不動産の減価償却は、投資物件の選定や経営計画を立てるに当たりしっかりと把握しておくべき要素だ。
減価償却期間は税金を軽減できるため、仕組みを理解してアパート経営における利益を正しく計算する必要がある。
減価償却は新築のアパートやマンションはもちろん、中古住宅も対象となる。
中古住宅の減価償却の計算は新築と比べて少々複雑なので、計算方法を覚えておこう。
目次
減価償却費とは
減価償却は、アパートやマンションなど固定資産の取得費用を、耐用年数に応じて分割して経費計上する仕組みのことである。
具体的な計算方法は後述するが、建物の構造ごとに定められた法定耐用年数を基に、毎年の減価償却費を算出する。
減価償却の対象となるのは、使用可能期間が1年以上で取得価格10万円以上、時間の経過で価値が減っていく資産だ。
中古住宅の場合は建物部分が減価償却資産とみなされるが、土地は年月で価値が減らないため対象とならないので注意してほしい。
確定申告の際は1年あたりの減価償却を計算し、勘定科目「減価償却費」として仕訳処理を行う。
減価償却期間中はアパートの税額を抑えることができるが、耐用年数を過ぎると経費計上できなくなり税額が増えてしまう。
減価償却の仕組みを正しく把握していないと正確な経営計画が立てられないため、しっかり覚えておこう。
減価償却が必要になるケース
中古物件の賃貸アパート経営において、減価償却が必要になるタイミングがある。中古物件で得た家賃収入の確定申告時、減価償却費を経費として計上することができる。
耐用年数が残っているうちは減価償却費の分帳簿上の利益が減り、節税効果を得られるということだ。
個人事業主の場合、確定申告で減価償却を忘れてしまうと次の年に繰り越しすることはできないので注意してほしい。
過去の申告分は更正の請求が可能だが5年以内と定められているため、気づかずに過ぎると損をしてしまう。
中古物件の減価償却計算方法
建物のみの購入価格を確認する
減価償却の対象となるのは建物部分なので、まずは中古物件の購入金額から土地を除いた建物のみの価格を確認する。
中古物件の建物のみの購入価格を確認するには次の方法がある。
①売買契約書
土地部分と建物部分とに記載が分かれているか確認し、分かれていればそれが購入価格。
分かれていなくても消費税の記載があれば割り戻して算出が可能な場合がある。
↓
①に該当しない場合、
②課税明細書等で建物と土地の評価額を基に、購入価格を按分して算出する。
ただし、こちらも必ずこの方法で按分するわけではなく、按分方法の一つとなる。
・毎年市区町村から送られてくる課税明細書
・各市区町村の役所取得可能な固定資産評価証明書
上記の課税明細書、評価証明書の価格はあくまで市区町村側が計算した金額であり、購入価格ではない。
法定耐用年数を求める
中古不動産の法定耐用年数は見積法・簡便法の二種類がある。見積法は手順が複雑なため、ここでは簡便法を紹介する。
まず建物の構造を調べ、新築時の法定耐用年数を把握する。木造は22年、厚み4mm超の鉄骨造は34年、鉄筋コンクリート造は47年とそれぞれ年数が異なる。
アパートの構造 | 法定耐用年数 |
木造 | 22年 |
厚み3mm以下の鉄骨造 | 19年 |
厚み3mm超4mm以下の鉄骨造 | 27年 |
厚み4mm超の鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
中古物件は①法定耐用年数を全部過ぎている場合、②法定耐用年数の一部を過ぎた場合の2パターンで計算方法が分かれる。
木造アパートを例に挙げてそれぞれ計算してみよう。
①法定耐用年数を全部過ぎている場合
法定耐用年数の22年間を過ぎている中古物件は、「法定耐用年数×20%=耐用年数」が計算式になる。
22年×20%=4年
上記の計算から、4年間が法定耐用年数となる。
②法定耐用年数の一部を過ぎた場合
法定耐用年数の一部を過ぎている中古物件は、「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%=耐用年数」で求められる。
築10年の木造中古アパートの場合は下記のような計算になる。
(22年-10年)+10年×20%=14年
単純に法定耐用年数から築年数を引いた年数ではないので注意してほしい。
減価償却率を求める
続いて建物の耐用年数を基に、減価償却率を求める。
減価償却の計算方法は定額法・定率法の二種類があるが、建物の場合は定額法が適用される。
減価償却率は国税庁ホームページの償却率表で調べることができる。先ほどの例で挙げた耐用年数14年のアパートの場合、減価償却率は0.072となる。
計算式に当てはめる
最後に、ここまで確認した情報を下記の計算式に当てはめて減価償却費を算出する。
建物購入価額 × 定額法償却率 = 減価償却費
築10年で建物価格1,000万円の木造中古アパートの減価償却費は次のようになる。
1,000万円 × 0.072 = 72万円
残りの減価償却期間は、毎年の確定申告で72万円を減価償却費として計上できるということだ。
まとめ
確定申告を税理士に任せているオーナーの方も、精度の高い物件選びや経営計画づくりのために減価償却の仕組みを把握しておいた方が良いだろう。
中古物件の場合多少計算が複雑だが、慣れてしまえば難しいものではない。
手元に残る現金や減価償却期間を正しく計算し、安定したアパート経営に役立てていただきたい。