投資にはリスクがつきものだ。それは、安定していると言われている不動産投資であっても例外ではない。
賃貸オーナーとして成功するためには、リスクを避けて通ることはできないはずだ。 また、リスクを知らなければ、対策を練ったり、回避したりすることも難しくなるだろう。
今回は、不動産投資におけるリスクと注意事項について詳細に解説する。
初めての不動産投資で失敗しないためにも、是非参考にしてほしい。
目次
不動産投資先のタイプ別リスク
不動産投資して賃貸オーナーになるベネフィットは、長期的に安定した家賃収入を得ることだ。ベネフィットとは、利益や恩恵などと言う意味で、対義語はリスクになる。
つまり、賃貸オーナーとして利益を得るのだから、必ずリスクがついて回るということになるのだ。
ここでは、代表的な不動産投資先別のリスクについて解説していく。投資先のリスクを知ることで、対策を練ることも可能だ。
地方物件のリスク
都心から離れた地方物件は、価格が低いので利回りが良いと判断する人がいる。しかし、地域の中核となる企業や学校などの影響を受けやすいというリスクが存在する。
例えば、大型のショッピングモールなどができれば人口も集中するので、空き家も減る。
反対に、従来合った大型ショッピングモールが閉店となると、関連する従業員や利便性も求めて入居していた人々は、その周辺から一挙に去ることになるだろう。
都会であれば全体の人口が多いので、影響は微々たるものだが、人口数万人の地方となるとかなり大きなダメージを受ける。その影響は賃貸経営にも波及することになる。
ファミリータイプのリスク
不動産投資の中には、単身向けタイプとファミリー向けタイプがある。ファミリータイプのリスクは、空室率の高さだ。ファミリー故に家族が納得しないと入居が決まらない傾向があり、空き家期間が長引く可能性が高くなる。
また、近年は独身世帯が増加傾向となっている。理由は、若者世代の晩婚化や離婚の増加であり、高齢化に伴う単身世帯の増加だ。
どの理由も深刻な社会問題になっているが、賃貸オーナーは冷静に先を見越して投資先を選択しよう。
古い物件のリスク
古い物件のメリットは価格が安いことだ。価格が安ければ、利回りも高いと思われる人も少なくはない。古い物件のリスクは、耐用年数の短さだ。また、設備も古い場合が多く「安物買いの銭失い」に可能性がある。
新築や築浅の物件であれば、保証を受けることが可能だ。マンションの場合は、引き渡しから10年間は基本構造部分の欠陥について、瑕疵担保責任が定められている。
古い物件に投資する場合は、耐震性や保証期間などをよく確認してから判断しよう。特にビギナーの間は手を出さないほうが無難かもしれない。
1棟買いをするリスク
マンションへの投資の場合は、区分所有と1棟買いがある。1棟買いは、マンションを1棟まるごと購入する投資だ。
1棟買いのリスクは、投資先集中だ。巨額の資本があって、いくつものマンションを所有しているなら資本集中にならない。
しかし、限られた資本であれば、マンションの1棟買いは集中投資になるだろう。これでは、投資の基本である分散投資から大きく外れることになり、失敗した場合の損失が集中する構図となる。
賃貸オーナーが抱える5つのリスクと回避策
対象不動産が決定し投資すれば、晴れて賃貸オーナーとなる。賃貸オーナーにもリスクは必ずついて回る。ここでは、代表的な賃貸オーナーのリスクを5つ挙げ、どう回避すれば良いかを解説する。
空き家リスクと回避策
賃貸オーナーにとって、所有する不動産が空き家になることほど辛いものは無いかもしれない。当然のことだが、空室になれば家賃収入を得ることはできない。これを空き家リスクと言う。
では、どうすれば空き家リスクを回避できるのかだが、空き家が出にくい物件を経営することで回避できる。それには、空き家が出にくい物件の条件をクリアすることが重要だ。
などの条件を満たしていれば空き家リスクを最小限に抑えることが可能だ。所有している物件が空き家リスクの対象であれば、固執することなく売払い、空き家リスク回避の条件にあった物件を探そう。
家賃滞納リスクと回避策
借主の家賃滞納は賃貸オーナーにとって悩みの種となるリスクだ。家賃滞納リスクは、金銭的な実害を被るだけでなく、家賃催促という精神的なダメージも受ける。
家賃滞納リスクを回避する方法は、管理会社に一括委託することです。管理会社は信頼できるパートナーを選ぼう。
そして、管理会社に入居者募集から審査・家賃回収まで全てを託すことによって、賃貸オーナーは無駄な時間を割かれることなく経営に専念できるのだ。
家賃下落リスクを回避する方法
賃貸経営を続けていると、家賃を下げざるをえない物件が出てくる可能性もある。家賃下落の理由は、多種多様にありますが、代表的なものは人口の減少や人口動態ニーズの変化だ。
