不動産投資に魅力を感じている人は少なくない。いつか賃貸オーナーになろうと考えている人もいる。しかし、行動に移している人は意外と少ないのが現状だ。
本章では、賃貸オーナーへのイメージがつくように、不動産投資を始める理由から、賃貸オーナーとなり税金を納めるところまでを解説する。
これから不動産投資を始める人や、すでに賃貸オーナーであるが鳴かず飛ばずの人が次のアクションを起こすきっかけになれば幸いだ。
目次
不動産投資を始める理由
物事を始めるのには理由がある。理由はモチベーションへとつながる。モチベーションを上げるには、たくさんの理由があった方が良いとされている。
ここでは、賃貸オーナーになっている人たちがどのような理由で始めたのかを紹介する。
不動産を購入して賃貸収入を得る
賃貸オーナーになる理由で最も多いのが、家賃収入を得るということだ。家賃収入は不労所得と呼ばれ、働かなくても自動的に安定して入ってくる収入を指す。
働かなくても毎月決まった収入を得ることができるため、不動産投資の人気は常に高止まりしている。新しく賃貸オーナーになろうとする人は後を絶たない。
不動産を売買して収益を得る
不動産投資で収入を得るもう1つの方法は、キャピタルゲインと呼ばれ不動産を売却した差額で利益を得ることだ。
例えば、荒れた更地を住宅用の分譲地として販売することだ。荒れた更地は、安価で入手することができる。その更地に道路を通し、電気や上下水道を整備し区画割りすることで、元の値段よりもはるかに高く売却できる可能性がある。
不動産売買による収益は、賃貸オーナーに比べて非常に大きな利益を得ることができる。一気に大きな収益を得ることが不動産投資の理由であれば、こちらのほうがよいだろう。
実物投資はリスクが低い
不動産投資は、実物投資なのでリスクを抑えることができる。株式や仮想通貨などの投資は、会社が倒産したり、発行先が破綻したりするなどで、その価値は一夜にしてなくなってしまう恐れがある。
不動産投資は、景気動向などによって価格の上下は多少あるものの実物資産は残るため、価値が全くなくなるということはない。
リスクを抑えた投資を目指す人は、株式よりも不動産に投資する傾向がある。
自己資金が少額でも始められる
不動産投資を始める理由の一つに、資金が少額であってもスタートできることが挙げられる。少額でも始められる理由は、融資を受けやすいからだ。
対象物件を担保にすることで審査が通りやすくなる。結果的に少ない自己資金で不動産投資が可能となる。
不動産投資で相続税や贈与税を節税する
相続税や贈与税を節税する目的で不動産投資を始める方もいる。贈与税や相続税において現金や有価証券の場合は時価に対して課税される。
対して、不動産の場合で土地であれば、公示価格の80%程度の評価であり、建物は固定資産税課税台帳に記載されている固定資産評価額に基づいて評価される。
その評価はおおよそ建物費用の50%から60%だ。
さらに、投資用の不動産であれば、第三者に賃貸することで評価額は30%に控除される。結果的に現金と比べると約1/3の評価となり、大きな節税効果を得ることができる。
生命保険よりも魅力がある
生命保険は、被保険者が死亡した場合に受取人が、生命保険金を受け取る仕組みだ。不動産投資の場合は、融資を受けていれば団体信用保険に加入することになる。
この保険は契約者が、死亡したり高度障害者となったりした場合に融資の残債を保険金で返済できる仕組みとなっている。
つまり、融資の残債があっても家族に不動産を残すことができるということだ。
そして家賃収入である不労所得も残すことができるため、残された家族にとっては生命保険よりも安定した暮らしが補償される。
当てにできない年金代わりに
年々減少傾向にある年金制度では、老後に不安を感じている人が少なくない。
不動産投資を始めれば、家賃収入で長期間にわたり安定的に資産を形成していけるだろう。また、年金を受け取る年齢までに融資を完済していれば、公的年金に加えて家賃収入が私的年金となる。
将来の年金代わりに不動産投資を始めようとする方は、年々増えているのが現状だ。
知っておくべき不動産投資のリスク
不動産投資して賃貸オーナーになるためには、リスクについても知っておくほうがよいだろう。
実際に投資する前に理解しておくことで、リスクを回避することが可能となる。不動産投資のリスクは多種多様だ。投資する物件によっても違いがあるので、ここでは代表的なものを5つ解説する。
