不動産投資物件の外壁塗装の流れ|契約から工事までの注意ポイント

不動産投資物件の外壁塗装の流れ|契約から工事までの注意ポイント

マンションやアパートなどの不動産投資物件のメンテナンスにおいて、外壁塗装は欠かせないものだ。比較的工期が長く、工事中に入居者や近隣住民へ影響もあるため、全体の流れを把握することが大切だ。

そこで今回は、外壁塗装の業者選定から契約、着工から完了まで一連の流れを解説する。それぞれの工程で注意すべきポイントも解説するので、初めての外壁塗装の準備に役立ててほしい。

 

不動産投資物件の外壁塗装をすべき理由

マンションやアパートも、一般住宅と同じように外壁塗装メンテナンスが必要となる。費用と手間をかけてでも外壁塗装をすべき理由を、3つのポイントに分けて解説する。

 

物件の耐久性を伸ばす

外壁塗装をする一番の目的は、建物を雨風や紫外線から守り耐久性能を伸ばすことだ。

外壁の塗膜が劣化すると、細かいヒビ割れが発生して水分が染み込んでしまう。コンクリート下地の膨張や木部の腐食など見えない部分から劣化が進み、耐久性能が短くなってしまう。

結果的に修繕費が増えたり、入居率が減りトータル収益が少なくなってしまうので、適切なタイミングで外壁塗装をして守ろう。

 

入居者を集めやすくする

外壁塗装でアパートやマンションの外観をきれいに保ち、入居者の心象を良くすることも目的の一つだ。間取りや家賃などの条件が同じなら、外観がきれいな部屋に住みたいものだ。逆に、外壁がボロボロの部屋は、雨漏りや虫の侵入などトラブルを連想させる。せっかく内見に来てくれた入居者を逃がしかねない。

外観は入居率に影響することも頭に入れて、見た目が悪くなる前に塗装するようにしよう。

 

雨漏りトラブルを防ぐ

外壁の塗膜が劣化して防水機能が低下すると、雨漏りトラブルが発生することがある。雨漏りは電気設備のショートから火災につながるリスクもあり、緊急性の高いトラブルの一つだ。入居者の部屋に直接雨が漏れれば、大切な家財を濡らしてしまうかもしれない。

退去にもつながりかねない大きなトラブルだから、外壁塗装で雨漏りを防ごう。

 

外壁塗装工事契約までの流れ

外壁塗装を依頼する業者の選定から、見積もりを比較して契約するまでの流れを解説する。それぞれの工程で注意すべきポイントも合わせて説明するので、見積もりを依頼する際に実践してみてほしい。

 

業者選定・見積もり依頼

外壁塗装工事を請け負う業者は一つの地域にたくさんあるため、まずはめぼしい業者を見つけて見積もり依頼するのがはじめの一歩だ。

マンションやアパートの管理を委託している不動産会社から業者を紹介される場合もあるが、基本的に相見積もりをするのが良いだろう。良心的な業者なら問題ないが、つながりがあるとクレームや要望を伝えにくくなるケースが多い。また管理会社経由の場合は、管理会社のマージンが上乗せされることもあり、要注意である。

賃貸物件の外壁塗装ができる会社は複数あるが依頼すべきなの塗装専門店が良いだろう。通常のリフォーム会社でも可能であるが塗装会社に業務を丸投げするケースが多いので余分なマージンを支払ってしまうことになるからだ。

よって、その下請け先である塗装専門会社に依頼する方がよりコストパフォーマンスは良いだろう。また小ぶりなアパートであれば直接職人に依頼することも可能で更にコストは安くなる。

 

現場調査・診断

いくつかの業者に目星をつけたら、現地調査をしてもらう。

見積もりまで無料対応の業者が多いが、出張費がかかるケースもあるため事前に費用をチェックしてほしい。

できれば立ち会って知識や対応をチェックするのがおすすめだ。気になることはどんどん質問すれば、すぐに答えられる知識と経験があるかの判断材料になる。

「持ち帰って調べてきます」などすぐに応えてくれない担当者は、トラブル発生時の対応などに不安が残る。直接工事に関わらない営業担当だとしても、なるべくベテランの方が安心だ。

 

見積もり提出・検討

現場調査後は、各業者からの見積もり提出を待ち、出そろったら比較検討して契約する業者を選ぶ。現場調査から見積もり作成までのスピードも、業者比較の要チェックポイントだ。他の業者とくらべて見積もりが遅すぎるところは、工事中の素早い対応も期待できない。

見積もりは郵送で済ませるのでなく、できれば時間をつくって内容の説明も聞こう。使用する塗料や工法、塗装回数などを確認しなければ正しい見積もり比較はできない。なるべく担当者と対面し、気になるところは質問して疑問を解決しよう。

ポイント1

 