家賃下落リスクの回避策は、投資時に人口の減らない都市の物件に投資することや人口動態ニーズの先読みだ。物件を売却しなくても、住居ニーズに合わせた改装工事で切り抜けられる可能性もある。
民泊仕様にして貸し出す方法や、外国人労働者専用にするなど時代のニーズ合わせることでもリスク回避につながる可能性を高める事ができるだろう。
難しい天災リスクの回避
「天災は忘れた頃にやってくる」とあるように天災は突然やってくる。そして、回避することは非常に難しいのだ。ただし、地震や洪水、土砂災害などはある程度回避できる可能性がある。
物件を選択する際には、活断層の近くにないかを確かめよう。そして、津波被害にあわない立地の物件を選択する。また、各行政が発表しているハザードマップを活用して洪水や土砂災害の危険性がないかを確認する必要もある。
物件の立地に対して確認作業ができたら、物件そのものの耐震性や耐火性が高いかなどを確認しよう。
災害に強い物件の需要は年々高まっている。賃貸オーナーは、そのニーズをしっかり掴んで、ビジネスチャンスにするくらいの事業計画を立てるほうがよい結果につながるのではないだろうか。
悩ましい修繕リスクの回避
中古物件に投資してしまって、修繕費がかさんでいる事例が多くある。中古物件は、安い価格で販売されているので、利回りが良さそうに見えるのだが、修繕費用がかかることまでは不動産情報に載っていない。
修繕費用がかかることを修繕リスクという。修繕リスクは、物件を所持している限り、必ずついてくるものだ。思わぬ修繕費で赤字に転落して苦い思いをした賃貸オーナーもいるのではないだろうか。
建物の老朽化や設備の老朽化は避けることができない。なので、新築や築浅の物件の中から天災リスクを回避できる物件を選んで投資するようにしよう。中古物件に手を出すのは、賃貸オーナーのプロになってからでも遅くはない。
不動産投資物件を選ぶ際の注意事項
賃貸オーナーが抱えるリスクと回避策を学べば、いよいよ物件の購入となる。物件を購入する際には、不動産会社からの情報だけでなく、現地で物件をしっかり見定める必要がある。
それが、リスク回避の近道なのだ。また、物件の下見は、購入の意思決定を大きく左右するので、物件情報のポイントとあわせて注意事項を解説する。
収益性のみにとらわれない
ネット上には投資用の収益物件を扱うサイトが溢れている。初めての不動産投資では、高い収益率を謳う物件に目が行きがちになる人も多いようだ。
利回りが良い物件=良い物件では決してない。リスクが潜んでいることにも注意をはらおう。リスクと収益を量りにかけながら物件を選ぶような強かさが必要だ。
物件の立地と環境
物件選びで最初に確認することは、物件の立地と住環境だ。立地については、利便性の良し悪しを確認する。利便性は交通の便だけでなくコンビニや商業施設までの距離や病院や公共施設なども考慮する。
利便性の良くない物件は、潜在的な住居ニーズが低い物件といえるだろう。利便性の良い物件であれば、ニーズが高いので空き家リスクを軽減できる。
また、利便性が良くても住環境に問題があれば空き家リスクが高くなる。近辺に鉄道や幹線道路があると騒音や振動被害が想定されるし、工場やカラオケがあれば、入居者予定者から敬遠されがちになるだろう。
公共施設の中でも、幼稚園や学校については近すぎると問題が生じる可能性が高くなる。子供の元気な声や学校行事などは騒音問題になることもあるし、送り迎えで車が渋滞することもある。現地に下見に行った際には、立地と住環境をしっかり確認しよう。
物件の外観は良いか
人を見た目で判断してはいけないが、物件は見た目が非常に大事だ。一流の建築家が手掛けた建物は芸術の域に達していて価値が下がらない。賃貸物件であっても外観の良いものは築年数が古くても価値が下がりにくいのだ。
理由は、借主がそこに住むだけでステータスアップを感じるからだ。
そのような物件だと空き家リスクも下がり、家賃下落リスクの心配も軽減されるだろう。
物件の内部はしっかり調べる
外観を確認すれば、次は建物内部をしっかりチェックしよう。
物件によっては居住者がいるので内部が見られない場合もある。しかし、内部を見ないまま購入するのはリスクが高いので、他に空き室があれば代用として下見させてくれるように交渉しよう。
それもできない場合は、販売用の間取り図だけでなく建物確認図面などを手に入れてイメージを膨らませる方法があるが、ビギナーのうちは内部をチェックできる物件に絞ってリスクを回避するほうが良策だ。
満室想定利回りと現在の賃料設定
間取りなどの物件情報に記されている物件の利回りは、満室想定利回りがほとんどだ。満室であることが前提の利回りに惑わされてはならない。
立地・住環境・外観・内部設備などを考慮して15~30%は空き家になると想定して再計算しておこう。
