DCF法で不動産価値を知る方法とは!基礎から計算方法まで詳細解説

DCF法で不動産価値を知る方法とは!基礎から計算方法まで詳細解説

不動産投資をする者として、物件を適正価格や割安価格で購入することは重要だ。不動産は売り主が価格を設定できるため、相場よりも高値で購入すると利回りに影響し、収益が上がりにくいケースもある。

DCF法で不動産価値を事前に確認しておくことができる。

今回はDCF法の基本から計算方法まで解説するので、ぜひ参考にしていただきたい。

 

不動産には3つの評価方法がある

不動産の価値を査定し評価する方法は大きく分けて3つある。

「収益還元法」・「原価法」・「取引事例比較法」だ。

ここでは、それぞれについて概略を解説させていただく。

・収益還元法

収益還元法は、物件の将来の収益を算出できることが特徴である。収益還元法は、直接還元法と今回解説するDCF法に分かれている。不動産を証券化する場合は、DCF 法が用いられる場合が多い。理由は、DCF法で想定されている空き家リスクや家賃の下落率などが、直接還元法では考慮されていないからだ。つまり、DCF法の方が精度は高いということである。

・原価法

原価法とは、対象物件と同じ物件を建てるのに、どれだけの費用が必要になるかという点に着目した評価方法である。再調達原価を知ることで、不動産の価値を知ることができる。

・取引事例比較法

取引事例比較法は、対象物件の近隣にある類似物件の取引価格を参考に評価する方法だ。対象物件の特徴などを考慮して算出するのが一般的である。

 

DCF法について

DCF法とは「ディスカウント・キャッシュフロー法」の略語である。収益還元法の一つであり、企業や債権の将来価値なども算定できる評価方法だ。不動産の現在価値を、正確に計算できる方法でもあるため、ここでDCF法の基本を解説させていただく。

 

DCF法とは

不動産投資におけるDCF法とは、不動産から得られる収益、売却益を考慮して、将来に得られると想定できる収益を、現在の価値に換算して算出する方法である。DCF法は、将来起こり得るリスクも考慮して算出するため、不動産投資においては重要な判断材料になる。

 

DCF法の計算式

DCF法による企業や債権などの価値計算は5年を目処にするのが一般的だ。6年目以降は違った計算方法となる。 理由は同じ条件で成長し続けると仮定した上で計算を行うからだ。

ポイント1

2年目以降も同じ計算式を用いて1年ごとの価値を計算し合計する。「^」(累乗)は年数を用いる。5年目まで計算し合算したものが、将来の価値を現在価値で表したものになる。

ポイント2

6年目以降は、ターミナルバリューをまず計算してからDCFを算出するため、ターミナルバリューの計算式を記す。

ポイント3

ポイント4

【DCF法による評価】

毎年のフリーキャッシュフローの現在価値の総合計

※フリーキャッシュフロー、割引率については次項で解説させていただく。

 

DCF法の計算例

DCF法の一般的な計算例は次のようになる。

【条件】

・1年目のフリーキャッシュフロー:10,000,000円

・フリーキャッシュフローは毎年500,000円アップする

・割引率:5%

・永久成長率:1%

・1年目DCF:10,000,000/(1+5%)^=9,523,810

・2年目DCF:10,500,000/(1+5%)^2=9,523,810

・3年目DCF:11,000,000/(1+5%)^3=9,502,214

・4年目DCF:11,500,000/(1+5%)^4=9,461,078

・5年目DCF:12,000,000/(1+5%)^5=9,402,314

5年のDCF合計:47,413,226

・6年目以降ターミナルバリュー

12,000,000×(1+1%)/(5%-1%)=303,000,000

・6年目以降のDCF

303,000,000/(1+5%)^5=237,408,428

DCF法による価値計算結果は、5年間のDCF合計と6年目以降のDCF法の結果の合計である。

DCF法による現在の価値=47,413,226円+237,408,428円=284,821,654円

なお、不動産投資におけるDCF法での計算については、企業や債権とは条件が異なるため、詳細を後に記すので確認していただきたい。

 

DCF法の計算に必要な情報・数値

DCF法で、価値を計算する際には、さまざまな数値が必要だ。ここでは、一般的に欠かせない数値について解説させていただく。

・フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローとは、経営者の判断で自由に使える資金のことである。営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足した金額を指す場合が多い。不動産投資では、家賃収入がこれに該当する。

・割引率

割引率とは、将来の価値を現在の価値に変えるために必要な数値である。利回りなどを考慮すれば、現在の通貨価値と将来の通貨価値では価値が異なることになる。そこで、将来の通貨の価値を現在の通貨価値に換算するために用いる。

しかし、割引率を正確に設定することは非常に難しいのが現状だ。将来のリスクを予想することは不可能に近いからである。しかし割引率を設定しなければ、DCF法で価値を計算することが不可能なため、おおよその数値を当てはめているのが現状だ。一般的には、4%~7%で設定する場合が多い。

