火災保険が火事の被害を補償するだけだと思われているなら非常に損をしている可能性がある。
火災保険は火事だけでなく様々な建物の修理費や、条件によっては家賃の損失まで補償してくれる、物件を計画的に運営していく上で無くてはならないサポーターになっているからだ。
そこで今回は火災保険の非常に幅広い補償範囲を具体的にご紹介しながら、投資物件にこそ火災保険をお勧めしたい理由をお伝えする。
目次
火災保険はリスク防止と経費削減の効果あり
火災保険は投資物件の焼失リスクを防ぐだけでなく、様々な損傷による被害の修理費や補償費も削減してくれる。
現代の火災保険は火事だけでなく水濡れ、自然災害、盗難など、様々な建物被害を補償する総合保険になっているからだ。
また特約を付けることによって建物の不具合による入居者への損害賠償や、修理期間の家賃補償までも対象にしており、物件運営における様々なリスクをカバーしてくれる。
特に1棟所有のオーナーの方は負う責任規模が大きいため、突然多額の修繕費用や賠償額が発生する恐れがあり、計画的な運営を狂わせてしまう。
そこで今回ご紹介する火災保険の幅広いメリットを改めて確認して頂き、物件のリスク回避と経費削減に役立てて頂きたいと思う。
火災保険加入で得られるメリット
それでは火災保険加入によって得られるメリットを具体的にご紹介しよう。
先程お伝えしたように現代の火災保険は火事だけでなく、非常に幅広い補償範囲を持ち、様々な被害の建物修理を補償するものになっている。
既に加入されている方はもちろんこれから加入される方も、支払う保険料を無駄にしないために、利用できる項目がないか確認してみてほしい。
※ここでご紹介する補償項目や条件は一般的な見解を紹介しており、適用には保険会社ごとの詳細な条件によることをご了解いただきたい。
火災・破裂・爆発による資産の消失を防ぐ
火災保険の最大の目的は、当然ながら火災やガス爆発による物件の焼失や損害の補償だ。
万一火事などによって物件が無くなってしまえば、資産が損失し家賃収入が途絶えることになるので、その役割は非常に大きいものだ。
特に賃貸物件は寝タバコをする人やストーブを使う人など、様々な人が多数入居するため火災のリスクは高いと言って良いだろう。
物件購入で融資を組む際に、ほとんどの銀行が火災保険を付けることを条件にしているのは、それだけ火災の可能性が高いことを表している。
火災保険に加入することで万一の際には物件の再購入や修理の費用を賄うことが可能で、しかも程なく家賃収入を回復できるのだ。
落雷による建物設備の補償
落雷による建物の被害補償は火災以外でよく利用される保険項目の代表格だ。
落雷での火災被害の補償はもちろんだが、投資物件として注目したいのが設備も対象となる点だ。
建物に雷が落ちると電気配線を伝ってエアコンやボイラー(給湯器)なども壊れてしまうが、こちらも補償される。
特にマンションやアパートでは設備数が多く被害は莫大な額になるが、これも火災保険によって修理費や同等品との交換費用が補償される。
自然災害による被害の回復
近年非常に増えている台風や大雪といった自然災害の被害も、ほとんどの火災保険で補償対象となっている。
例えば台風で屋根が破損した被害はもちろん、硬い物が飛んできてガラスが割れたり外壁が傷ついたり、屋根が破損して発生した雨漏りで内装にシミができたりした場合の修理費もカバーされる。
また大雪で屋上の防水が傷んだりサイクルポートが倒れたりした被害も対象となり、自然災害は現代ではどこでも起き得るため、恩恵を受けられる物件は多いはずだ。
他にも豪雨や竜巻などの発生は年々増えており、全てのオーナーの方に知って頂きたい補償となっている。
異常気象による水災被害を補償
異常気象によって最近被害の増えている水災も火災保険の対象となっている。
マンションの1室所有で2階以上ならまだ良いが、1階や1棟所有、あるいは戸建て物件であればその補償は大きなメリットとなるだろう。
対象範囲は汚れた床や内装の張替えはもちろん臭いの除去、あるいは廃棄物の処分費をカバーするものまである。
さらに水を被れば外部にある給湯器やエアコンの室外機、エントランスにある自動ドアやエレベーターなど高額な設備も故障する危険性はあるから、補償が受けられる恩恵は絶大だ。
以前はハザードマップ上で危険なエリアでなければ大丈夫という考え方もできたが、現在は想定外のところでも水害が発生しているため、場所を問わず必須の補償項目と言えるだろう。
水濡れによる被害を修理
