不動産投資をしていると、不動産会社から思いもよらぬ良い物件を紹介されることがある。
「すぐにでも投資したいが、留保金を使うことが躊躇われる」このような状況を経験した不動産投資家も少なくないだろう。
このケースで不動産会社からオーバーローンをすすめられたらどうすれば良いのかと悩まれるかもしれない。
オーバーローンは違法なのか?フルローンとの違いとは?等について解説する。
オーバーローンの知見を深めるのに役立ててもらえれば幸いである。
目次
不動産投資ローンのオーバーローンについて
不動産投資をしている方や検討中の方の中には、オーバーローンという融資形態を耳にすることがあるだろう。同じような融資形態にフルローンがある。
オーバーローンは、利用方法によって違法となるケースがあるため、注意が必要だ。ここではオーバーローンについて解説し、フルローンとの違いも明らかにさせていただく。
オーバーローンとは
オーバーローンとは簡単に言えば、不動産価格以上の融資を受けることである。
具体的にいえば、1億円の賃貸アパートを購入する際に、購入にかかる経費や税金などを含めて1億2,000万円の不動産投資ローンを組むことをオーバーローンという。
オーバーローンは違法だと思われる方も少なくないため、後で違法性について詳しく解説させていただく。
フルローンとオーバーローンの違い
オーバーローンと似た融資形態にフルローンがある。フルローンは不動産価格と同額を借り入れることだ。
1億円の賃貸アパートを購入する際に、1億円の不動産投資ローンを受けることをフルローンという。オーバーローンとの違いは不動産価格と同額であるいうことだ。
オーバーローンは違法?
オーバーローンそのものは違法ではない。勘違いされる方もいるようだが、不動産価格を上回る借り入れであることを正しく記載して融資を申し込み、金融機関が審査したオーバーローンは合法なのである。
ただし、不動産価格を超える融資は担保評価を超えるため、金融機関にとっては通常融資やフルローンよりもリスクが高くなる。そのため、融資の審査は非常に厳しいと認識しておくと良いだろう。
金融機関にもよるが融資の限度額を担保評価の80%程度に設定している場合も多い。フルローンさえ難しいのが実情だ。物件を所有したいが「オーバーローンを組むことができないため、金融機関を欺いてオーバーローンを組む」これが、違法行為である。オーバーローンは違法ではないが、欺く行為が違法となるのだ。
違法なオーバーローンを組む手口は書類の偽造である。不動産会社からそそのかされたり、不動産会社と共謀したりして、物件価格を水増しした偽の契約書を作成する。偽の契約書を金融機関に提出し、審査が通れば不正なオーバーローンとなる仕組みなのだ。
不動産投資での住宅ローン利用は違法
違法なオーバーローンには一般の住宅ローンを利用する手口がある。住宅ローンと不動産投資ローンでは審査の基準が違う。住宅ローンのほうが、オーバーローンが通りやすい場合があるのだ。
不動産投資物件で住宅ローンを利用するのは違法である。住宅ローンはあくまでも居住用不動産のためのローンであるため、正当に利用しなければならない。不動産会社に騙されて、投資物件なのに住宅ローンを利用してしまうケースもあるため注意が必要だ。
不動産投資でオーバーローンを利用できるケース
不動産投資でオーバーローンを利用しやすくするには、賃貸経営が軌道に乗っており経験が豊富にあることだ。このような投資家は金融機関からの信用もあり、貸し倒れなどのリスクも少ない。
そのため、金融機関がオーバーローンを打診することもある。金融機関は担保があり信用がある者に多くの資金を貸し出すことで利益を上げやすくなるからだ。
賃貸経営の初心者でオーバーローンを利用するなら、賃貸併用住宅を建てる方法もある。床面積の50%以上が居住用であれば住宅ローンを利用できるため、低金利のオーバーローンを利用できる可能性が高まるのだ。
収益をあげることは難しいが住宅ローンの支払いを家賃収入でカバーできるメリットがある。
オーバーローンのメリット
オーバーローンには、通常ローンとは違ったメリットがある。ここでは、代表的なものを3つ紹介する。
低金利での借り入れ
不動産投資でのオーバーローンは低金利で借り入れできることが大きなメリットだ。不動産投資を含めた融資で重要なのは、いかに低い金利で融資を受けられるかどうかである。
不動産投資ローンによるオーバーローンは、金融機関によって金利が異なる。主な借入先とその特徴、金利相場をまとめたので参考すると良いだろう。
【主な金融機関の特徴と金利相場】
