再建築不可物件は一般的に相場価格より安く取引される。なぜなら建物の建て替えができなかったり、リフォームも制限があったりと汎用性に欠けるため資産性が低いと見なされているからだ。
よって、この様な物件を再建築可能にすればその資産性が大きく上がり、物件自体は安く手に入れることができるため、大きな利益を得ることも可能だ。今回そのための方法を詳しく説明していく。
目次
接道要件を再度確認する。
『建築物の敷地は道路(建築基準法上の道路)に2m以上接していなければならない』これが原則であり、接道要件と言われている。
再建築不可物件は接道幅が2mより小さい、若しくは接道しているが建築基準法上の道路ではない、通路や道及び単なる土地であることが原因となる。(建築基準法上の道路でないものは「通路」や「道」と言われている。)
よってこれらの問題を解決することつまり、接道幅を2m以上する若しくは通路や道を道路にすることができれば再建築可能になるというわけだ。
建築基準法上の道路については下記を参照頂きたい。
接道幅を2mにする方法。
これは誰もが考える方法。隣地を購入することで接道幅を2m以上確保するという方法だ。最もシンプルであるが、隣地が売りに出ている可能性は低く、当然所有者との交渉が必要になる。
相手側が概ね内容を理解している場合、足元を見られ高値をつけられる可能性もある。隣地所有者の関係性を築くことができている若しくは、交渉能力に自信があればこの方法を取るのが良いだろう。
『位置指定』として現状の通路や土地を建築基準法上の道路にする方法
上記表の1項5号(位置指定道路)に着目して頂きたい。これは現状で道路(建築基準法上の)でないもの、例えば、通路や道、土地を行政に道路として申請することで成立する。
よって何かしらの理由で道路への接道が確保されていない場合は、道路までの通路や土地に対して位置指定道路の申請し承認されれば接道要件を満たすことが可能となる。イメージとしては下記のようになる。
位置指定道路の申請をする際に注意して頂きたいのが、各行政によって幅員や長さなど独自の基準を定めているという点だ。
そして、位置指定を取る通路や道の土地の所有者や借地権者、抵当権者、地役権者などの承諾が必要となる。権利者が複数いる場合は難易度がかなり高くなるので注意したい。もちろん。関係権利者があなただけであれば問題はなく、ズムーズに進めることができるだろう。
事例として東京都目黒区の位置指定の基準についてポイントとなる部分を抜粋して解説する。
道路の地位指定ができる土地
道路となる敷地の土地所有者及び関係権利者全員の承諾が必要。 道路の位置指定を受けて、土地利用を図ることのできる区域の面積が都市計画法に基づく開発行為の許可対象とならない「500㎡未満」の土地に限られる。
道路の位置指定の幅員
道路の位置指定の幅員は、原則として既存道路(接続道路)の幅員を越えないものとし、道路中心線に直角に測り、各部分で4m以上でなければ指定することはできない。
(1)両側のL型溝は、道路区域として幅員に含みます。
(2)片側に縁石を設ける場合は、縁石も道路区域として幅員に含みます
傾斜地における指定
(1)縦断勾配は、原則として12%以下のスロ-プとする。
(2)縦断勾配が12%以上の場合で、区長が地形及び周辺の状況により安全な通行に支障がないと認めた場合は、次の基準による階段状とすることができる。① 階段は、勾配30%以下で、階段幅1.50m以上であること。
② 自転車等の通行のために、幅0.50m以上のスロ-プを設けること。
③ 階段部分には、高齢者等の通行に配慮した手摺を設けること。
④ 高低差が3mを超える場合にあっては、高低差3m以内ごとに長さ1.5m
以上の踊り場を設けること。
⑤ 最下段と既存道路との取り付け部は、0.50m以上の踏込みを設け、既存
道路の路面と同一の平面とすること。
その他基準が様々あるので検討する土地に合わせて各自調べて頂きたい。
位置指定の申請の流れと費用について。
期間は権利関係者との話や事前協議まとまっていればスムーズに進むだろう。
本申請~工事開始までが概ね2週間程度、工事を1ヶ月、その後道路位置指定が通知されるまで2週間程度となる。
審査手数料は50,000円となる。繰り返しとなるがこれは目黒区の規定であるため他の市町村区の場合は「○○○(市町村区名) 位置指定」という形で検索して頂ければ詳細は確認できる。
位置指定道路のケーススタディ
例えばよくある事例として、下記のような幅員4m以下の袋路状の道の両側と終端に建物が建ち並んでいることよくある。現状では全ての敷地において、当然再建築不可ではあるが、位置指定を取得することで再建築が可能となる。
注意点としては位置指定の原則としてその道の幅員が4m以上必要となる点だ。申請者の敷地であればセットバックすることは簡単であるが、しかし他人が所有する隣接敷地についてはそうはいかない。
そういった場合は将来的に建て替えをする際に幅員が4m以上となるように敷地をセットバックするといった承諾書を関係権利者から取得すれば良いことになる。またセットバックした部分は登記簿上も分筆し公衆用道路として登記をする必要がある。
『43条2項2号』(旧43条但し書き)で再建築可能にする方法
過去には43条但し書きと言われていたが2018年の法改正で「43条2項2号」になった方法である。行政毎に様々なパータンが想定され基準が設けられている。まずは法文を見てみよう。
建築基準法
第四十三条
建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
つまり、周辺に十分な空地があり、災害時の避難や救助、交通上の安全性、採光や換気等の衛生面の問題がなく行政が問題ないと認めたが場合は、接道要件を満たしていなくても建築が可能といういこうとだ。これも各行政によって基準が異なるため、今回は東京都豊島区東京都豊島区の事例を基に解説をしていく。
路地状部分のみで道路に接する敷地の場合(敷地は現に存するもの)
道路に1.8m以上2.0m未満で接する敷地(敷地は現に存するもの)
道路に1.5m以上1.8m未満で接する敷地(敷地は現に存するもの)
注意点としてはこの許可は永続的なものではなく、建築物を建築する度に必要ということになる。今回許可が降りたとしても、法律の改正や各行政の意向により、次回建てる時に降りる保証は無いという点はご理解頂きたい。
接道要件を満たしていても再建築不可の場合もある。
接道要件を満たしていても市街化調整区域の建物について、販売資料上「再建築不可」という記載がある場合もある。市街化調整区域とは、簡単にいってしまえば住宅などの人が居住する建物の建築が制限して市街化を促進しないエリアのことであり、基本的に再建築できないが、開発許可を得ることで建てることも可能となる。
しかしそこにはいくつか条件があり、例えば「公益上必要な施設、日常生活に必要な小規模店舗」「土地の所有者、およびその親族が住む住宅」「同じ用途、規模での建て替え」などだ。詳細は行政毎に異なるので「○○市 開発許可」と検索すれば情報は手に入る。
まとめ
今回は再建築不可物件を再建築可能にするための方法を解説した。方法は様々あるが、土地の状況や権利関係者との関係性よってベストな方法を選択するのが良いだろう。
また実際に申請や交渉については専門的な知識が必要となるため、調査には宅建士、建築士や土地家屋調査士、近隣との交渉は宅建士といった形で専門家の力を借りながら進めると良いだろう。いずれにしても難易度が高いケースも多いので事前に実現可能性について十分検討した上で購入を進める必要がある。