不動産投資にはたくさんのメリットがある。
それは、賃貸経営が上手くいって利益が出た時のみ享受できるものだ。賃貸経営を成功させるには、仕組みを理解する必要がある。賃貸経営は不動産投資の主流だ。
今回は、賃貸経営の仕組みについて詳細に解説する。仕組みを理解してより良い賃貸経営を推進しよう。
目次
基本的な賃貸経営の仕組み
不動産投資して賃貸オーナーになるには、多額の初期投資が必要となる。
しかし、賃貸経営がどのような仕組みで利益を生み出すのかを正確に理解していないと事業計画や資金計画を立てることすら難しいだろう。事業計画などのプランニングができていない状態で不動産投資を始めるのは危険だ。
ここでは賃貸経営の魅力やキャッシュフロー・節税対策について解説する。
賃貸経営のキャッシュフローの仕組み
不動産投資して賃貸経営を始める際に、自己資金のみで始められる人は少ないだろう。多くの賃貸オーナーがスタート時に融資を受けていることを勘案して、融資を受けている前提でキャッシュフローの仕組みを解説していく。
賃貸経営で利益を生み出すためには、収入と必要経費、借入金返済額を把握しなければならない。そして、毎月どれくらいの利益を生むのか確認しながら定期的に収支計画を見直そう。
そこで必要なのがキャッシュフローだ。賃貸経営のキャッシュフローの仕組みは下記のようになる。
毎月安定したキャッシュフローを保つためには、必要経費と借入金返済額の合計が家賃収入より少なくなければならない。
賃貸経営が節税になる仕組み
賃貸経営で利益が出た場合の納税は所得税と住民税だ。
働いて得た給与所得の場合も同じように所得税と住民税になるので、賃貸経営の損益は確定申告時に損益通算できる仕組みになっている。
損益通算とは、賃貸経営の損益を給与所得と合算して税務申告することを指す。つまり、賃貸経営で利益が出ていれば通常通り納税。損失が出た場合は給与所得から損失額を差し引くことができる。
実際には、給与所得は源泉されているので確定申告で還付を受けるという形式で節税になる。
不動産投資は、遺産相続税や贈与税の節税対策になる場合もある。小規模宅地等の特例に適合すれば評価減による納税額の圧縮が可能だ。不動産は現預金よりも評価が大きく下がる特性があり、賃貸向け不動産ならさらに評価が下がる。
資産評価が下がれば納税額を大幅に圧縮できる仕組みとなっているので節税になる。
賃貸経営の魅力を知る
賃貸経営の魅力は、ローリスクで安定した家賃収入を得られることだ。そして誰でも始められて資格も必要ない。
例えば、会社員が区分マンションを所有し賃貸オーナーになって年収を増やすことも可能だ。サイドビジネスとして副収入を得ている人も少なくない。
安定した家賃収入を定年後の年金にプラス材料にして、不安のない老後になるような計画を立てることもできる。
もちろん、賃貸経営に専念して大きな成功を手に入れている人も少なくない。そのような人は、何棟もマンションやアパートなどを所持している。収入も多く、賃貸経営の場合はそのほとんどが不労所得のため豊かな暮らしに加え、自由な時間も多い。
賃貸経営の魅力を知って目標を持っていれば、成功までの艱難辛苦を乗り越えられるかも知れない。
1棟賃貸経営を知る
賃貸経営の多くは、マンションやアパートを借主に貸し出している。中には1戸建て住宅を貸し出している場合もあるが、この記事で解説している1棟はマンションやアパートのことだ。1戸建て住宅は区分賃貸経営に含まれる。
マンションやアパートの場合は、1棟賃貸と区分賃貸があるが、先に1棟賃貸のメリットや流れを説明していく。
1棟賃貸経営のメリット
1棟賃貸経営のメリットは、最大収入の金額が大きいことだ。最大収入は入居率が100%で想定家賃を下げることなく、礼金や更新手数料を得た収入を指す。
1棟賃貸経営のランニングコストは、満室状態でも20%空き家がある状態でもさほど変わらない。よって収入が多いほど利益が大きい。
また、戸数が多ければ管理会社への手数料も交渉できて、コストを削減できる可能性もある。家賃収入の多さや戸数の多さがメリットになるように交渉したり、経営戦略を練ったりすると良い結果を得られる可能性があがる。
1棟賃貸経営の流れ
1棟賃貸経営で利益を生み出すにも、その流れを掴んでいないとイメージも湧かない。たくさんの資金を投資する事業なので、少しでもリスクを削減するためにもしっかりと流れを把握しよう。
