保険金を取得するまでの流れをしっかり把握をしていないと、余計に時間がかかり保険金を修理費などに充てるのが遅れてしまう。
修理が遅ければ当然家賃収入が途絶え物件運営に悪影響を及ぼす。
そこで今回は保険金を受け取る流れと手続きする上での注意点、さらに補償範囲を確認して火災以外の損傷も保険で直す方法もご紹介する。
ぜひ最後までお読みいただき、素早く保険金を受取り、物件収益を回復させるために、役立ててほしい。
目次
保険金を取得するまでの流れ
保険金を受け取るまでの主な流れをご紹介する。
事前に行うべきことを把握しておくことが全体の流れを早めるので、一度最後まで目を通してみてほしい。
発生したらすぐに保険会社へ連絡
まず火災などの被害が発生したらすぐに保険会社へ連絡するようにする。
その際は以下のことを伝えられるよう準備をするとスムーズに手続きが進む。
・保険証券番号
・被害の発生日時と場所
・被害状況、程度、原因
・日中に繋がりやすい連絡先
保険会社へ連絡した後、申請に必要な書類や契約時の補償内容などを示した書類が送られてくる。
もし物件が遠隔地で管理会社に任せているなら、担当に保険会社へ連絡をしたかをまず確認する。
発生直後の写真を撮る
保険会社に連絡をしたら発生直後の物件状態を、詳細に写真を撮るようにしてほしい。
片付けをしてしまったり、水の被害なら乾いてしまったりする前が望ましく、角度を変えてなるべくたくさん撮影しよう。
この後の保険会社への申請書類でも使えるし、修理の工事業者が原因を探る際にも非常に役立つ。
また損害発生直後は慌ててしまい、後で発生時の記憶を思い出せない方もいるので、現場を見て気づいたことをメモしておくのもおすすめだ。
管理会社に任せているなら現場の写真をメールで送ってもらい、一刻も速く被害状況を把握するようにしよう。
工事業者に調査と見積もりを依頼
保険会社への連絡と写真撮影が終わったら、早めに工事業者へ修理の現地調査と見積もりを依頼する。
被害内容によっては被害や原因の調査に時間がかかることも珍しくない。
もちろん極力立ち会うようにし、被害がどこまで及んでいるかなどを把握することも大切だ。
優良な工事業者は目に見えない天井裏や壁の中の被害も確かめてくれるので、その情報を共有し保険請求に含めるようにしよう。
管理会社に任せる場合は、必ず工事業者に写真撮影と詳細な報告書の作成を依頼し、見積もりだけ受け取るということがないよう注意しよう。
保険会社へ書類提出
工事業者の見積もりが出来上がったら、保険会社から送られた申請書類に損害の原因や被害状況を記入し、工事業者の見積もり書と一緒に提出する。
また今回の被害だけでなく過去にできた保険対象の損傷などがあれば、工事業者と相談しながら併せて申請してみるのも良いだろう。
2022年10月以降の火災保険契約については、工事実施後の請求にするため注意して欲しい。
損害保険鑑定人の調査
保険会社に申請書類を提出すると、必要に応じて保険会社が依頼した損害保険鑑定人が現地調査を行うケースがある。
これもできる限り立会っておくと被害がどこまで補償されるか概ね予測ができるし、今後も似たような被害が発生したときの参考になる。
管理会社へ任せているならその立会い状況もしっかり報告してもらおう。
後で補償範囲に納得できず保険会社と交渉する事になった際、鑑定人の見解を把握していないと交渉に大変時間がかかることになってしまう。
受取人の口座に振り込まれる
送られた申請書類若しくは、鑑定人の報告を元に保険会社が補償の範囲と保険金額を算定し通知をしていく。
これに承諾すると保険金が受取人の口座に振り込まれる。
ここまでは保険会社や鑑定人の混み具合によるが概ね1ヶ月程度の期間がかかる。
ただし民間の損害保険会社に比べ、共済や農協系の損保は時間がかかる傾向があるので注意をしよう。
工事実施と業者への支払い
保険金が振り込まれたら工事業者に修理の依頼をしよう。
保険金は申請額から減額されることも多いので、金額が確定するまでは修理の着工をしない方が安全だ。
また保険金に合わせて工事内容を業者と調整することもできるが、その分物件が回復する時間が延びていく点は承知しておこう。
工事期間は修理内容や被害の程度によってまちまちで、数日から1週間程度で終わることもあれば、1ヶ月以上かかることもある。
積立型以外の保険金は非課税
保険金は通常の掛け捨て型であれば、被害を補填するものであり利益は生じないとの考えから所得税などはかからず非課税となる。但し、法人で契約している場合は課税対象となるため注意して欲しい。
ただし火災保険の中には掛け捨てではなく積立型で満期返戻金のある保険もあり、利用のタイミングや受け取り条件によっては課税対象となる可能性がある。
該当する保険で加入されている方は事前に保険会社に確認をしておこう。
補償範囲を把握して火災以外でも活用