外壁塗装工事中の流れ

工事日程が決まり実際に着工してから、工事完了までの一連の流れを説明する。オーナーとして注意すべきポイントも併せて解説する。見積もりの説明を聞くときも役に立つので、一通り頭に入れておこう。

 

近隣挨拶

着工日が決まったら、不動産物件の周囲の住宅に塗装業者が挨拶回りをする。特に車両や音で迷惑がかかる足場の設置日と、水しぶきが飛ぶ高圧洗浄の日程はしっかり伝える必要がある。建物の階数が高いと広い範囲に影響を及ぼすため、念入りに挨拶してもらうよう業者に頼もう。

事前挨拶がしっかりできていないと、塗料や水しぶきが洗濯物に飛ぶなどのトラブルが発生しやすくなる。近くに駐車場がある場合は、管理会社に問い合わせて利用者に注意喚起してもらうことも大切だ

建物から離れた住宅でも、車を止めたり休憩時に出入りしたりする可能性があるなら挨拶しておいた方が良いだろう。塗装業者とどの家に挨拶に行くのかしっかり打ち合わせするのが大切だ。業者任せにせず、自分でも挨拶に行くとトラブル発生を抑えやすくなる。

 

足場設置・高圧洗浄

着工日はまず足場の設置から作業が始まる。金属製の足場をハンマーで叩きながら組んでいくため、結構大きな音が出る作業だ。高所作業による物や人の落下事故、狭い場所を通過したときの器物破損も発生しやすいため、万が一に備えすぐ動けるようにしておくとよいだろう。建物の規模にもよるが、足場の設置は1~2日前後が目安だ。

 

足場設置後は高圧洗浄で外壁の汚れやホコリを洗い流す。この工程でしっかり外壁がきれいになっていないと、新しい塗膜が剥がれやすくなってしまう。洗浄はおよそ半日~1日前後で、大きな建物でなければ足場と合わせて1日で終わることも多い。

 

乾燥

高圧洗浄後は外壁の乾燥期間が必要になる。しっかり乾燥させないと、塗装後に水分が蒸発して水膨れのように浮いてくることがある。工事工程表に乾燥期間がしっかり設けられているか確認してほしい。

 

養生

窓ガラスや給湯器、電気のメーターボックスなど、塗装しない箇所をビニールシートで保護する作業だ。養生がしっかりできていないと余計な場所に塗料がついてしまい、見栄えが悪くなる。入居者の出入りや生活を妨げず、しっかり不要な場所が守られているかチェックしてほしい。エントランスのタイルなど地面は特に塗料が垂れやすいため、しっかり養生してもらってほしい。

 

下地処理

塗装前の外壁の状態を整え、新しい塗膜をしっかり密着させるための下準備だ。細かいヒビを埋めたり、すでに剥がれかかっている塗膜を一度剥がしたりといった細かい作業が中心だ。しっかり下地処理をしないと、新しい塗膜にすぐヒビが出たり剥がれたりすることがある。

見積もりでは後述する下塗りと併せて表記するケースなどもあるが、下地処理の内容について説明があるかチェックしよう。

 

外壁塗装(下塗り・中塗り・上塗り)

塗料や外壁の状況にもよるが、基本的に外壁塗装は下塗り・中塗り・上塗りの3回重ね塗り工程となる。業者によっては塗装回数を追加して4回塗りプランを提案してくるケースもあるため、見積もり比較時にしっかり確認しよう。

下塗りは「シーラー」と呼ばれる専用の材料で、白っぽい見た目をしていることが多い。中塗りと上塗りは仕上げ材の選んだカラーをそれぞれ2回ずつ塗装する。

塗装回数をごまかして手抜きするような悪徳業者は少ないが、各工程の作業写真を提出してくれる業者だと安心感が高い。中には使用した塗料の量を報告してくれる、丁寧な業者もいるようだ。

 

屋根塗装(下塗り・中塗り上塗り)

外壁と同時に屋根塗装をする場合も、基本的に下塗り・中塗り・上塗りの3回塗装となる。

ポイント2

 

養生撤去・ダメ直し

塗装作業終了後は養生を撤去し、仕上がりの状態を現場監督がチェックする。業者によってチェックする人は異なるが、仕上がりチェック専門のスタッフがいると見逃しを防ぎやすい。養生をはがす際に塗膜が乱れることもあるため、チェックして問題のあった場所は「ダメ直し」という作業でやり直す。

足場を解体する前に、なるべく自分でも建物を一周して問題無いかチェックしよう。

 

足場解体

作業終了後は足場を解体して撤収する。組み立ての日と同じように音がでるため、居住者や近隣住民にしっかり日程が伝わっているかチェックしよう。

 

点検・清掃

足場撤去後は現場の清掃が行われて、現場監督立ち合いで最終点検を実施する。外壁の仕上がりはもちろん、ゴミが落ちていないか、キズが付いていないかといった点もしっかりチェックしよう。