空き家のリスク
不動産投資を始める最も大きな理由が家賃収入だ。しかし、空室になると家賃収入は入ってこなくなる。
融資を受けている場合は、家賃収入がない月でもローンを返済しなければならない。賃貸オーナーにとって空室は最も大きなリスクと言えるだろう。
建物の老朽化
形があるものはいつか無くなる。それは、マンションやアパートなどの建物であっても同じで、老朽化するといつか取り壊さなければいけない時期がやってくる。
建物が老朽化すると共に家賃も下げざるを得ない。また、修繕に関する費用もかさむ。
賃貸オーナーになるのであれば、建物が老朽化するリスクは最初から織り込み済みで投資しなければならない。
災害リスク
地震大国の日本においては、地震から逃れることは不可能と言える。いつどこで起こるのかわからない地震に対して、打つことができる対策は、建物を耐震や免震構造にすることだ。
投資前に耐震性や免震性を確認し、さらに地震保険に加入しておくと良いだろう。
金利上昇
賃貸オーナーの中には、金融機関から融資を受けている方が多くいる。逆に言えば、自己資本だけで賃貸オーナーとなっているほうが少ないだろう。
融資を受けている場合は、毎月の安定した家賃収入で、月々の返済をしている方法が一般的だ。不動産投資ローンの場合は、一般的にほとんどの融資が変動金利型となっている。
変動金利型の場合は、返済期間中に金利が上がって返済金額が増えるというリスクがある。
売却リスク
不動産投資における売却リスクとは、費用リスクと流動性リスクだ。費用リスクは、不動産を売却する場合に発生するさまざまな経費や税金のことを指す。
経費は、不動産仲介手数料や銀行に支払う一括繰り上げ返済手数料などだ。税金は、売却益がある場合に所得税と住民税が課税される。また、印紙税や消費税は売却益がなくても納めなくてはならない。
流動性リスクは、不動産の特徴の1つで、売りたい時に買い手がつかない場合を指す。不動産の売却期間は、一般的に3ヶ月以上とされている。
理由は、不動産の査定や不動産業者との条件交渉、媒介契約などに時間を割かれるからだ。
不動産の場合は、売却が開始されてもすぐに売れるとは限らない。仮に短期間で買い手がついたとしても、条件交渉や売買契約に時間がかかる。決済や引き渡しまでにはさらに時間が必要となり、売却金が入ってくるまでには、相当の時間が必要であるという認識が必要だ。
不動産投資で賃貸オーナーになるまでの流れ
不動産投資をして、賃貸オーナーになるには一連の流れがある。何事もそうだが、流れを掴んでおくと次に何をすべきか、何を準備すべきか判るようになり、物事を段取り力運ぶことができるものだ。
ここでは、融資を利用すると仮定して、賃貸オーナーになるまでの流れを解説する。
賃貸オーナーになるまでの流れ
賃貸オーナーになるための大まかな流れは以上のようになる。
しかし、融資を受けずに自己資金で物件を購入できる方もいれば、管理会社に任せずに自分で管理する方もいるだろう。流れを掴んでいれば、事前に細部にわたった計画を立てることも可能だ。
不動産投資物件の選び方
賃貸オーナーになるためには、投資物件を慎重に選ばなければならない。当然ながら選び方が分かっていなければ、収益の上がらない物件を購入する可能性も上がるだろう。
賃貸オーナーとしてのスタート時は、1棟ではなく区分マンションに投資する方が多いので、ここでは区分マンションの物件の選び方を解説する。
区分マンションに投資する場合
区分マンションに投資する場合にはメリットとデメリットを理解しておく必要がある。
メリットは
1.投資額が安価のため賃貸オーナーになりやすい
2.高利回りが期待できる
3.管理に手間がかからない
反対にデメリットは
1.投資額が少ないのでリターンも少ない
2.資産は建物のみである
3.空室になった場合は家賃収入がゼロになる
不動産投資のスタートなので、比較的にリスクの少ない区分マンションからスタートし、経験値を積み上げるほうが無難といえるだろう。
中古物件のメリットとデメリット
不動産投資では、新築物件と中古物件で迷う場合がある。初めての不動産投資では、予算を抑えて中古物件を選択する方が多いようだ。
中古物件のメリットは、初期費用が安く抑えられることや、物件の状態を確認しやすいことだろう。既存の物件なので、近隣周辺の状況を調査することも容易だ。