不動産投資においては、同程度のリスクとリターンが見込める投資信託や株式配当などが比較対象となる。投資信託の利回り相場は、3%から10%であるが、ボリュームゾーンは4%~6%である。割引率の設定で迷えば、5%または6%を設定して算出するとよいだろう。

・永久成長率

永久成長率とは、6年目以降のDCF法による価値算出に欠かせない数値である。ターミナルバリューを算出する際には、一定の割合で成長を続けると仮定して計算を行うため、永久成長率が必要となる。永久成長率も、割引率と同様に将来を正確に予測することになるため、確実な数値を設定することは不可能に近い。そのため、永久成長率を0%~1%で設定するのが一般的である。

 

DCF法で不動産価値を算出

不動産をDCF法で算出する場合は、建物の価値のみを計算し、土地については現状価格とする場合が多い。土地の価値は、景気によって左右されるが、将来の景気を予想することは難しいからである。また、災害などによって大幅に下落するリスクもあるが、災害を予測することも難しいため、永久成長率とも一線を画するのだ。

ポイント5

不動産投資においてフリーキャッシュフローは、家賃収入のことである。空室率を勘案して、家賃収入を算出することが求められる。

 

不動産におけるDCF法の考え方

不動産におけるDCF法の考え方

DCF法により、不動産価値を算出する場合には時間価値が重要である。現在と将来との価値が同額であっても、実質的な価値は異なることになる。不動産投資により賃貸経営を行う場合は、物件を複数年にわたって所有するケースが大半であるため、1年毎の時間価値を算出し積算することで、不動産価値を求めることになる。

 

不動産価値をDCF法で具体的に算出する方法

不動産の価値をDCF法で具体的に算出するためには、年間の家賃収入と空室率、割引率、投資期間、投資金額が必要である。次に、例として1棟マンションに5年間投資した場合の資産価値をDCF法で算出する。

【例:条件】

マンションの戸数 10戸
空室率 10%
家賃収入 1ヶ月=7万円×10戸×(100-10%)=63万円

1年間=63万円×12ヶ月=756万円

割引率 5%
投資期間 5年
投資金額(物件価格) 7,000万円

【不動産投資におけるDCF法の計算式】

(家賃収入×(1-空室率))/(1+(割引率))^(類乗は年数と同じ)

・1年目DCF:7,560,000/(1+5%)^1=7,200,000

・2年目DCF:7,560,000/(1+5%)^2=6,857,143

・3年目DCF:7,560,000/(1+5%)^3=6,530,612

・4年目DCF:7,560,000/(1+5%)^4=6,219,631

・5年目DCF:7,560,000/(1+5%)^5=5,923,458

5年間のDCF合計:32,730,844円

不動産投資の場合は、投資期間終了時に物件を売却することになるため、売却金額を算出する必要がある。そのため、不動産のDCFでは永久成長率を使用しない。尚、不動産の売却金額を算出する際には5年目の割引率を適用する。

70,000,000/(1+5%)^5=54,846,832

対象不動産に5年間投資した場合のDCF法による価値は、5年間のDCFと5年後の不動産売却金額を足して算出する。

32,730,844+54,846,832=87,577,676

この例では、対象不動産に7,000万円を5年間投資した価値は87,577,676円であり、17,577,678円の収入を得たことになる。

 

DCF法の注意事項

DCF法は精密な不動産価値を算出できるが100%正解というわけではない。将来を予想した割引率や空室率を使用して算出するため、ズレが発生するのは当然のことである。

仮定の数値を使用するため、不動産会社にとって都合のいい割引率を設定することも可能である。不動産投資をする前に、不動産会社から示されたDCF法による不動産価値の中身について、よく検証することが大切だ。DCF法を理解しておけば、検証も容易に行えるのだ。

 

まとめ

DCF法を活用して不動産の価値を知ることは、不動産投資家にとって有益である。しかし、DCF法がいかなるものかを知らずに、不動産会社から提示された数字を鵜呑みにすることは避けたほうがよい。

家賃や空室率、割引率が適正であるかを確認することが大切だ。空室率や割引率は仮定の数値であるため、不動産会社が勝手に設定することも可能である。適正な数値でなければ、DCF法のメリットである将来の価値を現在の価値として知ることは難しくなる。

DCF法は少し難解かもしれないが、仕組みを理解しエクセルなどの表計算ソフトを使えば、簡単に算出できる。また、インターネットでは、DCF法の計算式がすでに入力されているエクセルシートを無料でダウンロードできる。

不動産投資は大きな取引であり、企業や個人の将来を左右する可能性も高い。単純な利回りだけ検討すると大きなリスクを抱えることになるかもしれない。DCF法を活用することで、利回りだけではつかめなかった不動産の価値を知ることができるであろう。有益な不動産投資を行うためには、できるだけ多くの情報と指数を知ることが欠かせない事は明白である。

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最終更新日 : 2020年4月20日
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