 

工事完了後

外壁塗装は工事が完了したら終わりではなく、問題がないか長期にわたって保守点検する必要がある。引き渡しの際に注意すべきことや、工事内容の保証についても流れを見ておこう。

 

引き渡し・完了挨拶

工事の仕上がりに問題がなければ、担当者立ち合いのもと引き渡しして完了となる。あらかじめ工事完了の日程を確認し、入居者に掲示板や投書などでその旨が伝わるようにしておこう。

工事車両の出入りや洗濯物などで近隣の方に協力してもらった場合は、工事完了の報告とお礼を一言直接伝えてほしい。外壁塗装は10~15年を目安に定期的に実施する必要があるため、コミュニケーションをとっておくことで次回のスムーズな工事に繋がる。

 

保証書発行

外壁・屋根塗装については、工事保証をつけている業者が多い。保証期間中に剥がれなどの重大な欠陥があった場合、無償でやり直してくれる制度だ。工事品質に自信を持っている業者は保証をつけていることがほとんどなので、安くても保証体制がない業者は避けた方が良いだろう。

口約束だと曖昧になってしまうため、保証書を発行してもらえるかどうかも重要チェックポイントだ。見積もり時に保証書の話が出なければ、こちらから質問して確認してほしい。

 

定期点検

工事完了後は、あらかじめ決めた年数で定期点検を実施する業者が多い。保証体制が整っていても、トラブルを見逃しては意味がない。こちらも保証の話と併せて一緒にしっかり確認しよう。

業者任せにするのではなく、オーナーとしても定期的に外回りを確認するのがおすすめだ特に台風や大雨の後は、なるべく現地に足を運んで目視点検してみてほしい。

 

不動産投資物件の塗装工事注意ポイント

塗装工事の業者や工事内容を検討するときの、注意すべきポイントを解説する。

 

色選び

賃貸運用するマンションやアパートの外観は、なるべく好き嫌いの少ない無難なカラーを選ぶのがおすすめだ。派手なカラーや奇抜なカラーだと人を選ぶため、入居者が集まりにくくなってしまうかもしれない。暗い印象があるダーク系のカラーもなるべく避け、ベージュなどの暖色系カラーを選ぼう。真っ白や明るいカラーだと汚れが目立ちやすくなるため、少し色味のある中間色が無難だ。

 

ただし、デザイナーズ賃貸のように意匠性を売りにしている物件は、コンセプトに合わせて選んだ方が良い。自分の好みを優先するのではなく、内装や全体の雰囲気に調和するカラーを選ぼう。

 

工事期間

同じ物件の塗装工事でも、担当する業者の作業人数や工程によって工事期間は異なる。工事中は建物全体が足場やネットに覆われるため、日当たりが悪くなる。高圧洗浄や塗装範囲に入ると、洗濯物を干せない日もあるなど、入居者の不便は避けらない。塗装業者選びでは工事にかかる日数もチェックして、なるべく短期間で終わるところを選ぼう。

 

契約後はなるべく早めに工事期間を決めて、スケジュール表を作成して入居者に通知する。素早く対応してくれる業者ほど早めに通知できるため、工事中のトラブルも少ない傾向がある。業者の対応スピードは大変重要な要素ですから、見積もり比較の際にしっかりチェックしてほしい。

 

近隣配慮

工事中は入居者だけでなく、近隣住民への配慮も注意すべきポイントだ。工事車両を邪魔にならないように停めたり、音や水が出る日は前もって声をかけたりすることがトラブル防止につながる。着工前の近隣挨拶はもちろん、休憩時間の態度やタバコの処理など、細かい部分まで配慮してくれる会社を選ぼう。

見分けるのは難しいが、見積もりに来た担当者の態度も一つの目安になる。また過去に近隣からのクレームがなかったかなど、いろいろ質問してみてほしい。

 

車両の養生

周辺の駐車場に停まっている車やバイクの養生は、工事中に注意すべきポイントの一つだ。万が一塗料が飛んでしまうと、車の持ち主とのトラブルになる可能性が高い。補修費用は施工店が負担することが多いが、入居者とトラブルになって解約されてしまう可能性もある。

塗料が付着するおそれのある車両は、専用の養生カバーで保護する。勝手にカバーをかけるのもトラブルの原因になるため、必ず持ち主の許可を取ることが大切だ。見積もり比較するときは、工事中の車両養生の取り組みもチェックしよう。

 

まとめ

マンションやアパートの外壁塗装工事では、入居者や近隣住民の方に迷惑をかけないようにすることが大切だ。

ポイント3

相見積もりの際は価格だけ見るのではなく、業者の工事品質や現場配慮までチェックしてみてほしい。今回の記事を参考に適切な外壁塗装工事を実施していただき、資産運用に役立てば幸いだ。

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最終更新日 : 2020年4月20日
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