①新築賃貸物件を建てる場合は、建築会社を決めて事業計画に沿った建築プランを決めていこう。中古物件を購入する場合は信頼できる不動産会社を決めて、事業計画に沿った物件を探すことになる。
②新築物件は建築確認申請を行い、確認が得られた段階で建築会社と請負契約を締結する。その後、スケージュールどおりに工事が進んでいるか確認しよう。中古物件の場合は、目当ての物件をしっかり下見して満足できる物件なら購入の意思を不動産会社に伝える。その後、売買契約へと進みオーナーチェンジとなる。
③新築物件の入居者募集は、建物完成の3ヶ月前程度から始めるのが一般的だ。その際に、事業計画通りの賃料で良いかなど再検討しておくと良い。管理会社は入居者募集までに決めておく必要がある。中古物件の場合は、すでに入居者がいるのでオーナーチェンジした旨を入居者に伝えなければならない。しかし管理会社が設定されている場合は管理会社に任せることもできる。
④新築・中古に限らず、入居者募集からは管理会社と契約していれば任せることになる。しかし、自己管理を選択した場合は入居者募集から審査・賃貸借契約に携わり、最終的に鍵渡しまで不動産会社や入居者とやりとりしなければならない。1棟賃貸経営では戸数が多いので、管理会社に任せるほうが無難だろう。
区分賃貸経営を知る
次は、区分賃貸経営について解説を進める。区分とは分譲マンションの1室や戸建て住宅を指す。その区分物件を所有して賃貸し、家賃収入を得て経営することが区分賃貸経営だ。経営者が住んでいる地域に絞って物件を所有する人や、三々五々と全国の物件を所有する人もいる。
区分賃貸経営のメリット
区分賃貸経営のメリットは、分散投資ができることと初期費用が安価であることだ。しかし安価であるとはいえ、不動産に投資するのだから相応の資金が必要となる。
区分賃貸経営では、新築分譲マンションや中古分譲マンション、戸建て住宅やテナント付き住宅などさまざまなタイプの物件が対象である。
事業計画に沿った不動産に投資できるメリットがあり、物件に応じて臨機応変に事業計画を変更することも可能だ。自由度の高さと1物件対する投資額の低さが活かせるように、経営戦略を立てると良いだろう。
区分賃貸経営の流れ
賃貸経営の基本的な流れは物件の取得→入居者募集→賃貸借契約→物件の管理・家賃回収→退去→入居者の再募集となる。
この流れの中で、最初の「物件の取得」が不動産投資であり、収支構造の大半を占めることになる。つまり、ここで失敗しなければ十中八九は成功する。
そのため「物件の取得」には投資戦略やリスクマネジメントが必要となる。成功のカギは最初の不動産投資にあると認識して物件を選択しよう。
賃貸経営の強みを知って利益を出す
賃貸経営の仕組みや流れの次は、利益を出す仕組みを知る必要がある。
それには、賃貸経営の強みを知っておくほうが良い。賃貸経営の強みを理解すれば自ずと利益が出てくるだろう。
賃貸経営で成功している人は、この強みをよく理解して上手く利用している。強みの反対は弱みだが、強みを活かすことで弱みは自然と克服される。
安定した収入
賃貸経営の基本的な収入は家賃である。家賃収入は多種多様な投資の中でも非常に安定した収入と言える。この家賃が定期的に入ってくるからこそ、年金の代わりになったり、生活資金になったりする。
区分賃貸経営で1戸だけでは生活を維持するのは難しいだろう。しかし、成功して複数の賃貸物件を所有するようになると一定の空き家があっても収入の安定度が増す。
1棟賃貸経営では最初から多額の投資をし、大きな収入を得るために始めている。生活の維持はもちろん、貯蓄も増えるような家賃収入が計画されているので失敗しない限り人が羨むような安定収入がある。
値上がりも期待できる
物件によっては買った時よりも高く売却できる場合もある。株価ほどではないが、不動産の価格も変動する。一般的には景気がよい状況では値上がりし、景気が悪くなると値下がりする。
物件の立地や環境の変化によっては、景気に関係なく値上がりする場合もある。家賃収入と合わせると、さらに大きな利益が生じる可能性もあると認識しよう。
また、建物は減価償却によって経費計上する。利益が生じていないと思われるケースでも減価償却によって利益が生じている場合もある。
例えば、1000万円で購入したマンションを10年所有して800万円で売却したとする。単純に計算すれば200万円の赤字だ。