デメリットは、融資を受ける場合の担保力が低いことや、物件の間取りや設備が古く感じられる場合があることだ。最も注意したいのは建築年数が古い場合の耐震性能だ。今の建築基準法以前の物件であれば、耐震補強工事が完了しているかしっかり確認しておこう。
投資マンションの選び方
賃貸オーナーとして、実際に投資物件を購入する際には、価格相場を知ることから始めよう。
その際に役立つのが、国土交通省が運営している土地総合情報システムだ。このシステムは、実際の不動産がどのような価格で取引されているかを知ることができるシステムで、誰でも閲覧可能なので是非利用しよう。
次に、空室になりにくい物件を選ぼう。 空室になりにくい物件ということは需要が高いということだ。需要の高い物件には3つの共通点がある。
1つは、利便性の良さで、最寄り駅から徒歩10分以内や、利用できる路線が多いことなどがポイントになる。また、近くにコンビニエンスストアがあったり、飲食店が多かったりすることも物件の需要を高める要素になる。
2つ目の要素は、メンテナンスが行き届いていることだ。例えば、管理人が常駐していたり、共有部分などの清掃が行き届いていたりする物件は、絶えず需要があって人気が衰えないため、空室になってもすぐに次の借主が決まる。
3つ目は、時代や借主のニーズに合った設備や仕様があるかどうかだ。時代にあったおしゃれな空間や最先端の設備を重視される借主も年々増えている。最近では、セキュリティがしっかりしている物件ほど評価されている。
これらの要素を含んだ物件を、初めての不動産投資で選ぶことができれば、賃貸オーナーとしての順風なスタートをきれるかもしれない。
投資マンションの探し方
投資用のマンションを探すのであれば、投資物件専門のサイトや投資物件を専門に販売している不動産会社のサイトで情報を得ることをおすすめする。
CM で流れているようなオールラウンドの不動産のポータルサイトでは、情報更新ペースが遅かったり、投資に向いていない物件が多かったりして、結果的に時間の浪費に終わってしまう場合があるかもしれない。
「餅は餅屋」と言う。不動産投資で失敗したくないのであれば、優秀な不動産会社をパートナーとして選ぶべきだ。
不動産会社の中でも、投資物件を専門に扱っている不動産会社から情報を集め、コンタクトを取るほうが良い結果を出せるのではないだろうか。
不動産投資ローンのメリットとデメリット
自己資金が潤沢にあっても、少額であっても不動産投資で融資を受ける場合がある。物件を選ぶ際には、不動産投資における融資のメリットやデメリットを理解しておくことをおすすめする。
融資のメリットは、レバレッジを効かすことができることと、少ない自己資金でも不動産投資を始めることができることなどだ。
デメリットは、空室になれば融資の返済が厳しくなることと、売却後に債務が残ってしまう可能性があることなどだ。
住居用の融資と違って、不動産投資の融資は金利が高く設定されている場合がある。融資を受ける際には、金利をしっかり確認して申し込むようにしよう。
賃貸オーナーにかかる税金
賃貸オーナーになって、家賃収入が入ってくるようになると税金が発生する。税金は所得税と住民税だ。毎年1月から12月までの収支を確定申告し、不動産所得に応じて先ほどの税金を納めることを理解しておこう。
家賃収入は、税法的に不動産所得とされ家賃収入から必要経費を差し引いたものを指す。
主な必要経費は以下のようなものだ。
- 集金代行手数料
- 管理費や修繕積立金
- 修繕費用
- 支払利息
- 減価償却費
- 固定資産税
などだ。
規模が大きくなれば公認会計士や税理士などに依頼する方が無難だが、初めての投資で賃貸オーナーになったばかりであれば、自分で確定申告することをおすすめする。無駄な費用を省くことができるし、税法の理解を深めることも可能だ。
不動産投資・賃貸オーナーの心得を知る
不動産投資を始める前に賃貸オーナーとしての心得を知っておこう。
1.うまい話には疑ってかかろう
2.大きく儲けるよりもリスクを少なくすることを心がけよう
3.投資計画は最低を想定して作成しよう
4.投資は十分に納得してから決断しよう
5.相続のことも想定しておくとよいだろう
不動産投資を始めるとなると、うまい話を持ってくる詐欺のような輩が何人も登場するかもしれない。ビギナーの間は、うまい話の真贋を見極めることが難しいので、疑ってかかるほうが無難だ。
また、投資が成功すれば不動産はもちろんのこと、現金も人が羨むほど貯蓄できる可能性が高まる。相続で揉め事が起こらないように事前に心がけておこう。