情報から、ご自身で申請、代行申請それぞれのケースの注意点なども解説する。
目次
地震保険の申請方法
まずは自分で地震保険を申請する際の基本的な流れを把握しておこう。
①損害箇所を確認する
地震による損害が発生したらまずは状況を確認しよう。慌てずに損害が発生した日時を記録し、怪我をしないようにムリのない範囲で現地を確認してほしい。スマートフォンの写真でも問題ないため、損害発生後なるべく早めに撮影しておくのがおすすめだ。
また現場を片付ける前に写真を撮影しておくのも大切なポイントだ。片付けや応急処置をした後で写真を撮ると、地震によって発生した被害の範囲が分からなくなってしまう。
またこの段階では地震保険の対象範囲を深く考えず、割れた食器や床の凹みなどちょっとした損害も写真を撮っておくと良いだろう。
一方向だけでなく、建物全体・損害箇所のアップなど複数の角度から撮影しておくことをおすすめする。
②保険会社に連絡
状況確認と写真撮影ができたら、契約している保険会社に連絡する。電話連絡のほか最近はホームページからWEB申請できるケースもある。
・契約者の名前や連絡先
・保険証券番号
・損害発生日時
・損害の状況や範囲
地震保険申請には上記のような情報が必要になるため、保険証券と一緒にメモ等でまとめておくとスムーズだ。
③現地調査のスケジュール調整
保険会社が申請を受け付けると、鑑定人による現地調査スケジュール調整の連絡が入る。
契約者の現地立会いが必要になるため、確実に同席できる日時でスケジュールを調整しよう。
ただし最近はコロナ過による影響で自己申告制を導入している保険会社もあるため、申込時に確認しておくと良いだろう。
④保険会社の鑑定人が現地調査
現地調査は保険会社が指定する「損害保険登録鑑定人」によって行われる。現地で被害状況を確認したうえで損害額を判定するため、損害発生時の状況など説明できるように準備しておこう。
申請に必要な書類を鑑定人が持参し、その場で書類作成して提出できるケースもある。印鑑や保険金が振り込まれる口座の通帳などを用意しておくとスムーズに手続きを進められるだろう。
⑤調査結果と保険支払額を確認~支払い
保険会社が現地調査の内容を踏まえて保険金額を査定し、支払額の確認連絡が来る。
保険金額と判定区分に問題が無ければ承諾し、30日前後で指定した口座に保険金が振り込まれる。
損害内容の見落としや保険金額に納得がいかない場合は、再鑑定依頼をすることも可能だ。
地震保険の対象
続いて、どんな損害が地震保険の対象になるのか把握しておこう。
地震保険の対象になる損害
地震保険の対象になるのは、地震が原因で発生した建物・家財の損害だ。
対象になる損害の例
・地震の揺れで発生した建物のヒビ
・地震で倒れて壊れた家財や食器など
・地震で倒れたストーブで発生した火災の損傷
・地震で発生した津波で家が流されてしまった
・噴火に伴う噴石による建物の損傷
地震保険では、火災保険でカバーされない噴火や津波による損害も対象になる。ただし家財が対象になるかどうかは契約内容によって変わるため、保険証券を確認してほしい。
地震保険の対象にならない損害
次のような損害は、地震によるものであっても地震保険の対象にならない。
門やブロック塀など建物以外の損害
地震の発生日から10日以上経った後に発生した損害
事務所など住居以外の用途の建物の損害
1個30万円を超える貴金属や自動車の損害
地震で窓が壊れ盗難にあった
地震保険の対象は基本的に建物に限られるため、門やブロック塀などの外構部分は補償されない。
また地震発生日から10日以上経ってから発生した損害も対象にならないため、日時の記録や写真撮影が重要となる。
地震が原因で発生した盗難も地震保険ではカバーできないため、窓や玄関が壊れた場合は対策・自己防衛をしっかりしてほしい。
地震保険の申請代行は違法になる?
地震保険の申請代行自体は違法ではないが、保険会社との契約違反になり保険金が受け取れなくなる可能性が高い。
保険金申請できるのは基本的に契約者本人のみで、弁護士資格保有者のみ代行することが可能だ。弁護士以外の代行請求は「非弁活動」とみなされ、契約解除や保険金が支払われない可能性がある。
ただしあくまで本人が手続きを行うという前提で、民間の「保険申請サポート業者」も数多く存在する。
被害状況の確認や写真撮影、書類作成まではサポート業者が代行し、申請は本人が行えば違法行為にはならない。
ただし虚偽報告で保険金額を吊り上げようとする代行サポート業者の報告なども多く、最悪のケースだと詐欺罪に問われてしまう可能性もある。
また保険金が支払われる前提で修理やリフォーム工事の契約を迫る、悪徳サポート業者なども存在するようだ。
利用する際は信頼できる業者かどうかしっかり見極め、虚偽報告などを持ちかけてきたら断る意思が必要になるだろう。
地震保険申請代行の手数料相場
地震保険の申請をサポートする民間業者の手数料は、保険金額の30~40%が相場と言われている。
多くの業者は成功報酬方式を採っており、保険金が支払われた場合のみ手数料が発生する仕組みだ。
ただし交通費や調査費用などが発生する業者もあり、万が一保険金が受け取れなくても手数料を請求されてしまう。
手数料のパーセンテージだけでなく、費用発生の条件やタイミングなどをしっかり確認すべきだろう。
地震保険の申請期限は?
地震保険の請求権は損害発生の翌日から3年で消滅してしまう。ただし加入している保険会社によっては申請期限が3年より短いケースもあるため、約款を確認しておくべきだ。
3年もあるからと後回しにせず、基本的には地震による損害が発生したら早めに保険会社に連絡を取るのが良いだろう。
地震保険の金額はどう決まる?
地震保険で支払われる保険金額は、損害の程度に応じて分類される「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階で決められる。
・全損:地震保険金額の全額
・大半損:地震保険金額の60%
・小半損:地震保険金額の30%
・一部損:地震保険金額の5%
どの段階でも保険金額の上限は時価となっている。時価は同等の建物を建築、または購入するのにかかる金額から、消耗分と経年劣化分を控除して算出する金額のことだ。
また一回の地震で支払われる保険金の総額は、12兆円までと定められていて、超えた場合は減額される。ただし過去に発生した大きな地震でも限度額を超えたケースはないため、心配する必要なないだろう。
まとめ
地震保険の申請はそれほど難しくないため、基本的にはご自身で手続きするのがおすすめだ。ただし手続きが不安などの理由で申請代行を検討する場合、トラブルを回避するため信頼できる弁護士に依頼するのが良いだろう。
またどちらのケースでも、地震による損害が発生したらなるべく早めに現場を確認し、日時や写真などの情報を残すのが基本だ。
申請期限もあるため、後回しにせずなるべく早めに動くことも心がけよう。