物件の種類の中でも特にマンションで保険適用が多いのが水濡れだ。
水濡れとは所有する物件の排水管の破損や老朽化により水が漏れ、建物の内装や設備類に被害を与えた際の損傷を意味する。得に築古物件に多いケースだが、水漏れによる被害箇所は当然ながら補償の対象とはなるが、排水管そのものの修理は対象外となるので注意をして頂きたい。
雨漏りによる内容の損傷はどうなのか?という点がよく問われるがこちらに関しては雨漏りの原因が経年劣化でなければ対象となる。例えば台風で屋根が破損してそこから水が侵入して内装に被害があったケースが該当する。
またもう一つのパターンとしては住んでいる賃借人の不注意(水の出しっぱなし等)により階下の部屋に水が漏れ、水濡れが発生することも多くある。こちらに関しては物件オーナーの火災保険でも対応可能であるが、賃借人が契約している賃貸用の火災保険でも対応が可能だ。
(借家人賠償責任保険)オーナー側としては代理店や保険会社への心証もあるため、できる限り賃借人側の火災保険で対応してもらいたいところなので、管理会社に上手く交渉してもらうのが良いだろう。
盗難による破壊も対象
空き巣などによって建物が壊された場合も火災保険で修理費が補償される。
割られた窓ガラスや壊された鍵はもちろん、壁や床が傷つけられたり汚されたりした被害もその範囲となる。
さらに家財にも火災保険を付けてあれば、家具家電付きの物件でそれらが盗まれた場合にも補償対象となる。
被害に遭った場合はすぐに警察に連絡して対処をしてもらい、その後に保険会社に連絡をすることになるが、その際に被害届けや盗難届の受理番号が必要になるので必ず手元に準備しておこう。
不測かつ突発的な事故も補償
少し耳慣れない言葉だが、不測かつ突発的な事故による汚損・破損も補償対象となり、保険会社によっては火災保険の申請で最も多い項目になっている。
この補償に関しては以外と認知していないオーナーの方もいるのだが、賃貸経営においては非常に有効活用できるため、是非理解して頂きたい。
そのためには補償とならないケースを知ることで理解が早まるので下記に記載する。
▼不足且つ突発的な事故に該当しないケース
・経年劣化や通常使用が原因で発生する損傷
・故意による損傷(重過失)
上記以外については補償の対象となると理解しよう。例えば賃借人が模様替えで机を移動した時に角が壁に当たって穴が空いてしまったケースは故意では無いので補償の対象となる。
また通常の生活で発生するフローリングの無数の傷などは対象外だ。
ペットによる傷は補償されるのか?という点がよく問われるがこちらに関しては補償の対象とならない。
ペットを飼う時点で室内に傷をつけることが明確なのでそれ自体が重過失という判断になるからである。
特約付加で火災保険の価値は高まる
火災保険には共同住宅のオーナーの方向けの特約が用意されている。ほとんどの大手損保に共通している特約だがそのメリットは非常に高く、加入の際はぜひ検討することをお勧めする。
入居者からの損害賠償請求を補償
建物の整備や管理不足、あるいは構造上の欠陥によって、入居者や近隣の建物、通行人に及ぼした被害を補償するのが、施設賠償責任保険特約(賃貸建物所有者賠償特約とも呼ばれる)だ。
例えば廊下や階段の手摺が折れて入居者が落下した際の怪我、建物の不備が原因で発生した火災の人的、物的被害、外壁が老朽化で落下し通行人や車両に与えた被害などだ。
また給排水管などからの漏水なども補償対象とする保険などもあり、いずれも規模が大きい損害を補償してくれる頼りになる特約だ。
確率は多くはないがどの物件でも起き得る被害であり、特に築年数が経過した共同住宅では決して他人事ではないため、ぜひ付けておきたい特約だ。
家賃補償の特約もあり
火災や水災などの保険対象となる被害を受け、その修理や回復を行う期間の家賃収入を補償する特約も用意されている。
特に借入比率が高い方にとって、家賃収入が途絶えることは死活問題だろうから、特にこの特約の価値は高いと言える。
細かな条件の違いはあるが、ほとんどの保険会社で用意されているので、ぜひ確認するべき特約だろう。
高齢化で必須の入居者死亡対応
入居者が部屋の中で死亡し、親類など引取手がいない場合に、部屋の清掃や脱臭、遺品処分、火葬などの費用を補償するのが家主費用特約で、部屋の状態によっては壁紙や床を新しくするリフォーム費用まで対象とするものもある。
また死亡が発生したことで退去者が出たり、家賃の値引きをしたりした損失を補償する保険もあり、形には現れない部分まで補填してくれる。
