長屋と共同住宅の違いと活用方法を一級建築士が徹底解説!

「新築物件を検討しているが設計士から長屋での計画を提案された。実際に長屋と普通のアパートは何が違うのだろうか?今までなんとなくイメージはあったけど具体的には言葉にできない。。これを機に調べてみよう。。」

住宅と一言でいってもその種類はたくさんある。他との違いがわかりにくいものが多々あるのだが、その内の一つが「長屋」だ。実はこの長屋は通常の共同住宅とは空間構成の違いはもちろんのこと、建築基準法や地方公共団体での条例においても大きな違いがある。

土地によっては長屋を選択することで大きなメリットが生まれることもある。今回はこの長屋について、その基本から収益物件として活用するための方法を解説していく。

 

長屋と共同住宅との違いとは?

一般的なイメージとして細長い住宅が連続して繋がっている建物が長屋とイメージを持たれている方も多いかと思うがそれは正解であり誤りでもある。

建築基準法や地方公共団体の条例はこのようなイメージとは別の明確な判断基準がある。それは「共用部(エントランスホール、廊下、階段等)があれば共同住宅なければ長屋」という点だ。

まずは一般的なアパートやマンションをイメージしてみよう。各住戸に到達するには建物全体のエントランスがあり、廊下や階段を通過する必要がある。一方長屋の場合は共用の廊下や階段は無く直接各住戸にアクセスすることができる。

「長屋の場合でも敷地内で同じ場所を通るからここは共用部では無いのか?」と思った方も多いかもしれないが、建物外は敷地内通路という扱いになるため共用部では無い。但し、屋根だけある開放性の高い廊下の場合は共用部と見なされるので注意したい。

長屋と共同住宅の違い

【長屋と共同住宅の違い】

気づいた方もいるかもしれないが、長屋の場合2階以上の住戸へアクセスするに廊下が無いためその住戸専用の階段が必要となるのだ。よって階数が高くなればなるほど階段の数が多くなるのが特徴となる。

しかし、現実的にはそこまで階段を多くするとレンダブル比が悪化してしまうので3層程度までが多い。また無駄な階段で許容容積率を消化させないために1階、2階をメゾネット住戸にするケースも多い。下記事例を参照頂きたい。

長屋と階段の関係性

【長屋と階段の関係性】

【長屋と階段の関係性】

 

法律から見る長屋と共同住宅の違いとは?

まず建築基準法上の大きな違いとして、長屋は特殊建築物では無いという点がある。特殊建築物は防火性能や避難経路等の規定が厳しいが、長屋では不要となる。面積にもよるが2方向避難や防火性能の高い仕上げの使用や避難通路の確保等が不要だ。コスト的には有利になるといって間違いは無い。

そして、地方公共団体の条例ではより細かな違いが生じることが多い。例えば東京都の「東京都建築安全条例」においては、いわゆる路地状敷地において長屋と共同住宅では建てられる建物の規模が大きくことなるのだ。

※路地状敷地についてはこちらの記事を参照。

まず路地状敷地において共同住宅(特殊建築物)を建てる場合は2階以下、延床面積200㎡以下、住戸数12戸以下にしなければならない。しかし長屋にはこのような規制は無い。但し路地状部分の幅が4m以下になる場合は、階数は3階以下にしなければならないため注意したい。(耐火建築物、準耐火建築物等の場合)これらの規定は共同住宅での窓先空地に匹敵する厳しいものであると理解して問題無いだろう。

長屋と通路道路

【長屋の主要な出入り口道路との関係】

【長屋の主要な出入り口道路との関係】

長屋と避難上有効な開口部

【長屋と避難上有効な開口部】

 

長屋を利用して収益物件を計画するメリットとは?

まずは共同住宅と比べてレンダブル比が向上する可能性が高い。レンダブル比とは建物全体の延床面積に対する賃貸可能な床面積の比率のことだ。これが高ければ高いほどより収支効率の良い建物を建てることができる。

前述した通り長屋には共用部の階段や廊下、エントランスホールが無いため、その分を賃貸可能な住戸に回すことができる。しかし、2階以上についてはその住戸専用の階段が必要となるため、戸数が増えたり、階数が高くなるとレンダブル比が悪化するため注意はたい。下記に事例を紹介する。

長屋のレンダブル比

【長屋のレンダブル比】

 

もう1点のメリットとしては路地状敷地の活用方法だ。東京都の場合路地状敷地においては200㎡以上の共同住宅は建てることができないが、長屋であれば可能だ。路地状敷地は一般的な土地相場より安くなっているケースが多いため、上手くプランニングをすれば利回りの良い収益物件を計画することも可能となる。

但し前述した通り「主要な出入り口と道路」「居室の避難上有効な開口部」これらがあるため自由に計画ができるわけでは無いので注意して頂きたい。筆者の経験上、路地状幅員が3m以上あり、300㎡以内で容積率を消化できるような路地状敷地であれば収支の合う計画が成立する可能性が高い。

まとめ

今回は長屋の基本について解説すると共に、共同住宅との違いを空間構成や法的解釈そして収益面に至るまで総合的に解説させて頂いた。一言で長屋といってもかなり奥が深い。また東京都建築安全条例においては敷地内の通路の幅や避難経路など更に細かい規定が定められている。より難易度の高い部分は建築士等の専門家のアドバイスや提案を取り入れ上手く活用して頂きたい。

 

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最終更新日 : 2020年4月20日
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