賃料設定にも落とし穴がある。古くから居住している住民は、新築や築浅時の家賃を払っている場合がある。その賃料が、物件の現状や周辺の家賃相場に対して適正であるか判断しなければならない。
判断ミスは、入居者が入れ替わるごとに家賃を下げなければならないなどの、家賃下落リスクを背負い込むことになる可能性がある。
管理について
物件が決まれば続いて管理について考えよう。物件によっては、現在の管理会社が引き続き管理する場合もある。売買契約の前に確認しておくとよいだろう。
注意したいのは、管理会社が定められていない場合と、継続する管理会社が適切な仕事をしているかどうかだ。管理会社が定められていない場合は、信頼できる管理会社を探して依頼するか、自分で管理することになる。
継続する管理会社が適切な仕事をしていない場合は、改善を要求し、要求に応じない場合は契約を解除して、新たな管理会社に依頼するか、自分で管理する必要がある。
修繕履歴を把握する
物件の購入に際しては、業者などからさまざまな物件情報や資料の提供を受けることができる。その中でも、注意をはらいたいのが修繕履歴だ。
修繕履歴を見れば、屋根や外壁などのメンテナンスが定期的に行われているかを修繕の内容や回数から確認できる。過去に雨漏りがあったなどの推測もたつし、メンテナンスが行われていないなども判断できるだろう。
メンテナンスが行われていない物件は、近い将来に修繕費が必要となる。また、耐久性が想像以上に落ちている可能性もあるので、修繕リスクは高くなるだろう。
入居者の属性を把握する
入居者がいるオーナーチェンジ物件であれば、入居者の属性をでき得る限り知るようにしよう。物件の購入予定者であっても、入居者の個人情報まで入手することは難しいのが現状だ。
現地に下見に行けば、洗濯物などを見たり、共用廊下に置かれているものを観察できる。そうすれば、家族構成や職業などの想像がつく。
また、駐車場の車の種類や、駐輪場の自転車・バイク・三輪車など現地で得られる情報は少なくない。
建物の現況をつぶさに調べる
業者から得られた資料をもとに、建物の現況をつぶさに調べることはリスクの軽減につながる。
修繕記録があれば、見比べながら建物をチェックしよう。また、目視で雨漏りの痕跡がないかなど、つぶさに調べることも欠かせない。
パイプスペースの状況や下水枡の蓋の状況を確認すれば、後に必要になるかも知れない修繕の予想がたつかもしれない。
サブリースで賃貸オーナーのリスクは回避できる?
サブリースとは、賃貸オーナーから物件を借り上げて、その物件の入居者募集から家賃回収までの業務を行う仕組みだ。
このサブリースは、空き家リスクを回避できる手段の1つだ。しかし、サブリースのメリットやデメリット、契約内容を理解していないと痛手を被ることになるかも知れない。
サブリースのメリット
サブリースのメリットがどのようなものであるかを知ろう。
- 空き家リスク・家賃滞納リスクの回避
- 管理業務の一括委任
- 確定申告の簡素化
賃貸オーナーに代わって業務をしてくれるので、賃貸オーナーは何もしなくて良いのがサブリースの長所だ。毎月、自動的に保証賃料を受け取ることができる。
サブリースのデメリット
サブリースを導入するのであれば、デメリットを十分に把握してからで遅くない。では、サブリースのデメリットとはどのようなものであるかを知ろう。
- 保証賃料は家賃収入を下回る場合がある
- 礼金や更新料などを受け取れない
- 入居者を選ぶことができない
- サブリース会社の倒産リスクがある
サブリースを利用する場合は、家賃保証率に注意が必要だ。仮に80%で契約した場合は、満室であっても70%稼働であっても、契約賃料の80%が受け取り分となる。
安易にサブリースを利用しない
サブリースは、20年保証となっていても、数年ごとに家賃保証の見直しがある。つまり、経年とともに保証賃料が下がる仕組みになっているのだ。
もちろん、サブリースを利用しなくても家賃下落リスクはある。しかし、賃貸オーナーの経営努力によって家賃を維持することができたり、稼働率90%以上を達成できたりする場合もある。
リスク回避のためのサブリース利用は、経営意欲を削ぐ可能性も秘めているので利用する際は熟考すると良いだろう。
初めての不動産投資だからこそリスクを軽減しよう
リスクのない投資は存在しないだろう。しかし、回避できるリスクなら、取り除いてから投資するべきだ。不動産投資においては、物件資料の熟読や入念な下見とチェックを行えば、回避できるリスクは少なくない。
初めての投資であれば尚更のこと、労を惜しまず投資物件を精査しよう。そして、信頼できる管理会社が見つかるまで、何社でもアタックすることが肝要だ。
納得いくまでリスクを抑えることができたら、賃貸オーナーとしての成功も見えてくるのではないだろうか。