複数の不動産物件を運用していると、新しくローンを組む際に保証人が必要だと言われることがあるかもしれない。
保証人は親や親戚など近しい人物にお願いするのが一般的だが、それでも打診をする際はきちんと説明できるようにしておくのが望ましいだろう。
この記事では保証人の権利である催告の抗弁権と検索の抗弁権の違いについて、詳しく解説する。
保証人の種類による義務の範囲や権利の違いも掘り下げるので、自分が保証人をお願いされた時のためにも覚えておいてほしい。
目次
催告の抗弁権・検索の抗弁権の違い
債権者から債務履行を請求された保証人には、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」の2つの権利がある。
似ていて混同しやすいため、まずはしっかり違いを把握しておこう。
催告の抗弁権とは
催告の抗弁権は民法452条に規定されている。
具体的には、債権者がいきなり保証人に債務履行を請求してきた場合「まず主たる債権者に債務履行を催告してほしい」と主張することができる権利だ。
しかし債権者が主債権者に一度でも催告するだけで済んでしまうため、あまり効力の強い権利とは言えない。
また主債権者が破産したり行方不明になったりしている場合は、催告の抗弁権は消滅してしまう。
連帯保証人には催告の抗弁権が無い。
検索の抗弁権とは
検索の抗弁権は民法453条に規定されている。
債権者から債務履行を請求された保証人が、主債権者の弁済可能な財産を証明して保証債務を拒否できる権利だ。
保証人が「主債権者は強制執行できる預金を持っている」と証明したら、債権者はまずその預金から取り立てなければいけない。
債権者の動きが遅いなどの理由で取り立てができなかった場合は、本来弁済できた分の保証債務を免れることができる。
検索の抗弁権も、連帯保証人には認められていないので注意してほしい。
物上保証人・連帯保証人・連帯債務者の違い
一口に保証人と言っても実は2つの種類があり、負うべき責任の範囲や権利が違う。
この章では2種類の保証人の違い、さらに連帯債務者との違いも詳しく見ていこう。
物上保証人とは
物上保証人は、不動産など自身の財産上に担保を設定した人のことである。
融資を受ける際担保として差し入れる不動産がないとき、家族や親戚が所有する物件に抵当権を設定して物上保証人になってもらうケースが多い。
万が一債務不履行が発生した場合は抵当権が実行され、差し入れた物件の範囲内で保証人が責任を負うことになる。仮に担保物件で返済しきれなかったとしても、残債まで保証人が返済する義務はない。
物上保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権はない。
連帯保証人とは
連帯保証人は主債務者と同等の責任を負う保証人のことである。
債務不履行が発生した場合は債権者から残債全額を請求され、催告の抗弁権・検索の抗弁権を持たないため問答無用で返済義務を負うことになる。
責任の範囲が限定されている物上保証人よりかなり責任が重くなるため、人に頼む場合、自分が頼まれた場合どちらも慎重に検討すべきだ。
連帯債務者とは
連帯債務者は2人で1つの債務を同等に負うことを意味する。
連帯保証人と混同しやすいが全く別の内容なので注意してほしい。
連帯債務は、夫婦の収入を合算して融資額を上げるイメージがわかりやすいだろう。金融機関のローンの場合、連帯債務者になれるのは、同居している親子や配偶者などの肉親のみであることがほとんどだ。
収入のある家族が居る場合、保証人に変わる手段として検討してみても良いだろう。
まとめ
催告の抗弁権と検索の抗弁権は似ているが、成立条件や効力が異なるのでしっかり違いを覚えておこう。
また物上保証人・連帯保証人は責任の重さや範囲がかなり異なるが、いずれも大きな責任や債務を負う可能性もあるので十分注意してほしい。
大きな金額を動かす不動産運用では保証人を打診する、またはされるシーンも少なくないが、しっかりと仕組みや責任を理解してから決断することが大切だ。