隣地使用権を拒否されたときどうすべきか?仮処分・費用も解説

隣地使用権を拒否されたときどうすべきか?仮処分・費用も解説

アパートやマンションを経営していると、建物やフェンスなどの修繕で隣の敷地を使わせてもらうシーンがよく出てくる。このような状況を想定して、民法では「隣地使用権」を規定している。

しかし隣人との関係性が悪く拒否されてしまうと、工事を進めることができない。

この記事では隣地使用権の詳しい内容を解説し、承諾を得られない時の対処法も合わせて紹介する。

 

隣地使用権とは

隣地使用権は、建物の建築や修繕に必要な範囲内で隣地の使用を請求できる権利のことだ。隣地立入権と呼ばれることもある。

具体的には、民法209条(改正前)に次のように規定されている。

第二百九条 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。

2 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

隣地を「使用できる権利」ではなくあくまで「請求できる権利」である点に注意してほしい。

仮に建物の修繕などに必要は範囲であっても、隣人の承諾を得ず勝手に立ち入ると不法侵入になってしまう。

また隣地使用が認められるのはやむを得ない場合のみであり、「隣の土地に入った方が作業しやすい」といった理由では使えない。

万が一承諾を得られなかった場合の流れについては、2章で詳しく説明する。

 

民法改正による変更

2021年の民法改正では隣地使用権も内容が変更された(施行は2023年(令和5年)4月1日)。

改正後の規定は以下のとおり。

第二百九条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。

一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

二 境界標の調査又は境界に関する測量

三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り

2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

具体的には修繕などに必要な範囲で「隣地の使用を請求することができる」という部分が、「隣地を使用できる」という文言に変わっている。

これは相続で土地の所有者が分からなくなるなど、承諾を得ることができないケースへの対応という見方が強い。

ただし事前通知は必要になるため、勝手に隣地へ立ち入って良いわけではない点には注意が必要だ。

また、隣地を使用できる類型が増えている。

新しい民法の施行時期は2023年4月1日からなので、隣地使用権のルールが変わるということと内容を頭に入れておいてほしい。

 

不動産経営で起こり得る隣地使用シーン

アパートやマンションの経営では、隣地使用が必要になるシーンも多い。

例えば敷地と建物の距離が近い市街地の物件では、外壁塗装の足場が敷地内に建てられないケースが考えられる。

また境界フェンスやブロックの交換・修繕も、隣地に入らなければできない作業だ。

境界の調査や測量も隣地使用権の対象として民法に明記されている。昔からの土地で境界があやふやな場合、隣と境界の位置で揉めている場合は、立ち入りの上測量が必要になるだろう。

庭木の枝が隣に越境してしまった場合も、敷地内からだと剪定や落ちた枝の掃除が難しい。

このように不動産物件では隣地使用が必要になるケースが少なくないため、普段から隣人との関係を良好に保っておくことをおすすめする。

ポイント1

 

隣地使用権を拒否されたらどうすべき?

隣人との関係性が悪く、隣地使用権を拒否されてしまうケースも少なくない。

そのような状況も想定して対策を覚えておこう。

 

まずは話し合い解決を図る

いったん隣地使用を拒否されてしまった場合でも、話を聞いてもらえる関係性ならまずは話し合い解決を図るべきだろう。

次の段階は訴訟になり時間と労力がかなりかかるため、スピーディーに修繕などを進めるためには話し合い解決が理想的だ。訴訟された隣人も良い気はしないため、今後ますます関係性が悪くなる可能性もある。

まずは隣人に迷惑が掛からないような工程と養生作業を計画し、作業で立ち入る範囲や日時などの情報を分かりやすく相手に伝えてみてほしい。

単に「工事で入らせてください」と言うよりは正確な内容と誠意が伝わるため、承諾を得やすくなるかもしれない。

 

隣地使用の承諾を求める訴訟を提起

話し合いで隣人の承諾を得られない場合は、民事訴訟を提起して「(隣人の)承諾に代わる判決」を求めることになる。

物件を管轄する裁判所に申し立てをして所定の手続きと手順を踏むため、判決が出るまでには時間がかかる。

判決を取得すれば、隣人の承諾があるものとして、隣地に立ち入り工事を進めることができる。

ただしあくまで工事に必要な範囲内の使用に限られ、自由に隣地を使って良いわけではない。また判決を取得しても、基本的に建物内への立ち入りはできない点も注意が必要だ。

ポイント2

 

隣地使用権の仮処分とは?

前述したように裁判による判決が出るまでには時間がかかるため、緊急性が高い場合は仮処分命令を求める方法が用意されている。

例えば外壁から雨漏れしていて、早急に足場を組んで補修しないと建物の被害が広がるケースは緊急性が高い工事だ。

ただしあくまで仮処分であるため、最終的には確定判決が必要になる。

いざというときのため、一つの手段として頭に入れておくと良いだろう。

 

隣地使用にかかる費用とは?

隣地使用権の行使で発生する可能性がある費用は、隣人に損害を与えた場合の償金、裁判費用の二種類だ。

償金は、隣地に立ち入ることで何らかの被害が発生した場合、隣人から請求される可能性がある。例えば養生不足や作業ミスで隣地の建物にキズをつけてしまったら、補修費用を請求されるということだ。

隣地使用する場合は、工事費とは別に予算マージンを設けておいた方が良いだろう。

また裁判に当たっては弁護士費用が必要になる。相談する弁護士や状況によって費用は変わるが、やはり負担は大きいので前述したようにできれば話し合いでの解決を目指したい。

 

まとめ

不動産物件の建築やメンテナンスでは隣地使用シーンが少なくないため、オーナーとして権利の内容はしっかり把握しておこう。

しかしできれば普段から隣人と良い関係性を築いておいて、一声かければ土地を使わせてもらえる状況が理想的だ。

外壁塗装やフェンス交換などメンテナンス時期が近くなったら、早めに隣人に相談しておくことも大切である。

隣地使用権を主張するのはあくまで最後の手段であり、なるべく話し合いで工事を進めることを考えてほしい。

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最終更新日 : 2020年4月20日
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