金利相場 | 特徴 | |
メガバンク | 1%前後 | 金利は低めで返済期間も長めであるが審査基準が厳しい |
地方銀行 | 1.5%~4%程度 | 不動産投資ローンに積極的な銀行は低め傾向で、そうでない場合は高め |
信用金庫 | 2%~3%程度 | 融資を受けられる地域が限定されるが手厚いサポートがある |
※あくまで相場なので実際の融資の際には確認が必要である。
諸費用もローンに組み込める
オーバーローンなら、不動産価格以外に手数料などの不動産取得費まで、借り入れられる。不動産取得費は登録免許税や不動産取得税などの税金、仲介手数料などが主なものだが、設備費や改良費が発生する場合もある。
金利が低い不動産投資ローンでこれらの取得費を賄えれば手持ちの資金を留保金とできるため、余裕のある不動産投資ができるのだ。取得費をビジネスローンなどで借り入れれば金利が高くなり、二重返済となるので資金繰りにも影響するかもしれない。
資金がなくても不動産が購入できる
オーバーローンを利用できたら資金がなくても不動産を購入できるメリットがある。賃貸経営をしていて好条件の物件が市場に出たり、紹介されたりするケースは少なくない。しかし、資金が不足していれば投資できない場合もある。
そのようなケースでも、オーバーローンを利用できれば、取得したい不動産を購入できるのだ。好条件の投資物件を得ることは賃貸経営のプラス要因となるため、オーバーローンの利用は大きなメリットとなるだろう。
不動産投資でのオーバーローンがバレる理由
オーバーローンを利用すれば多くのメリットを受けることができるが、違法なオーバーローンはいつかバレるものである。ここでは不動産投資でのオーバーローンがバレる理由について解説させていただく。
売買契約書と担保評価の差額
違法なオーバーローンが金融機関などにバレる理由は、不動産の売買契約書と金融機関が独自に行う担保調査の差額である。違法なオーバーローンでは、対象不動産の価格を水増ししているため、担保評価と大きく異なるのだ。その差額が大きければ大きいほどオーバーローンがバレやすいことになる。
金融検査
金融庁が行う金融検査も違法なオーバーローンがバレる理由である。金融検査とは金融庁の検査官が金融機関に立ち入り、業務や資産内容などを検査するのだ。検査項目には融資も含まれているため、適正な融資が行われているかも検査される。その検査よって違法なオーバーローンがバレる可能性があるのだ。
不動産会社への捜査
オーバーローンのための書類偽造は犯罪行為である。捜査機関の捜査や内部告発、密告などによって、不動産会社が捜査されてオーバーローンがバレる場合もあり得るのだ。
不動産投資でオーバーローンがバレた場合
違法なオーバーローンがバレた場合はどのようなことになるのかを知らなければ、不動産会社に巻き込まれて違法なオーバーローンを組んでしまう場合もある。ここではオーバーローンがバレた場合のペナルティについて解説する。
ローン返済
違法なオーバーローンは金融機関を欺くことになる。違反契約となるのだ。違反契約が発覚した場合は、一括全額返済を求められるのが一般的だ。
資金があれば一括返済できるが、ないのなら取得した不動産を売却することになる。オーバーローンは不動産価格よりも多く借り入れしているため、不動産を売却しても完済できないだろう。そうなれば借金や自己破産へと進むことになる。
金融機関からの信頼がなくなる
違法なオーバーローンにより金融機関を欺いたのであるから、金融機関からの信頼は失われる。たとえ不動産会社に騙されたとしても脇が甘い賃貸経営者との烙印押されることになるかもしれない。
このオーバーローン以降の相談には応えてくれず、融資は非常に難しくなるのだろう。
金融機関が訴訟を起こす場合も
融資書類の偽造は詐欺罪や文書偽造罪に該当する。悪質なケースなら金融機関に訴えられてもおかしくないのだ。
不動産会社に任せていて知らなかった場合でも、犯罪に加担したことは間違いないのである。違法なオーバーローンにより罪に問われないように、正当な融資や適正な自己資金管理、賃貸経営管理を心がけると良いだろう。
オーバーローンを不動産会社に勧められても
オーバーローンは違法ではないが、金融機関を欺いた場合は違法である。違法なオーバーローンは発覚しやすく、大きなペナルティを受けることなるため不動産会社に勧められても決然と断るべきだ。
正当なオーバーローンはメリットも多いため、上手に生かすことができれば賃貸経営を軌道に乗せる手段にもなる。正当な賃貸経営を心掛け、金融機関からの信頼が厚ければオーバーローンを組むことも難しくはないのだ。