火災保険は火災の被害だけでなく自然災害や盗難など、幅広く被害を補償してくれるものがある。
もし今回の被害以外にも建物に条件を満たす損傷があるようなら一緒に修理を行い、加入している保険をフル活用することも可能だ。
火災以外の主な補償被害
・風災、雪災、雹災、落雷
台風や竜巻で飛来物が外壁や窓に当たったり、瓦が飛んでしまったりした損傷も、多くの保険の対象となる。
また雪で屋根や雨樋が傷んだ被害も補償される可能性がある。
・水災
大雨による洪水で、床が濡れてしまった、壁紙が汚れてしまったなどの被害も対象となる。
・盗難
空き巣などで部屋の窓が傷ついたり、鍵を壊されたりした被害が補償される可能性がある。
家財の保険も加入してあれば、備え付けの家具や家電も対象となる。
・衝突
何者かに物件の外壁に車などをぶつけられた損傷も補償される可能性がある。
外壁以外にも玄関ドアの外側などに傷を付けられた場合も同様だ。
この他にも幅広い損害を補償している保険が増えているが、上記も含め加入している保険ごとに設定される条件を満たした場合に補償される。
適用されるか否かは必ず保険会社に直接確認するようにしよう。
請求する権利は3年で時効
火災保険は過去に起こった被害も補償してくれるが、保険法によってその被害が発生してから3年間に限られているので注意しよう。
また被害が発生した日時や原因が明確になっている必要があるので、請求する場合はその点をしっかりと答えられるように準備をしておこう。
被害の程度や内容によっては警察への被害届けなど、第三者の証明を求められることもあるのでこちらも用意しておこう。
自己負担額や最低修理費に注意
保険の契約内容によっては修理の全額を補償するのではなく、一部自己負担額が定められていて、それを上回った金額を補償するものもある。
また修理額が20万円以上などと最低修理額が決められ、それを上回った場合に全額補償するという保険もある。
特に最低修理額では水濡れで壁紙を張り替えるような、ちょうど超えるか超えないかの金額になりやすい修理もある。
修理は表面的な被害を直すだけか念入りに内部も直すかで金額が変わるので、早めに見積もりを取り工事業者と相談して工事内容を決めていくと良いだろう。
修理業者選びの注意点
火災保険を使って修理を行う際は、より確実に保険を利用するようにするため、以下の点に注意して依頼先を選ぶことをおすすめする。
選び方次第で保険を使える被害なのに補償してもらえない事態もあり得るので、せっかく支払ってきた保険料を無駄にしないためにもぜひ注意をしてほしい。
管理会社任せにしない
工事に関しては管理会社にお任せという方もいらっしゃると思う。
しかし管理会社が提出する見積書には必要以上のマージンを上乗せしているケースが多いので注意が必要だ。
保険会社の審査を通れば良いが、不当に高額な金額であればその分減額されることになり、不足分は自己資金から捻出となってしまう。
少しでも金額に不透明さを感じているなら、これを機会に一度他の工事業者の見積もりを取ってはいかがだろうか。
今まで高額な修理費やメンテナンス費を取られていたことがわかるかもしれない。
保険申請の実績を確認する
火災保険を利用して修理を行うのなら、保険の申請実績が豊富な工事業者に頼むのがおすすめだ。
前半の流れでお伝えしたように保険会社への申請で、被害の原因や被害状況を一般の方が1回で正確に記入するのは難しいからだ。
火災保険の申請に長けた業者ならその記入をサポートしてくれるので早期に物件の収益を回復できるし、他にも補償になる被害があれば教えてくれるなどのメリットが期待できる。
逆に不慣れな業者に頼んでしまうと時間がかかり家賃収入がなかなか復帰できないばかりか、書類の不備で保険会社の審査が通らない恐れさえある。
火災保険で修理費を補償するなら必ず、保険申請の経験豊富な業者に依頼するようにしよう。
審査が通ってから契約する
既に触れたように火災保険の審査によっては保険金額が減額されたり、条件が合わず補償対象外になったりする可能性がある。
しかし工事業者の中には「必ず審査は通るはず」と、審査が通る前に工事開始を急がす者がおり注意が必要だ。
誘いに乗って工事を始めてしまえば、万一保険適用外となった場合は全額を自費で負担しなければならない。
また減額になったので工事内容を調整して費用を減らそうとしても、「もう材料や職人を手配してしまった、今から変えることはできない」と断られ、資金の運用が大きく狂うことになるだろう。
まとめ
火災保険の手続きは流れをしっかり把握し、早期に保険金を実行してもらうことが重要だ。
スムーズな手続きは家賃が失われる期間を短縮し、物件運営の損失を最小限に食い止めてくれるからだ。
また火災保険は幅広い補償範囲を持っているため、発生した被害以外にも該当する損傷がないか十分に確認すべきだ。
保険利用に長けた修理業者を選ぶようにして、加入してきた保険を生かして素早く投資物件を回復させよう。