しかし、10年の間に減価償却した分が300万円とすれば、マンションは700万円の価値となっている。結果として、700万円のものを800万円で売却したから、100万円の利益が生じたということになる。
建物の減価償却については賃貸経営において重要な項目なので、しっかり理解しておくほうが良い。
インフレに強い
物価が上がる状態をインフレーションと言う。略してインフレと言うほうが多く使われているのではないだろうか。賃貸経営はインフレに強いとされている。
理由は物価の上昇に応じて家賃も上昇するからだ。金や為替投資のようにリアルタイムで上昇する訳ではないが、少し遅れてインフレ率に応じて上昇する。
だが家賃は自動的に上がるのではない。賃貸経営者は世の中の物価の動きに応じて適切に家賃の変更を判断する必要がある。
家賃の変更は入居者との契約途中では難しいので、入居者募集時や契約更新時に的確な判断をしよう。
融資が受けやすい
不動産投資は融資が受けやすいことも賃貸経営の強みだ。理由は対象不動産がそのまま担保となり、不動産自体の資産評価が高いからである。
しかも、通常の運転資金や設備投資と比べて返済期間が長く、高額な融資を受けやすいことも大きな強みとなっている。
そして返済が滞っていない限り、融資の停止や一括返済を求められることはないだろう。
注意したいのは融資が膨らむことだが、ビジネス上の収支があっていれば恐れる必要はない。しかし、収支が合わない融資を受けることは危険だ。
相続税の節税対策になる
先にも少し触れたが、不動産投資は相続税対策にもなる。ここでは具体的にどのように節税できるのかを解説する。
相続対象となる土地については自宅であれば公示地価水準の8割程度の評価となるが、貸家建物地では6~7割程度の評価となる。
また建物の場合の評価について自宅では、固定資産税評価額の5~6割程度だが、貸家では3~4割程度である。
現預金の評価が10割なので、1億円の遺産ならば1億円に対して相続税が課税される。しかし、1億円の価値がある賃貸向け不動産であれば、上記のような評価となって大幅な節税になる。しかも不労所得である家賃収入まで相続させることが可能である。
賃貸経営の税金の仕組み
不動産投資や賃貸経営に関係する税金は7つある。物件の購入時に不動産取得税・登録免許税・印紙税が課税される。
そして、不動産保有時は固定資産税・都市計画税・所得税・住民税の対象だ。物件の売却時に利益が生じれば、所得税と住民税が課税される。
賃貸経営に大きく関係する税金は所得税と住民税だ。賃貸経営者は毎年確定申告して所得税を納めることになっている。損失が生じた場合の損益通算も確定申告で還付を受ける仕組みだ。
住民税は、所得税が決まれば自動的に役所から納税通知書が届くので、期限までに納税しよう。
家賃収入の課税
家賃収入は不動産所得に該当する。不動産所得とは家賃収入から必要経費を差し引いたものを指す。
不動産所得から所得控除を差し引いたものが課税不動産所得となり、この金額に対して税率が掛けられる。こうして算出されたものが所得税額となるが、そのまま納税する訳ではない。その人の状況によって所得控除や税額控除があるので、納税することになる。
確定申告の知識を習得
賃貸経営で不動産所得を得たら確定申告しなければならない。法人化している場合は決算月後に税務申告が必要である。
賃貸経営は個人事業主の比率が高いので、ここでは確定申告について解説をしていく。
確定申告では年間を通して得た収入を自分で申告し、所得税を納めることになる。確定申告には青色申告と白色申告がある。青色申告は白色申告よりも複雑で複式簿記でお金の流れを記録し、財務諸表の提出が必要である。
しかし、特典が白色申告よりも多いので青色申告を選択するほうが無難だ。
損失が出た場合の繰越控除や親族を雇った場合の専従者給与の適用など、青色申告を選択することで経営の幅は広がるだろう。
不動産投資は賃貸経営を知ってから
不動産投資を始めると同時に賃貸経営がスタートする。つまり、賃貸経営の仕組みを理解していなければ不動産投資を始めることは難しい。賃貸経営のキャッシュフローから始まり、賃貸経営のメリットを理解して強みを知っていれば、円滑に不動産投資を始めることができる。
不動産投資は大きな資本が必要だ。不動産投資はリスクの少ない投資だからといっても経営力がなければ失敗する可能性がある。
賃貸経営の仕組みを知って経営力を養い、利益を生み出す経営者になることが肝要である。