敷地権はあまり聞きなれない言葉だが、不動産投資物件として分譲マンションを検討するなら把握しておきたい権利の一つだ。
今回は敷地権の種類や詳しい内容、紛らわしい敷地利用権との違いなどを解説する。
目次
敷地権付き区分建物とは
「敷地権付き区分建物」である分譲マンションの権利について、区分建物・敷地権それぞれを分けて把握していこう。
区分建物とは
区分建物は一棟の建物の一部を独立所有することができる物件のことだ。区分所有建物と呼ばれることもある。
代表的な区分建物である分譲マンションは各居室が専有部分、エントランスや廊下などほかの部分は共用部分と呼ばれて区別される。
専有部分は各個人に独立した所有権があり、共用部分は全員の共有となる。
敷地権とは
敷地権は、前述した区分建物の敷地に関する権利のことを指す。区分建物の所有権と敷地権は一体化されていて、分離処分することはできない。
分譲マンションなどの区分建物は、建物と土地の権利を分割すると不具合が生じてしまうためだ。例えばマンションの建物部分だけ所有し土地が別の所有者だと、立ち退きを要求されてしまう可能性がある。
こうした事態を防ぐため、マンションの建物・土地だけ売却することはできず、必ずセットにすることが義務付けられている。
区分建物の土地は各所有者の共有の持ち物になり、共有持分に応じた敷地権を持つことになる。
敷地権のないマンションもある?
区分建物の所有権・敷地権が一体化されたのは1983年の区分所有法改正以降で、それ以前の物件は敷地権のないケースもあり注意が必要だ。土地と建物が別々に登記されている状態を非敷地権と呼ぶ。
敷地権が設定されていない分譲マンションは、土地と建物を別々に売却することが可能だ。
ただしマンションの土地だけ・建物だけ購入しても意味はなく、実際に権利がバラバラな物件に遭遇する確率は低いだろう。
登記簿が必要になった場合、土地と建物個別に取得する手間がかかるのはデメリットと言える。
また何かしらのトラブルが原因で敷地権が設定されていないケースも考えられるので、経緯や状況について調べておいた方が良いかもしれない。
敷地権の種類
敷地権は所有権と借地権(賃借権・地上権)に分かれている。
一般的な所有権付きマンションの敷地権は所有権で、部屋の所有権とセットで土地も共有持分も移転する。
ただし定期借地権付きのマンションの場合、敷地権は賃借権か地上権となり、賃借権の場合には権利を移転する場合地主の許可が必要となる。
敷地権が賃借権の場合、地主の許可を得られなければ建物の売却ができないということだ。
敷地権と敷地利用権の違い
敷地権と敷地利用権は言葉が似ていて混同しやすいが、意味が違うのでしっかり把握しておこう。
敷地利用権は区分建物の土地を利用する権利そのものを意味する。敷地利用権がなければ、区分建物を所有し利用することはできない。
対して敷地権は区分建物の所有権と敷地利用権を一体化した、権利の形態のことを意味している。敷地権という登記の方法とも考えることができる。
敷地権である旨の登記とは
前述したように区分建物の所有権と敷地権はセットであるため、登記についても一体化させる必要がある。
区分建物の土地登記記録には「敷地権である旨の登記」と記載され、以降は基本的に建物の登記記録で代用していく。
つまり建物を売却して所有者が変わった場合、建物側の登記簿のみに記録するということだ。
敷地権の割合の決め方
敷地権の割合は、専有部分の販売価格と床面積を基にする方法があるが、一般的には床面積を使うことが多い。
床面積を求めるには「壁芯面積」「内法面積」の2つの方法がある。
壁芯面積は壁の中心を基準として面積を求める方式で、敷地権割合ではこちらを採用するケースが多い。
内法面積は壁の内側の面積が基準となっており、登記簿の面積はこちらが使われている。
実際に敷地権割合を求める計算式は以下の通りだ。
敷地権割合 = 各専有部の壁芯面積 ÷ 専有部分の総床面積
仮に専有部分の総床面積が1,000㎡で、50㎡の専有部分の敷地権割合は50÷1,000=1/20となる。
まとめ
敷地権は少し分かりにくい権利だが、分譲マンションに投資・運用するなら仕組みを理解しておこう。
敷地権が設定されていないマンションに遭遇する確率は少ないが、何らかのトラブルを抱えている可能性もある。
不動産投資物件を検討する際は、権利関係までしっかり把握して損のない運用を行ってほしい。