病死や自殺、犯罪による殺害など幅広く対応し、特に社会の高齢化と共に問題化している孤独死は、決して特別な事ではなく日常化する恐れもあり、これからの時代は必須の特約と言えそうだ。
隣家の火事被害も自分で直すことになる
日本の民法には失火法(失火責任法)というものがあり、重大な過失がなければ火元の人は損害賠償の責任を負わないというものだ。
つまり隣の家から火災が発生して所有物件が被害を受けても、その原因に重大な過失がなければ自分の加入している火災保険で建物を直さなければいけないのだ。
このため所有されている建物がIHクッキングヒーターでガスを使っていないとか、禁煙物件だからと言った理由で火災被害のリスクが低いと安心していては危険だ。
隣家からの出火をこちら側で防ぐことは不可能だし、もし物件が耐火構造であっても延焼を遅くするだけで被害をゼロにはできない。
もらい火の被害は自分で直すということと、唯一の対策は火災保険の加入のみであると認識しておこう。
火災保険の補償外はメンテナンスで回避
火災保険の補償範囲が広いことはご理解頂けたと思うが、一つだけ注意して欲しいのが建物の劣化や不具合放置による被害は補償されないという点だ。
例えば屋根防水が年数経過で傷んで雨漏りが発生したならその被害は補償されないし、火災が起きた時に消火器が故障していたため被害が拡大したなら、その責任の範囲で補償を断られる。
また家財保険のように一旦は保険会社が入居者に保険金を支払っても、調査をして建物の不備に原因あったとわかれば保険会社に「求償権」が発生し、手数料を載せて請求をしてくるだろう。
いずれにしても建物を安全な状態に維持する責任を怠っていれば、火災保険は無駄になってしまう。
メリットの多い火災保険を活かすためには、普段からの建物の点検とメンテナンスが前提であることを忘れないようにしよう。
入居者にも火災保険に入ってもらう理由
入居者に家財の火災保険加入を義務付けている物件は非常に多くなっている。
これは入居者の方のためという意義ももちろんあるが、オーナーの方の予想外の修繕費負担を抑える効果もある。
ここで主な入居者へ加入して頂きたい火災保険をお伝えする。
家財の被害を未然に防いでもらう
例えば隣の部屋から火災があっても入居者の家財被害は、前述の失火法があるのでその隣人の火災保険では補償はされない。
このための入居者自身に家財保険に加入してもうことで、火災はもちろん上階からの水濡れ被害などが補償されることになる。
やはり被害が出ても補償されないとなれば心象が悪くなり退去されることもあるだろうから、そのような事態を防ぐ効果も期待できるだろう。
入居者同士のトラブル防止
個人賠償責任保険は自分や家族が不注意で他人の物を壊してしまった損害などを補償するものだ。
例えばお風呂の水を溢れさせて下の階に被害を出したり、子どもが他の人の車を傷つけたりした場合だ。
もしこれらの賠償費用が自費で支払えないとなれば、加害者と被害者間の大きなトラブルになり、双方とも退出の恐れがあるから、オーナーとしてもこの保険のメリットはあると言える。
ただこの保険は借りているもの、つまり賃借している部屋の賠償には使えないので注意をしよう。
壊された建物を確実に直してもらう
家財の火災保険に付ける特約で、オーナーの方にぜひ把握をして頂きたいのが借家人賠償責任担保特約だ。
これは火事や爆発などで建物に被害を出し、法律的に負うことになった賠償責任を補償するもので、入居者の支払い能力によって賠償不可能となることを防ぎ、オーナーの方の甚大な損失をカバーしてくれるものになる。
また前述の不測かつ突発的な事故による被害を補償するものもあり、幅広く建物被害を補償してくれる。
ただし保険によって対象が部屋の契約者に限定され、原因がご家族の方にあった場合は含まれないものもあるので、条件をしっかりと確認しよう。
まとめ
火災保険には火事による建物の焼失を補償するのはもちろん、様々な被害の修理費を賄ってくれる大きなメリットがある。
加入することはもちろんだが積極的に利用することで、突発的な出費を抑え計画的な物件運営に大きく役立ってくれることだろう。
さらには家賃損失や万一の損害賠償請求などのリスクも補償してくれる特約もあるので、しっかり理解した上で付加をすれば、より安定的な財産の維持が可能になる。
入居者に加入してもらう保険も含めその内容を把握した上で、リスク回避のために適切な保険に加入するようにしよう。