違反建築物は買うべきか?その基礎から応用編まで徹底解説

「相場より圧倒的に安い物件がある!しかし資料をじっくり見てみるとそこに”違反建築物”の記載が。。。これは買うべきなのか。。」

不動産投資家であれば誰もが物件を安く購入することを望んでいるはずだ。しかし市場にはそのような物件はほとんどない。(正確には市場に出てくる前に売れてしまう。。)

しかし、例外として上記のような問題を抱える物件は相場よりも安く売り出されているケースが多いのも事実だ。

一般的には違反建築物には手を出さない方が良いというのがセオリーであるが、本当にそうなのだろうか?
今回その定義から購入に値するものの見極め方など応用的なところまで解説する。

 

そもそも違反建築物とは何か?

違反建築物とは建築基準法や各行政の条例に違反している建物のことを言う。通常建物は確認申請や完了検査による第三者機関によるチェックにより遵法性が満たされた状態で初めて使用ができるはずだが、何故このような違反建築物が世の中には存在するのか?その理由は主に2つ存在する。

1つ目は1990年代半ばまでは完了検査がされない建物が圧倒的多かったのだ。国交省のデータによると平成10年の段階では確認申請された建物に対する完了検査の実施割合はわずか38%程度となっている。

<国交省図資料より抜粋>

つまり、残りは完了検査がされていないため、確認申請時とは異なる建物として存在している可能性があるということになる。

もう一つは完了検査を実施したが、その後勝手に増築したり用途を変更してしまい、建築基準法を満たさなくなってしまったというケースだ。

いずれにしても、違反建築物は建物所有者の自己利益のために必然的に存在していることが多い。次によくあるケースについて紹介する。

 

車庫転による容積率オーバー

車庫転とは駐車場を駐車場とは異なる用途に変更することを言う。屋内駐車場は延床面積の1/5までは容積対象面積には含まれない。よって建物に屋内駐車場を入れてその分の面積を賃貸可能な床として、収益性をアップする計画が多い。

問題となるのは、完了検査後にさらに収益性を上げるため、その駐車場を賃貸可能なテナントに改装してしまうことがある。用途としては駐車場では無いので容積対象としてカウントされ容積オーバーとなってしまうのだ。

1990年台半ばまでに建てられたテナントビルなどでよくあるケースだ。但しこちらについては改善方法もあるので詳しくはこちらの記事を参照頂きたい。

※車庫転用とは?是正方法と発生してしまう理由について。

 

増築による容積率オーバー

建物使用開始後に勝手に増築してしまうケースだ。これは通常の住宅などでよくある。家族構成の変化により家が手狭になったため敷地に空きスペースや屋上に居室となる空間を増築することで生じてしまう。

もちろんその増築部分を撤去することができれば合法建築物とすることはできる。

 

既存不適格建築物との違いとは?

法律はその時々の社会的状況により日々改正されている。建築基準法も同じである。しかし、その都度法律に合わせて建物に変更を加えるのは費用もかかるし、物理的に無理であったりするので実質的には不可能である。

そのような建物を「既存不適格建築物」として違反建築物とは明確に分けている。よって、既存不適格についてはそのまま建物を使用する限り問題は発生しないので安心して頂きたい。

しかし、今後用途変更や増築等で建物に手を加える場合は、その一部を現行の基準法に適合させなければならないケースもあるのでその辺りは注意したい。

 

違反建築物のリスクとは

違反建築物についてその定義や発生理由について説明したが、では実際にこれらの建物の所有者となることでどのようなリスクが発生するのだろうか?いくつか事例を解説する。

 

違反建築物の罰則について

まずは法的な処分について建築基準法では下記の記載がある。

建築基準法 第九条 

特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

最悪の場合使用禁止の命令が下される可能性ある。その命令に従わない場合は第98条により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられることなる。いずれにしてもリスクは非常に高い。

 

違反建築物の売却について

そしてもう1点売却という視点について。違反建築物はその度合にもよるが金融機関の融資は厳しいというのが現状だ。よってどれだけ立地がよく資産性の高い物件であっても売却は困難にならざるを得ない。但し、一部のノンバンクであれば条件はあるが可能である。

仮に小規模で現金で購入可能なレベルであれば可能性はあるが、よほど購入する価値がなければ違法性があるという時点で難しいだろう。

 

建物としての安全性や機能性について

建築基準法では建物の構造強度はもちろんのこと、災害が発生した際にもできる限り人に危害が加わらないような性能や避難経路、救助ルートの定めがある。

違反建築物にはこのような性能が確保されていないことも考えられるため、災害時の危険性という意味でリスクが非常に高い。

 

購入すべき違反建築物とは?

それでは違反建築物であれば全てが購入対象とならないのかというとそいうわけではない。その違法性を改善することができれば当然、融資も通り安くなり売却という出口も見えてくる。

売りに出されている違法物件が相場よりも安く、改善するための工事費や設計費を考慮しても十分な利益が出るもしくは保有でれば十分な利回りが期待できるのであれば購入は問題無いだろう。

違反建築物の是正方法とは?

では違反建築物の是正方法にはどのようなやり方があるのだろうか?どのような違法性があるかによってやり方も費用も異なるので一概には言えないが、いくつか事例を踏まえて解説をしていく。

 

容積オーバーとなった賃貸マンションの場合

こちらの事例はオーナー住宅付きの賃貸マンションのケースだ。最上階にオーナー住居があり、それより下の階は賃貸マンションとして貸し出している。オーナー住居が手狭になったということで、屋上部分に居室を確認申請無しで増築してしまった。当然ながら容積オーバーとなっている。方法は2種類ある。

①増築部分を撤去

これは一番簡単な方法ではあるが、実際の居住スペースが減ってしまうし撤去費用もかかってしまう。

②新築時の法律と現在の法律との違いを利用する

マンションのような共同住宅には容積率に関する緩和が多くあり、年々緩和が進んでいる傾向がある。

例えば共同住宅の共用廊下、階段等の容積率不算入は平成9年9月1日施行されたものだ。つまりこの日以前に確認申請が提出された建物は、共用廊下等は容積率としてカウントされていたことなる。上述したマンションは築30年ほどであるため廊下部分は容積対象面積として含まれていたのだ。

増築部分が25㎡、それに対して共用廊下、階段の面積が45㎡であった。よって現行の法律に照らし合わせると許容できる容積対象面積が250㎡なので、通常だと25㎡オーバーとなるが、共用部分を容積対象外とすると230㎡となり合法という扱いになる。

この場合、既に行っている増築に対して確認申請がされていないが、そのあたりについては各行政について判断は異なるため、後追いで確認申請が可能か若しくは確認申請は不要なのかは確認されたい。

少なくとも容積オーバーといった問題は法改正の軌跡をたどるこで解決できるともあるのだ。但し、容積以外部分で現行法規に適合すべき部分があれば新たな工事が必要となるケースもあるので注意したい。

違反建築物改善

【違反建築物の改善方法一例】

 

まとめ

このように違法建築物については、建築について熟知していない限りは手を出すのは危険だと言っても過言ではないだろう。

もし気になる物件があれば、まずは設計士に相談し、現在の違法性をしっかりと把握し、その改善が可能かを検討し、事前の行政相談も行った上で是正が可能と判断できるまで決して手をだしてはいけない。

また、不動産業者によってはその違法性についての説明が無い状態で売出しをしているケースもあるので、最低でも容積率をオーバーしていなか程度の確認は自分でもできるようにしておきたい。

 

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最終更新日 : 2020年4月20日
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